著者の所属・活動拠点の国は、イタリア、スペインです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
オリーブオイルを搾ると、搾りかす(ポマース)や種(オリーブストーン)といった副産物が大量に出ます。これらは有機物を多く含み、適切に処理しなければ土壌や水の汚染につながるおそれがあります。一方で、抗酸化作用などが知られるフェノール類(ポリフェノールを含む植物由来の化合物群)を含んでいるため、有効に活用できる可能性もあります。
著者らによれば、搾りかすについては腸内細菌への作用を調べた研究がすでにありますが、オリーブの種に由来する素材はほとんど調べられていませんでした。そこで研究チームは、搾りかすと種、それぞれから得た抽出物の計4種類を対象に、含まれるフェノール類の種類と量、抗酸化力、乳酸菌などのプロバイオティクス菌の増殖を助ける働き、病原菌を抑える働きを、ひとつの実験の枠組みでまとめて評価しました。
何をどのように調べたか
試料には、イタリア・マルケ州の在来品種「ラッジャ」から、ひとつの搾油所で同じ製造ロットとして得られた搾りかすと種を用いました。どちらも乾燥させて粉末にし、エタノールと水を80対20で混ぜた溶媒でフェノール類を抽出しました。
抽出物については、液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせた手法で個々のフェノール類を分析しました。あわせて、フェノール類の総量の目安となる値と、DPPHという試薬を用いた方法で抗酸化力を測定しました。搾りかすと種そのものについては、ミネラルなどの元素組成も分析しています。
プロバイオティクス菌としては、市販株のラクチプランチバチルス・プランタルムIMC 509とラクチカゼイバチルス・ラムノーサスIMC 501を使いました。標準的な培地に4種類の試料をそれぞれ1%加えて菌を培養し、増殖の経過、短鎖脂肪酸(菌が糖などを分解してつくる酢酸などの有機酸)の産生量、培養液中のフェノール類の量と抗酸化力を調べました。さらに、大腸菌、緑膿菌、セレウス菌、黄色ブドウ球菌という4種類の病原菌に対して、2種類の抽出物が増殖を抑えるかどうかを試験管内で確かめました。抗菌試験に抽出物だけを用いたのは、搾りかすや種の粉末そのものは溶かしにくいためです。
主な結果
搾りかすの抽出物は、種の抽出物よりも多様なフェノール類を多く含んでいました。とくにベルバスコシドという化合物が多く、検出されたフェノール類全体のおよそ6割を占めていました。オレアセインなどのセコイリドイド類(オリーブに特徴的なフェノール類の一群)も豊富でした。種の抽出物は全体として種類も量も少なかったものの、リグナン類やフラボノイド類はやや多く含まれていました。抗酸化力も搾りかすの抽出物のほうが高く、トロロックス換算で種の抽出物を56.8%上回りました。元素組成では、どちらの試料でもカリウムが最も多く、全体として搾りかすのほうが各元素を高い濃度で含んでいました。
培養実験では、4種類の試料のいずれを加えた場合も、2種類のプロバイオティクス菌は増殖しました。プランタルム株の培養液では、28〜30時間後の時点で短鎖脂肪酸の産生が高まるか、維持されていました。また、搾りかすとその抽出物を加えた場合には、どちらの菌の培養液でもフェノール類の量と抗酸化力が有意に高まりました。
抗菌試験では、搾りかすの抽出物と種の抽出物の両方が、試験した病原菌の増殖を抑えたと報告されています。
研究が示すこと
この研究は、廃棄物として扱われがちなオリーブの搾りかすや種に、プロバイオティクス菌の増殖を支える性質や、病原菌を抑える性質がありうることを、フェノール類の分析と組み合わせて示しました。研究チームは、これらの副産物が機能性食品や栄養補助食品の素材として有望だとしています。
ただし、結果はすべて試験管内の実験から得られたもので、著者ら自身も予備的な証拠と位置づけています。試料も単一品種のひとつの製造ロットに由来するものです。それでも、環境への負担となる副産物を価値ある素材として生かす道筋を示した点に、この研究の意味があります。
原著論文の著者・所属:Shaymaa B. Abdulrazzaq(School of Science and Technology, Chemistry Division, University of Camerino, Via Madonna Delle Carceri 9/B, 62032 Camerino, Italy)、Polina Makarycheva(School of Biosciences and Veterinary Medicine, University of Camerino, Via Gentile III da Varano, 62032 Camerino, Italy)、Stefania Silvi(School of Biosciences and Veterinary Medicine, University of Camerino, Via Gentile III da Varano, 62032 Camerino, Italy)、Marco Zannotti(School of Science and Technology, Chemistry Division, University of Camerino, Via Madonna Delle Carceri 9/B, 62032 Camerino, Italy)、Rita Giovannetti(School of Science and Technology, Chemistry Division, University of Camerino, Via Madonna Delle Carceri 9/B, 62032 Camerino, Italy)、Carlos J. García(Research Group on Quality, Safety and Bioactivity of Plant Foods, Department of Food Science and Technology, Centro de Edafología y Biología Aplicada del Segura-Consejo Superior de Investigaciones Científicas (CEBAS-CSIC), Espinardo, 30100 Murcia, Spain)、Rocío García-Villalba(Research Group on Quality, Safety and Bioactivity of Plant Foods, Department of Food Science and Technology, Centro de Edafología y Biología Aplicada del Segura-Consejo Superior de Investigaciones Científicas (CEBAS-CSIC), Espinardo, 30100 Murcia, Spain)、Francisco A. Tomás-Barberán(Research Group on Quality, Safety and Bioactivity of Plant Foods, Department of Food Science and Technology, Centro de Edafología y Biología Aplicada del Segura-Consejo Superior de Investigaciones Científicas (CEBAS-CSIC), Espinardo, 30100 Murcia, Spain)、Dennis Fiorini(School of Science and Technology, Chemistry Division, University of Camerino, Via Madonna Delle Carceri 9/B, 62032 Camerino, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shaymaa B. Abdulrazzaq, Polina Makarycheva, Stefania Silvi, et al. Elucidating the Multifunctional Roles of Olive Oil By-Products: Phenolic Profiles, Antioxidant Capacity, Probiotic Growth-Promoting and Antimicrobial Activity. Foods 2026-10-01. DOI: 10.3390/foods15193510. 原著ライセンス:CC BY.