著者の所属・活動拠点の国は、タイ、マレーシアです。
掲載誌:Journal of Fatwa Management and Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究のねらい
ハラール料理とは、イスラム教の食の決まりに沿って用意された料理のことです。タイのハラール料理には、こうした宗教上の決まりと、ムスリムの人々とタイ社会との長い文化的な交流の両方が反映されています。
この研究の著者らは、タイのハラール料理を三つの互いに関連する観点から検討することを目的としました。一つ目は文化的な意味、二つ目は歴史的な成り立ち、三つ目はタイを訪れるムスリム旅行者の体験です。なお、以下の紹介は論文の抄録に記載された内容にもとづいています。
どのように調べたか
研究チームは、数値の集計ではなく、人々の語りや現場の様子から意味を読み取る質的研究の手法を用いました。具体的には、関連する文書資料の分析、ムスリム旅行者・ハラール料理の事業者・文化の専門家への詳しい聞き取り調査、そしてハラール料理の提供が盛んな有名観光地での現地観察を組み合わせています。
主な結果
論文によると、タイのハラール料理は、イスラムの食の伝統とタイの料理の伝統が歴史的に交わる中で生まれた、独自の「混ざり合った料理」です。宗教上の決まりを守りながら、同時に地域の文化的なアイデンティティも表しているとされています。
著者らは、ハラール料理が単なる食べ物にとどまらず、社会の中で人々を結びつけること、信仰を表現すること、そして歴史を受け継ぐことに役立つ文化的な手段になっていると報告しています。
旅行者の側から見ると、タイのハラール料理は、ムスリム旅行者が旅の満足度、訪問先への信頼、文化体験の質を判断するときに考慮する重要な要素の一つであると示されました。さらに論文は、タイのハラール料理が、国際的なハラール観光の分野においてタイの多様性と寛容さを映し出すものになっていると述べています。
研究が示す意味
この研究は、歴史や文化の分析と旅行者自身の体験を結びつけることで、ハラール観光と食文化の遺産についての理解を広げたと著者らは位置づけています。
また著者らは、この結果が政策担当者や観光当局、ハラール料理の事業者にとって、タイのハラール料理らしさを損なわずに、ムスリムにとって訪れやすい国としてのタイの印象を高めるための手がかりになるとしています。一皿の料理に、信仰と地域の歴史、そして旅人の体験が重なり合っていることを伝える研究といえます。
原著論文の著者・所属:Nawawee Arawan(Ridwanool Islam Institute, Bangkok, Thailand)、Rushdy Thaokloy(Faculty of Shariah and Law, University Sains Islam Malaysia (USIM), Malaysia)、Hartinee Cheming(Department of Islamic education administration, International Islamic College Bangkok, Krirk University, Thailand)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nawawee Arawan, Rushdy Thaokloy, Hartinee Cheming. THAI HALAL FOOD: HISTORY, CULTURE, AND MUSLIM TOURISTS’ EXPERIENCES IN THAILAND. Journal of Fatwa Management and Research 2026-09-30. DOI: 10.33102/jfatwa.vol31no3.835. 原著ライセンス:CC BY.