玄米はビタミンやミネラル、食物繊維を豊富に含み、血糖値の上昇抑制や生活習慣病予防に役立つ機能性がこれまで数多く報告されてきました。しかし白米に比べて特有のにおいがあることが、日常的な玄米食の広がりを妨げる一因とも考えられています。今回紹介する研究は、この玄米のにおいに着目し、加工方法の工夫によって香りの質を変えられるかどうかを調べたものです。

研究チームが用いたのは「湿熱処理」と呼ばれる加工法です。これはデンプンが完全に糊化しない程度の低い水分条件のもとで、短時間だけ水蒸気による加熱を行うというものです。研究チームはこれまでにも米への湿熱処理の効果を調べており、玄米に含まれる微生物の殺菌や酵素の働きを止める効果、さらに吸水しやすくなる効果を確認してきたといいます。今回はその延長として、湿熱処理の条件が玄米の香気成分にどのような影響を与えるかを検討しました。

どのように調べたのか

実験では、玄米に対して圧力を0.1〜0.2メガパスカルの範囲で変え、処理時間も5分間と10分間の2通りに設定して、複数の条件下で湿熱処理を行いました。処理後の玄米はそれぞれ精米したものと粉砕したものに調製し、異なる保存条件のもとで保存したうえで、香気成分の変化をガスクロマトグラフ‐質量分析計(GC-MS)という機器で定量的に分析しています。

処理条件によってにおい成分に違いが見られた

分析の結果、白米・玄米のいずれからも、主要な香気成分としてOctanal(オクタナール)やHexanal(ヘキサナール)といったアルデヒド類、そしてHexanol(ヘキサノール)などのアルコール類が検出されました。これらの成分の量を処理条件ごとに比較したところ、0.2メガパスカルで10分間処理した玄米試料で、他の条件と比べて成分濃度が最も低くなる傾向が認められたということです。

研究チームはこの傾向について、湿熱処理中に玄米が高温の水蒸気にさらされることで香気成分が抽出され、処理後に水蒸気を抜く脱気の過程で成分も一緒に排出されるためではないかと考察しています。この結果から、湿熱処理には玄米や米粉に特有のにおいを軽減できる可能性があるとされ、玄米を使った食品素材としての使いやすさの向上につながることが期待されるとまとめられています。

この研究を読むうえで留意したいこと

この研究は日本食品科学工学会大会の講演要旨として発表されたもので、著者にはHisako Okumura氏をはじめとする研究者が名を連ねています。今回の結果は特定の圧力・時間の組み合わせにおいて香気成分の濃度が低くなる傾向が見られたという段階の知見であり、においの軽減が味や食感、栄養価にどのような影響を及ぼすかについては触れられていません。一つの研究発表であり、玄米加工に関する知見の一つとして捉えるのが妥当だといえます。

まとめ

今回の研究では、玄米に圧力と時間を変えた湿熱処理を施し、GC-MSで香気成分を分析することで、処理条件によってアルデヒド類やアルコール類の濃度に違いが生じることが示されました。とくに0.2メガパスカル・10分間の処理で成分濃度が低くなる傾向が見られたことから、湿熱処理が玄米特有のにおいの軽減に役立つ可能性が示唆されています。今後、こうした知見が玄米食品の風味改善や利用拡大にどうつながっていくのか、続報が注目されます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Hisako Okumura, Rika Oya, Momo Oyanagi, et al. 湿熱処理による玄米のかおり成分への影響の調査. 日本食品科学工学会大会講演要旨集 (2026). DOI: 10.3136/aamjsfst.72.0_375.