「何を食べているか」は、体の中の慢性的な炎症とも関係があると考えられています。慢性的な低レベルの炎症は、さまざまな生活習慣病の背景にあるとされ、これまで研究者たちは食事が炎症に与える影響を数値化する「食事性炎症指数(DII)」というものさしを使ってきました。ただし、このDIIを正確に算出するには詳細な食事調査が必要で、時間や手間がかかることが課題でした。今回紹介する研究では、もっと簡単に使える「簡易版食事性炎症指数(S-DII)」を新たに作り、それが実際にどれくらい信頼できるものなのかを、中国の地域在住高齢者を対象に検証しています。
研究でわかったこと
研究チームは、25項目からなる食物摂取頻度調査票(FFQ25)をもとに、S-DIIという簡易指標を開発しました。この指標の妥当性を確かめるため、中国の地域在住高齢者269名を対象に、FFQ25と「24時間思い出し法(前日に食べたものを詳しく聞き取る調査)」の両方でデータを集め、比較しています。あわせて空腹時の血液を採取し、CRP、TNF-α、IL-4、IL-6、IL-10、IL-1βといった炎症に関わる物質の値も測定しました。
その結果、S-DIIは24時間思い出し法から算出したDIIと中程度の一致を示しました(相関係数r=0.640、級内相関係数=0.615、p<0.05)。またBland-Altman分析という統計手法でも、この一致がおおむね支持される結果となりました。血液中の炎症マーカーとの関連を見ると、CRPとIL-1βはS-DIIの値が高いほど高くなる傾向が、他の要因を考慮した上でも認められました。一方で、TNF-α、IL-4、IL-6、IL-10については、S-DIIとの間にはっきりした関連は見られなかったとされています。
さらに研究チームは、S-DIIが実際の集団でどのように使えるかを調べるため、983名の高齢者を追加で調査しました。その結果、S-DIIの値が最も低かった人たちでは、穀類、いも類、赤身肉、鶏肉などの家禽肉、大豆、ナッツ類、野菜、果物の摂取量が有意に多い傾向が見られました。反対に、乳製品と卵の摂取については逆の傾向、つまりS-DIIが高いグループでこれらの摂取が多い傾向が示されたとされています(p<0.05)。また、他の要因を調整した後でも、S-DIIの値が高い人ほど高血圧や冠動脈疾患を持っている割合が高いという関連が認められました。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、S-DIIという簡便な食事評価ツールが、詳細な食事調査から得られる従来のDIIとある程度一致し、炎症マーカーや高血圧・冠動脈疾患との関連も示されたことから、地域在住高齢者を対象とした食事性炎症の「スクリーニング」に役立つ可能性を示した予備的な検討だとされています。ただし、これはあくまで一つの研究であり、対象は中国の地域在住高齢者に限られています。論文中でも「同様の地域的特徴を持つ集団」への適用を想定した予備的な知見であると述べられており、結論が確定したものではありません。また、血液中の炎症マーカーのうち関連が見られなかったものもあり、すべての炎症指標と一様に結びつくわけではない点にも注意が必要です。
まとめ
今回の研究では、25項目の簡単な食物摂取頻度調査票をもとにした簡易版食事性炎症指数(S-DII)が、従来の詳細な食事調査によるDIIとある程度一致し、CRPやIL-1βといった炎症マーカー、さらに高血圧・冠動脈疾患との関連も示されたことが報告されています。研究チームは、S-DIIが地域在住高齢者における食事性炎症の簡便なスクリーニングツールとして活用できる可能性を示唆しており、生活習慣病予防に向けた栄養面での対策を考えるうえでの一つの手がかりになりうるとしています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:中国高齢者における簡易版食事性炎症指数の妥当性と実用性(サイエンティフィック・リポーツ・2026年07月)