著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

フレイルとは、加齢に伴って体の予備力が落ち、ちょっとした負担でも健康を崩しやすくなった状態を指します。転倒や入院、要介護、死亡と関連することが知られています。一方で、避けられない老化そのものではなく、予防や改善の余地があると考えられています。そのため、食事のように変えられる要因との関係に関心が集まっています。

これまでの栄養とフレイルの研究は、たんぱく質の摂取量に注目したものが中心でした。炭水化物・たんぱく質・脂質という三大栄養素の「バランス」を扱った研究は多くありません。研究チームは、このバランスとフレイルの関係が、そもそも必要なエネルギーを十分に摂れているかどうかによって変わるのではないかと考えました。そこで、韓国の65歳以上の人を対象に、この点を調べました。

何をどのように調べたか

著者らは、韓国の全国健康栄養調査(2022年と2024年)に参加した65歳以上の2803人のデータを分析しました。前日1日分の食事を聞き取る調査から、摂取エネルギーのうち炭水化物・たんぱく質・脂質がそれぞれ何%を占めるかを計算しています。

評価の基準には、2025年版の韓国の食事摂取基準が定める「エネルギー産生栄養素の許容範囲」を用いました。範囲は炭水化物50〜65%、たんぱく質10〜20%、脂質15〜30%です。三つすべてが範囲内であれば「基準内」、一つでも外れていれば「基準外」としました。

エネルギー摂取については、体重1kgあたり1日30kcal以上を「充足」、それ未満を「不足」として参加者を二つに分けました。この値は欧州の臨床栄養学会が高齢者向けの目安として示しているものです。著者らは、個人の充足度を診断する基準ではなく、集団を分けるための便宜的な基準として使ったと説明しています。

フレイルの判定には、体重減少、疲れやすさ、身体活動の少なさ、握力の低さ、歩行の不自由さの5項目を使いました。このうち3項目以上に当てはまる人をフレイルとしています。分析では、年齢、性別、収入、学歴、持病、喫煙・飲酒、体格指数(BMI)などの影響を統計的に調整しました。

主な結果

エネルギー充足群は925人、不足群は1878人でした。フレイルの割合は充足群で6.1%、不足群で9.5%でした。

エネルギー充足群では、三大栄養素のバランスが基準外の人のほうが、基準内の人に比べてフレイルである見込み(オッズ)が高いという結果でした。各種要因を調整した後のオッズ比は5.58です。一方、エネルギー不足群ではこのような関連はみられませんでした(オッズ比1.08)。対象者全体をまとめて分析した場合は、BMIまで調整すると関連は統計的に有意ではなくなりました。

栄養素ごとにみると、エネルギー充足群では、たんぱく質と脂質が範囲外であることがフレイルと有意に関連していました。炭水化物は有意かどうかの境目にあたる結果でした。摂取割合とフレイルの関係を曲線で詳しく調べた分析もあります。充足群では、炭水化物とたんぱく質の割合が低すぎても高すぎてもフレイルの見込みが高まる「U字型」の関連がみられました。脂質は割合が高いほどフレイルの見込みが低い傾向でした。エネルギー不足群では、どの栄養素にもこうした関連はみられませんでした。

ただし著者らは注意点も挙げています。エネルギー充足群のフレイルの人は63人と少なく、推定値の幅が広いため、関連の大きさは慎重に解釈すべきだとしています。また、この許容範囲はあくまで栄養素どうしの比率を表すものです。個々の栄養素が単独で及ぼす作用を示すものではありません。脂質の結果についても、炭水化物の割合が高い食事の裏返しという面があり、脂質だけに保護的な働きがあると読むべきではないとしています。さらに、この研究はある時点の状態を調べた横断研究であり、示されたのは関連であって因果関係ではありません。

この研究が示すこと

研究チームは、三大栄養素のバランスとフレイルの関連が、主にエネルギーを十分に摂れている高齢者でみられたと結論づけています。エネルギーが不足していると、栄養素の配分にかかわらず筋肉の分解が進みやすくなり、バランスの影響が見えにくくなる可能性があると著者らは考察しています。

この結果から著者らは、高齢者の栄養状態とフレイルの関係を考えるうえで、エネルギーが足りているかどうかと栄養素の配分は、互いに補い合う二つの側面である可能性があると述べています。

著者:Yoo Bin Seo(Department of Family Medicine, Research Institute of Medical Science, Konkuk University Medical Center, Konkuk University School of Medicine, Seoul 05030, Republic of Korea)、Jin Young Shin(Department of Family Medicine, Research Institute of Medical Science, Konkuk University Medical Center, Konkuk University School of Medicine, Seoul 05030, Republic of Korea)、Jaekyung Choi(Department of Family Medicine, Research Institute of Medical Science, Konkuk University Medical Center, Konkuk University School of Medicine, Seoul 05030, Republic of Korea)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yoo Bin Seo, Jin Young Shin, Jaekyung Choi. Macronutrient Distribution and Frailty According to Energy Sufficiency. Nutrients 2026-10-16. DOI: 10.3390/nu18203393. 原著ライセンス:CC BY.