著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Journal of Food Science

ライセンス: 論文に記載なし

コンビニやスーパーで売られている冷蔵の揚げ物は、時間が経つと風味が落ちてしまうことがあります。特にエビを使ったフライ食品は栄養価の高さから人気が高まっている一方で、保存中に味や香りが劣化しやすいという課題を抱えています。今回紹介する研究は、この課題に対して「ガス置換包装(MAP:Modified Atmosphere Packaging)」という手法を使い、フライドシュリンプを氷温(凍らせない低温)で保存したときの風味変化を調べたものです。研究は中国・上海海洋大学食品科学技術学院などの研究者らによって行われました。

どのように調べたのか

研究チームは、フライドシュリンプを3つの条件で包装し、氷温で保存しながら比較しました。条件は、通常の空気で包装した対照群(CK)、二酸化炭素50%・窒素40%・酸素10%の混合ガスで包装した群(M1)、二酸化炭素40%・窒素40%・酸素20%の混合ガスで包装した群(M2)の3種類です。保存期間を通じて、官能評価(人の感覚による評価)に加え、味に関わる成分や香り成分を分析するという、複数の切り口から品質変化を追跡しています。

研究でわかったこと

まず風味の劣化については、うま味や甘味に関わるアミノ酸、特にアラニン(Ala)とグリシン(Gly)の減少が大きく関わっていることが示されました。また保存後半になると、(E)-2-オクテナールや(Z)-3-ヘキセン-1-オールといった揮発性成分が増え、これが好ましくない匂い(オフフレーバー)の発生と関連していたとされています。

3つの条件を比較すると、二酸化炭素50%・窒素40%・酸素10%で包装したM1群が、全体的な品質と風味を最もよく保っていました。保存42日目の時点で、M1群のアラニン含量は1グラムあたり11.12ミリグラム、グリシン含量は1.85ミリグラムで、いずれも空気包装のCK群と比べてそれぞれ23.08%、55.07%高い値でした。さらにM1群では、42日目の生菌数(TVC)が1グラムあたり5.36 log CFU、揮発性塩基窒素(TVB-N、腐敗の指標とされる成分)が100グラムあたり15.57ミリグラムという結果も報告されています。保存後半では、腐敗や鮮度低下の指標とされるヒポキサンチン(Hx)の含量もM1群でCK群より有意に低く、オフフレーバーに関わるアルコール類・ケトン類・アルデヒド類の濃度も抑えられていたことが示されました。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、フライドシュリンプという特定の食品を対象に、氷温保存という特定の条件のもとで行われたものです。ガス組成の違いによって風味成分の変化に差が見られたことは示されていますが、研究の対象や条件が限られているため、他の食品や保存方法にそのまま当てはまるとは限りません。また、この結果は一つの研究によるものであり、結論が確定したわけではない点にも留意が必要です。

まとめ

この研究では、フライドシュリンプを二酸化炭素の割合を高めたガス置換包装で氷温保存すると、通常の空気包装に比べてアミノ酸などの風味成分の減少やオフフレーバーの発生が抑えられる傾向が示されました。日常的に目にする揚げ物の保存技術の裏側にも、こうした地道な研究の積み重ねがあることがうかがえます。

著者:Kunpeng Zhao(College of Food Science and Technology Shanghai Ocean University Shanghai China)、Zuyao Fu(College of Food Science and Technology Shanghai Ocean University Shanghai China)、Anqi Ji(College of Food Science and Technology Shanghai Ocean University Shanghai China)、Defeng Xu(School of Ocean and Tropical Medicine Guangdong Medical University Zhanjiang China)、Mingtang Tan(College of Food Science and Technology Shanghai Ocean University Shanghai China)、Zhaoyang Ding(College of Food Science and Technology Shanghai Ocean University Shanghai China)

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Kunpeng Zhao, Zuyao Fu, Anqi Ji, et al. Modified Atmosphere Packaging (MAP): Flavor Regulation of Fried Shrimp During Ice‐Temperature Storage. ジャーナル・オブ・フード・サイエンス (2026). DOI: 10.1111/1750-3841.71347.