著者の所属・活動拠点の国は、エストニア、リトアニアです。

掲載誌:Applied Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ひき肉製品は水分が多く、不飽和脂肪酸も含むため、保存中に脂質が酸化しやすく、微生物も増えやすい食品です。合成添加物に代わる天然由来の素材として、ポリフェノールを多く含む植物抽出物が研究されてきました。

ブラックカラント(カシス)の果汁を搾ると、果皮・果肉の残り・種からなる搾りかすが大量に出ます。その多くは今も低価値の副産物として扱われたり、廃棄されたりしています。著者らによると、種には酸化しやすい多価不飽和脂肪酸が多く、果皮側にはアントシアニンなどのポリフェノールや食物繊維が多く含まれます。そこで研究チームは、種を取り除いたカシス搾りかすの果皮部分から作った素材が、豚肉ミートボールの抗酸化性、保存中の酸化のしにくさ、その他の品質にどう影響するかを調べました。

何を調べたか

研究チームは、果皮を乾燥・粉砕した粉末から、段階的に4種類の素材を用意しました。1つ目はそのままの乾燥粉末です。2つ目は、超臨界二酸化炭素抽出で油分を取り除いた残り(脱脂残渣)です。超臨界二酸化炭素抽出は、高圧の二酸化炭素を溶媒のように使う方法です。3つ目は、脱脂残渣からエタノールと熱水で順に抽出した成分を合わせた抽出物です。4つ目は、すべての抽出を終えた後の残りです。

ミートボールは、豚ひき肉、水、食塩で作ったものを対照としました。試験品では、ひき肉の2%をそれぞれの素材に置き換えました。焼いたミートボールは窒素70%と二酸化炭素30%の混合ガスで包装し、約4℃で保存しました。保存1日目、7日目、14日目に、色、pH、脂質の酸化生成物などを測定しました。あわせて、成分組成、食物繊維量、加熱による重量の減り方(加熱損失)、抗酸化力も調べています。

主な結果

素材そのものの性質では、エタノールと熱水による抽出物の抗酸化力の指標が、固体の素材より数倍高い値を示しました。一方、すべての抽出を終えた残りは、抗酸化力の値が大きく低下していました。超臨界二酸化炭素による脱脂で、果皮の油分は効果的に除かれていました。

ミートボールでは、カシス果皮素材を加えたものはいずれも、対照より抗酸化力(DPPHラジカル消去能)が有意に高くなりました。本文の測定では、脱脂残渣を加えたものが最も高く、次いで抽出物を加えたものが高い値でした。また、著者らは、素材を加えることでミートボールの脂質の酸化が抑えられたと報告しています。

色については、どの素材も色の指標に有意な影響を与えました。カシス由来のアントシアニン色素によって、赤みが増したと報告されています。固体の素材(乾燥粉末、脱脂残渣、抽出後の残り)を加えたミートボールは、食物繊維を約1%含んでいました。加熱損失は、対照との差が統計的に有意ではありませんでしたが、固体素材では減る傾向が見られました。乾燥粉末と抽出後の残りで、特に低い値でした。一方、抽出物を加えたものは加熱損失が最も大きく、対照の27.96%に対して33.06%でした。pHの変化は全体として小さいものでした。

研究が示すこと

この研究は、果汁製造で出る種なしのカシス搾りかすを、加工の段階ごとに異なる素材として使えることを示しています。どの素材を加えるかによって、豚肉ミートボールの抗酸化力、色、食物繊維量、加熱損失への影響が変わりました。著者らは、これらの素材がミートボールの特定の品質を高めるのに使え、肉製品向けの抗酸化素材や食物繊維を多く含む素材として有望だと結論づけています。

著者:Kristi Kerner(Chair of Food Science and Technology, Institute of Veterinary Medicine and Animal Sciences, Estonian University of Life Sciences, Fr. R. Kreutzwaldi 56/5, 51006, Tartu, Estonia)、Renata Baranauskienė(Department of Food Science and Technology, Kaunas University of Technology, Radvilėnų pl. 19, LT-50254, Kaunas, Lithuania)、Rita Kazernavičiūtė(Department of Food Science and Technology, Kaunas University of Technology, Radvilėnų pl. 19, LT-50254, Kaunas, Lithuania)、Alo Tänavots(Chair of Food Science and Technology, Institute of Veterinary Medicine and Animal Sciences, Estonian University of Life Sciences, Fr. R. Kreutzwaldi 56/5, 51006, Tartu, Estonia)、Viive Sarv(Polli Horticultural Research Centre, Institute of Agricultural and Environmental Sciences, Estonian University of Life Sciences, Uus 2, Polli, Mulgi parish, 69108, Viljandi, Estonia)、Ivi Jõudu(Chair of Food Science and Technology, Institute of Veterinary Medicine and Animal Sciences, Estonian University of Life Sciences, Fr. R. Kreutzwaldi 56/5, 51006, Tartu, Estonia)、Petras Rimantas Venskutonis(Department of Food Science and Technology, Kaunas University of Technology, Radvilėnų pl. 19, LT-50254, Kaunas, Lithuania)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kristi Kerner, Renata Baranauskienė, Rita Kazernavičiūtė, et al. Enhancing pork meatball antioxidant potential and oxidative stability with seedless blackcurrant pomace ingredients and their effect on other quality characteristics. Applied Food Research 2026-09-18. DOI: 10.1016/j.afres.2026.102604. 原著ライセンス:CC BY.