プラスチックごみ削減の流れの中で、食べられる素材でできた「可食フィルム」が注目されています。今回紹介するのは、トウモロコシ由来のタンパク質「ゼイン」と天然多糖類「アラビアガム」を混ぜたベースフィルムに、魚油を配合して物性を調べた研究です。魚油はオメガ3脂肪酸を含むことで知られていますが、酸化しやすく独特のにおいも出やすいという扱いにくさがあります。これを可食フィルムに閉じ込めることができれば、即食食品などへの応用が期待できるとして、この研究では魚油の配合濃度と、調理方法(パンフライや電子レンジ加熱)がフィルムの性質にどう影響するかが調べられました。
研究でわかったこと
研究チームは、ゼインとアラビアガムをベースにしたフィルムに魚油を加えて作製し、水分量、厚み、水蒸気の通しやすさ、酸化の進み具合(過酸化物価)、引張強度や伸び、構造や熱安定性など、さまざまな角度から特性を評価しました。
まず、調理していない状態のフィルムでは、魚油を10%または15%配合した場合、水分含有量は1%未満に抑えられ、厚みは285〜288μmまで増加したと報告されています。また、水蒸気透過率(WVTR)はおよそ2.14〜3.68 g/m²/dayと低めに抑えられる一方で、これが逆に酸化を進めやすい方向に働き、過酸化物価は最大26.97 meq/kgまで上昇したとされています。さらに、魚油を15%配合した場合には、引張強度が2.42 kPa、破断伸び(EAB)が72.07%まで著しく低下し、フィルムの熱安定性や構造の緊密さも低下したことが示されています。
次に、パンフライや電子レンジ加熱といった調理を行うと、フィルムの性質は大きく変化することが確認されました。具体的には、厚みが315〜357μm、引張強度が7〜34 kPa、破断伸びが32〜80%、水蒸気透過率が7〜14 g/m²/day、過酸化物価が12〜32 meq/kgという範囲で変動したと報告されています。
これらの結果を踏まえ、研究チームは、調理していない状態で魚油を5%以下に抑えたフィルムであれば、即食食品への応用に適する可能性があると提案しています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ゼイン・アラビアガム・魚油という特定の組み合わせのフィルムについて、実験室での物性評価を行ったものです。魚油の配合濃度が高くなるほど、水蒸気を通しにくくなる一方で酸化が進みやすくなり、フィルム自体の強度や伸びも損なわれるという、いわばトレードオフの関係が示唆されています。また、調理方法によってもフィルムの特性が大きく変わることが示されており、実際にどのような食品にどう使うかによって最適な配合や条件は異なると考えられます。この記事で紹介した数値や傾向は、あくまで今回の実験条件下で得られたものであり、一つの研究として得られた知見です。可食フィルムの実用化に向けては、さらなる検証が必要になると考えられます。
まとめ
魚油を配合したゼイン/アラビアガム可食フィルムは、魚油の濃度や調理方法によって水蒸気の通しやすさ、酸化の進み具合、強度や伸びといった性質が大きく変化することが、この研究であらためて示されました。研究チームは、魚油濃度を5%以下に抑えた未調理のフィルムが即食食品への応用に適する可能性を示唆していますが、これは今回の実験結果に基づく一つの提案であり、今後さらなる研究の積み重ねが期待される分野といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:魚油を配合したゼイン/アラビアガム混合可食フィルムの開発:魚油濃度と調理方法の影響(グラサス・イ・アセイテス・2026年07月)