この研究は、エジプトの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Foods (Basel, Switzerland)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC

研究の目的

鶏肉はたんぱく質が豊富で脂肪が少ない食材として広く利用されていますが、水分が多く栄養に富むため微生物が増えやすく、冷蔵しても品質が落ちやすいという課題があります。保存中には微生物や酵素の働きでたんぱく質が分解され、においや色、風味が変化し、脂質の酸化による劣化も進みます。

一方で、化学的な添加物への消費者の懸念が高まり、天然由来の保存手段への関心が強まっています。研究チームは、通常は捨てられる農産加工の副産物に注目しました。ジャガイモの皮やザクロの皮にはポリフェノール(植物に含まれる抗酸化成分)やフラボノイドなどが含まれており、これらを利用することは食品廃棄物の有効活用にもつながります。

そこで研究チームは、ジャガイモ皮粉末とザクロ皮粉末をそれぞれ単独で、また両者を組み合わせて鶏肉ミートボールに加え、冷蔵保存中の品質にどのような影響があるかを比較することを目的としました。

調べ方

エジプト・ファイユームの市場で購入したジャガイモとザクロの皮を50±5℃で12時間乾燥させ、細かい粉末にしました。この粉末から70%エタノールで抽出物を取り出し、総ポリフェノール量、総フラボノイド量、DPPH法(試薬の色の変化から抗酸化力を測る方法)による抗酸化活性、そして細菌・カビに対する抑制作用を調べています。試験には枯草菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌O157、そして糸状菌であるクロコウジカビが用いられました。

次に、鶏むね肉を主体としたミートボールを作り、皮粉末を加えない対照区に加えて、ジャガイモ皮粉末2%・4%、ザクロ皮粉末2%・4%、両方を2%ずつ、両方を4%ずつという6つの配合を用意しました。これらを冷蔵条件で20日間保存し、5日ごとに、脂質の酸化を示すTBARS値、たんぱく質の分解にともなって生じる揮発性塩基窒素(TVB-N)、pH、そして一般生菌数・大腸菌群・酵母およびカビの数を測定しています。あわせて、加熱後の重量から求める加熱歩留まりと、色・風味・口当たり・多汁性・総合的な受容性についての官能評価も行われました。

報告された主な結果

皮の性質そのものについては、ザクロ皮の抽出物のほうが有効成分に富んでいたと報告されています。総ポリフェノール量はザクロ皮が382.07 mg GAE/g、ジャガイモ皮が134.31 mg GAE/gで、フラボノイド量もザクロ皮が144.85 mg(ケルセチン換算)/g、ジャガイモ皮が16.06 mg/gでした。抗酸化活性でも、1 mg/mLの濃度でザクロ皮は91.84%、ジャガイモ皮は49.40%の阻害率を示しています。微生物を抑える働きについても、ザクロ皮抽出物のほうが阻止円が大きく、両抽出物ともグラム陽性菌に対してより効果が高く、グラム陰性菌のほうが抵抗性を示したとされています。

ミートボールでは、20日間の冷蔵保存後に対照区のTBARS値が0.89 mg MD/kgと最も高く、脂質酸化が進んでいました。これに対し皮粉末を加えた区はいずれも低い値にとどまり、ジャガイモ皮4%+ザクロ皮4%の区が0.18 mg MD/kgと最も低い値でした。たんぱく質の分解を示すTVB-Nも同様の傾向で、20日後の対照区が25.70 mg/100 gだったのに対し、ジャガイモ皮4%+ザクロ皮4%の区は9.80 mg/100 gにとどまっています。

微生物についても、20日後の一般生菌数は対照区で5.78 log cfu/gまで増えたのに対し、皮粉末を加えた区では2.59〜4.38 log cfu/gの範囲でした。酵母・カビの数も対照区の3.97 log cfu/gに対し、処理区ではより低い値が報告されています。pHはすべての区で保存中にやや低下しましたが、皮粉末を加えた区のほうが低下の程度が小さかったとされています。

加熱歩留まりは皮粉末の添加量が増えるほど高まり、ジャガイモ皮4%+ザクロ皮4%の区で89.54%と最も高い値を示しました。抗酸化活性も同じ区が92.11%と最も高く、対照区の26.58%を大きく上回っています。ただし官能評価では、皮粉末を4%ずつ合計8%加えた区は多汁性や風味の評価が有意に低下しました。研究チームは、対照区と比べて総合的な受容性に有意差がなかったのは、ジャガイモ皮を2%または4%加えた区、ザクロ皮を2%加えた区、そして両方を2%ずつ合計4%加えた区だったと報告しています。

この研究が示すこと

この研究は、ふだん廃棄されるジャガイモやザクロの皮の粉末を鶏肉ミートボールに加えることで、冷蔵保存中の脂質酸化やたんぱく質の分解、微生物の増加が対照区より抑えられたことを報告しています。とくに二種類の皮粉末を組み合わせた場合に、指標の値が最も良好だったとされます。

一方で、添加量を増やすほど風味や口当たりの評価が下がるという結果も同時に示されており、保存性の向上と食べやすさの間には釣り合いを取るべき点があることがうかがえます。捨てられていた部分に含まれる成分を食品に活かすという発想が、品質保持と廃棄物の削減という二つの面から検討されうることを、この報告は具体的な数値とともに示しています。

著者:Abdel-Moatamed BR(Department of Food Science and Technology, Faculty of Agriculture, Fayoum University, Fayoum 63514, Egypt.)、Roby MHH(Department of Food Science and Technology, Faculty of Agriculture, Fayoum University, Fayoum 63514, Egypt.)、Shaban MM(Department of Food Science and Technology, Faculty of Agriculture, Fayoum University, Fayoum 63514, Egypt.)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Abdel-Moatamed BR, Roby MHH, Shaban MM. Combined Effects of Potato Peel Powder and Pomegranate Peel Powder on the Quality Attributes of Refrigerated Chicken Meatballs. Foods (Basel, Switzerland) 2026-08-29. DOI: 10.3390/foods15173069. 原著ライセンス:CC BY.