著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。

掲載誌:Insects

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

カメムシ類は、口針と呼ばれる針状の口を植物に刺して汁を吸う害虫です。韓国では豆類や穀類、果樹に大きな経済的損失をもたらしており、ゴマもその被害を受けやすい作物の一つとされています。今回取り上げるのは、アジアとヨーロッパに広く分布し、多くの植物を食べるカメムシの一種、Dolycoris baccarum を対象とした研究です。

研究チームによると、この虫がどのように寄主植物を選ぶのか、また吸汁が植物の生理状態にどのような影響を与えるのかは、まだ十分に分かっていません。特に韓国のゴマに対する影響については情報が限られていました。そこで著者らは、複数のゴマ品種を使い、この虫がどの品種を好むのか、品種ごとに種子の被害がどの程度違うのか、吸汁の後に光合成などの生理指標がどう変化するのかを調べました。

何をどのように調べたか

研究チームは、韓国・密陽のゴマ畑で採集した成虫を実験室で飼育し、試験に用いました。ゴマは26品種を温室で栽培しました。

生理的な影響を調べる試験では、各品種の鉢植えのゴマを大きなケージに並べ、成虫100匹を放して7日間吸汁させました。その前後で、葉が二酸化炭素を取り込む速さ(炭素同化速度)、葉の気孔からの水蒸気の通りやすさ(気孔コンダクタンス)、光合成の効率を反映するクロロフィル蛍光の指標を測定しました。クロロフィル蛍光とは、葉の色素が吸収した光の一部が再び放出されるもので、葉を傷つけずに光合成の働き具合を評価する手がかりになります。なお著者らは、この生理指標の比較は実験設計上、反復の独立性が十分でない部分を含むため、探索的な位置づけのものだと明記しています。

好みを調べる試験では、各品種の未熟な緑色のさやをシャーレに入れてケージ内に並べ、24時間絶食させた成虫100匹を放しました。3日間、2時間ごとに各品種の上にいる虫を数え、ただとどまっているだけか、さやを吸っているかを区別して記録しました。

さらに、虫にさらされた植物から収穫した種子を酸性フクシンという色素で染め、虫が吸汁した際に残す痕跡(口針鞘)を顕微鏡で数えて、種子の被害率を品種ごとに求めました。

主な結果

吸汁の後、炭素同化速度、気孔コンダクタンス、クロロフィル蛍光の指標はいずれも品種によって変化の大きさが統計的に有意に異なりました。炭素同化速度の低下が最も大きかったのは SuperHani(87.68%)で、Pyoungan(84.62%)が続きました。一方で、M84、M86、M87 の各品種では炭素同化速度がむしろ上昇しました。クロロフィル蛍光の指標でも、Baegmi、Kopoom、Ansan、Milsung では上昇がみられました。

好みの試験では、虫の好む品種に明確な差がありました。論文によると、試験した虫の88.00%が Chamhwang を好み、Pyoungan と Kopoom がそれぞれ50.00%で続きました。さやを吸っていた割合も Chamhwang が64.00%と最も高くなりました。

種子の被害率も品種間で有意に異なり、Chamhwang が18.52%と最も高く、Suwon195(17.78%)、Suji(14.81%)が続きました。YoungWoong では被害が確認されませんでした。

また、虫の吸汁活動と種子の被害率の間には正の関連が報告されました。収量と光合成関連の指標との間にも統計的な関連が示され、論文では負の相関として報告されています。

研究が示す意味

著者らは、この虫の吸汁が多くのゴマ品種で光合成に関わる働きを低下させ、その影響の大きさや虫の好み、種子の被害には品種によって大きな違いがあると結論づけています。吸汁後も光合成の働きを保ったり高めたりした品種があったことから、虫の加害に耐える性質を持つ品種が存在する可能性も示唆しています。

一方で著者らは、今回観察された生理的な変化は虫の加害との関連を示すものであり、因果関係や品種の耐性を確定する証拠ではないと述べています。また、さやを切り離して行う試験は、生きた植物全体での反応を正確に反映しない可能性があるとして、慎重な解釈を求めています。こうした限界を踏まえつつ、この研究は、ゴマの品種によってカメムシの好みや被害の受け方、生理的な反応が異なることを具体的なデータで示したものといえます。

原著論文の著者・所属:Seo Yeon Hong(Smart Agricultural Technology Division, Department of Upland Crop Research & Development, National Institute of Crop Science, Rural Development Administration, Miryang 50424, Republic of Korea)、Rameswor Maharjan(Smart Agricultural Technology Division, Department of Upland Crop Research & Development, National Institute of Crop Science, Rural Development Administration, Miryang 50424, Republic of Korea)、Jun Hyoung Jeon(Smart Agricultural Technology Division, Department of Upland Crop Research & Development, National Institute of Crop Science, Rural Development Administration, Miryang 50424, Republic of Korea)、Hwi Jong Yi(Smart Agricultural Technology Division, Department of Upland Crop Research & Development, National Institute of Crop Science, Rural Development Administration, Miryang 50424, Republic of Korea)、Young Nam Yoon(Smart Agricultural Technology Division, Department of Upland Crop Research & Development, National Institute of Crop Science, Rural Development Administration, Miryang 50424, Republic of Korea)、Ok Jae Won(Smart Agricultural Technology Division, Department of Upland Crop Research & Development, National Institute of Crop Science, Rural Development Administration, Miryang 50424, Republic of Korea)、Rahel Dinsa Guta(Smart Agricultural Technology Division, Department of Upland Crop Research & Development, National Institute of Crop Science, Rural Development Administration, Miryang 50424, Republic of Korea)、Jeong Eun Lee(Upland Crop Breeding Division, Department of Upland Crop Sciences, National Institute of Crop & Food Science, Rural Development Administration, Miryang 50424, Republic of Korea)、Sung Up Kim(Upland Crop Breeding Division, Department of Upland Crop Sciences, National Institute of Crop & Food Science, Rural Development Administration, Miryang 50424, Republic of Korea)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Seo Yeon Hong, Rameswor Maharjan, Jun Hyoung Jeon, et al. Dolycoris baccarum (L.) (Hemiptera: Pentatomidae) Infestation Induced Differential Changes in Plant Physiology: Preference and Damaging Nature to Different Sesame (Sesamum indicum L.) Varieties. Insects 2026-09-28. DOI: 10.3390/insects17101001. 原著ライセンス:CC BY.