この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Foods (Basel, Switzerland)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC

何を明らかにしようとしたのか

小麦粉は、パンや麺、ビスケットなど多くの食品のもとになる素材です。小麦を粉にする「製粉」では、粒を砕いて細かくするだけでなく、どのくらいの大きさの粒がどれだけ含まれるか(粒度分布)を整えることが品質を左右します。従来はロール式の製粉機が主流ですが、近年は高速で回転する刃で叩き砕くブレード式の粉砕機も、構造が簡素で運転の自由度が高いことから注目されていると著者らは述べています。

著者らによれば、これまでの研究の多くは、粉砕条件と「最終的にできあがった粉」の性質との関係を調べるものでした。そのため、粉砕を何回も繰り返していく途中で、粗い粒がどのように中くらいの粒、さらに細かい粒へと移り変わっていくのかは、あまり体系的に調べられてこなかったといいます。そこで本研究は、ブレード式粉砕機による段階的な粉砕を対象に、1回あたりの粉砕時間を変えたときの粒の移り変わりを一段階ずつ追い、それが損傷デンプンや粉の基本的な成分にどう結びつくかを調べることを目的としました。

どのように調べたか

試料には、河南省で広く栽培されている高グルテン品種の小麦を用い、水分を15%に調整してから使いました。手順は「砕く→ふるう」の繰り返しです。粉砕した材料を目の細かさの異なる複数のふるいにかけ、最も細かい80メッシュのふるいを通り抜けたものを小麦粉として回収します。ふるいの上に残った粗い材料はもう一度粉砕機に戻し、同じ工程を繰り返します。この1回分を「パス(回)」と数え、通過分の累積が全体の8割を超えるまで続けました。

比較したのは、1回あたりの粉砕時間を10秒とした条件(F10)と15秒とした条件(F15)の2つです。著者らは予備試験で、10秒の粉砕で砕けずに残る粒が全体の2%未満、15秒では1.5%未満になることを確認し、どちらも最初の破砕は十分に進む条件として選んだと説明しています。得られた粉については、レーザー式の装置で粒の大きさの分布を測り、あわせて損傷デンプンの量、水分・タンパク質・灰分(燃やしたあとに残るミネラル分に由来する成分)を規格に沿った方法で測定しました。

さらに著者らは、刃と粒の衝突、刃の面に沿って粒が外向きに滑る動き、粉砕室の壁への衝突という3つの力学的な場面について、式による記述を加えています。ただし、反発係数や接触時間などの値を実測していないため、これらの式は実際の衝突力や粉砕エネルギーを数値として算出するものではなく、どの条件がどちら向きに効くかという傾向の解釈に用いたと明記しています。

主な報告結果

粉砕回数を重ねるにつれ、両条件に共通して、粗い粒(40メッシュより大きい)の割合は減り続け、細かい粒(80メッシュより小さい)の割合は増えていきました。中間の大きさ(60〜80メッシュ)の粒は、いったん増えてから減るという動きを示しました。著者らはこれを、粗い粒が中間の粒へ、中間の粒がさらに細かい粒へと段階的に移っていく過程として説明しています。回数が進むと各区分の変化の速さは次第に鈍り、系は動的な平衡状態に近づいていったと報告されています。

粉そのものの粒度分布は、どのパスで集めた粉でも1〜100マイクロメートルの範囲に集中した、山が一つの形をしていました。F10ではその山の位置がおよそ5マイクロメートルで安定していたのに対し、F15では5マイクロメートルより小さい側にずれ、細かい粒の割合が相対的に高くなりました。分布の広がりを示す指標(Span)は2.46〜2.68の範囲にとどまり、著者らは、段階的な粉砕によって過度な砕きすぎを避けつつ、粒度を揃えたまま少しずつ細かくできていると評価しています。

損傷デンプンは、粉砕回数が増えるほど有意に増え、F15のほうがF10より多くなりました。損傷デンプンとは、機械的な力でデンプン粒に傷や空洞ができた状態のもので、本来のデンプン粒より水を多く吸う性質があります。著者らは、粉砕時間が長いほど機械的な作用が積み重なり、デンプン粒の損傷が進んだ可能性を示していますが、個々のデンプン粒が受ける衝撃の強さや衝突回数は直接測っていないため、これは因果関係の直接的な検証ではなく、あり得る機構としての説明だと断っています。

基本的な成分では、水分は粉砕回数とともに徐々に減りました。タンパク質は両条件とも、いったん増えてから減るという推移を示し、ピークはF10で4〜5回目、F15で2回目でした。灰分は一貫して増加し、最終的におよそ0.48%に達しました。著者らは、これらの変化が、小麦粒の内側から外側に向かってタンパク質やミネラルの分布が異なるという不均一性、そして粉砕が進むにつれて外側寄りの組織が粉に入ってくることと関係している可能性を指摘しています。

この研究が示すもの

この研究は、粉砕機にかける時間という一つの操作条件が、粒の細かさだけでなく、デンプンの損傷度合いや粉の成分構成にも同時に影響することを、一段階ずつ追う形で示しました。1回あたりの粉砕時間を長くすれば粒はより細かくなりますが、その分だけデンプンの損傷も進むという、両立しにくい関係がはっきりと見えたことになります。

著者らはあわせて、力学的な記述が実験で見えた傾向と定性的に整合することを示す一方で、そのモデルが単純化された仮定に基づくものであり、粒度分布や損傷デンプン量を正確に予測するものではないことを明確にしています。粉砕の途中経過を細かく記録するというこの研究の視点は、製粉の条件を「結果から逆算する」のではなく、過程のどこで何が起きているかを踏まえて考えるための手がかりを与えるものだといえます。

著者:Zhang C(School of Mechanical and Electrical Engineering, Henan University of Technology, No. 100 Lianhua Street, Zhengzhou 450001, China.; School of Rail Transit, Henan Mechanical and Electrical Vocational College, No. 1 Taishan Road, Zhengzhou 451191, China.)、Hu J(School of Mechanical and Electrical Engineering, Henan University of Technology, No. 100 Lianhua Street, Zhengzhou 450001, China.)、Xu Q(School of Mechanical and Electrical Engineering, Henan University of Technology, No. 100 Lianhua Street, Zhengzhou 450001, China.)、Zhang H(School of Mechanical and Electrical Engineering, Henan University of Technology, No. 100 Lianhua Street, Zhengzhou 450001, China.)、Li R(School of Mechanical and Electrical Engineering, Henan University of Technology, No. 100 Lianhua Street, Zhengzhou 450001, China.)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zhang C, Hu J, Xu Q, et al. Crushing Mechanics and Flour Properties of Wheat Under Different Graded Crushing Durations in a Blade Crusher. Foods (Basel, Switzerland) 2026-08-21. DOI: 10.3390/foods15162935. 原著ライセンス:CC BY.