コンビニエンスストアは、忙しい毎日の中で手軽に食事や飲み物を調達できる便利な存在です。一方で、コンビニで売られている食品にはエネルギー密度が高く栄養価が偏りがちなものも多く、身近にコンビニが多いことが食生活や健康にどのような関わりを持つのかは、これまであまり詳しく調べられてきませんでした。今回紹介する研究は、韓国の250地区を対象に、コンビニの密度と肥満・高血圧の有病率との関係を、地理的な広がりを考慮した「空間分析」という手法で検討したものです。

研究チームは、2022年の韓国地域社会健康調査から各地区の肥満・高血圧の有病率や関連する背景データを、2022年の事業所センサスからコンビニに関するデータを取得しました。そのうえで、地域ごとの数値が地理的に似た傾向を示すかどうかを調べる「モランのI統計量」や「LISA分析」という手法を用いて、肥満・高血圧の有病率に地理的なかたまり(クラスター)があるかを確認しました。さらに、通常の回帰分析(OLS)に加えて、地理的な自己相関を考慮した「空間誤差モデル(SEM)」という統計手法を使い、コンビニの密度と疾患の有病率との関連を検証しています。

研究でわかったこと

まず通常の回帰分析(OLS)では、コンビニの密度は肥満・高血圧の両方と関連していることが示されました。しかし、地理的な自己相関を考慮した空間誤差モデル(SEM)で改めて分析したところ、統計的に有意な関連が確認されたのは高血圧についてのみで、肥満との関連は有意ではなくなったと報告されています。

具体的には、人口1,000人あたりのコンビニが1店舗増えるごとに、高血圧の有病率が0.968%上昇するという関連が示されました。研究チームは、コンビニの密度が空間的な自己相関を調整した後でも高血圧と有意に関連していたと結論づけています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は地区単位の集計データを用いた分析であり、個人ごとの食生活や健康状態を直接追跡したものではありません。そのため、「コンビニが多い地域に住む個人が高血圧になりやすい」ということを直接示すものではなく、あくまで地区レベルでの統計的な関連を示したものである点に注意が必要です。また、示された関連は原因と結果の関係(因果関係)を証明するものではなく、他の要因が影響している可能性も考えられます。研究チームも、コンビニの密度が高血圧や肥満に及ぼす健康リスクを軽減するためには、さらなる研究と政策的な取り組みが必要であると述べています。一つの研究の結果であり、これによって結論が確定したわけではない点を踏まえて読むとよいでしょう。

まとめ

今回の研究では、韓国の250地区を対象とした空間分析により、コンビニの密度が高血圧の有病率と有意に関連していることが示唆されました。一方で肥満との関連は、地理的な自己相関を考慮すると有意ではなくなったとされています。身近な食環境と生活習慣病との関わりを考えるうえで、今後さらなる研究の進展が期待される分野といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:韓国におけるコンビニエンスストアの密度と肥満・高血圧の有病率との関連の空間分析(フロンティアーズ・イン・パブリックヘルス・2026年07月)