著者の所属・活動拠点の国は、台湾です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ゴボウの根には、イヌリンと呼ばれる多糖類やポリフェノールが多く含まれています。研究チームは、これらが微生物の栄養源にもなりうる点に注目しました。著者らはこれまでに、ゴボウ根を水で抽出して乾燥させたエキスを栄養源として使い、乳酸菌の生育を調べています。今回は抽出工程を経ず、ゴボウ根を凍結乾燥して粉末にしたもの(以下、ゴボウ根粉末)を黒豆乳にそのまま加えました。そのうえで、ゴボウ根粉末と超音波処理が、黒豆乳を発酵させる乳酸菌にどのような影響を与えるかを調べました。

対象とした乳酸菌は、客家(はっか)の漬物から分離された Lactiplantibacillus plantarum FEL112 という株です。注目したのは、この菌の増殖と、β-グルコシダーゼという酵素の働きです。黒豆乳に含まれるイソフラボンの多くは、糖が結合した「配糖体」の形で存在します。β-グルコシダーゼはこの糖を切り離し、「アグリコン」と呼ばれる形に変えます。論文は、アグリコンのほうが体内に吸収・利用されやすいと説明しています。

何を調べたか

研究チームはまず、黒豆乳にゴボウ根粉末を1%、3%、7%の割合で加え、何も加えない黒豆乳と比較しました。それぞれに乳酸菌を植え付けて37℃で最長48時間培養し、生きている菌の数、酸性度(pH)、β-グルコシダーゼの活性を時間を追って測定しました。

次に、最も適していると判断した1%の条件を使い、発酵を始める前に超音波を当てる処理を試しました。超音波の周波数は40kHzと120kHzの2種類、処理時間は10分と20分です。超音波を当てない場合と比べて、菌の増殖と酵素活性を調べました。さらに発酵物の抽出物について、フェノール類の総量、抗酸化活性、イソフラボンのうちアグリコン型が占める割合を分析しました。抗酸化活性は、鉄イオンを還元する力を測る方法で評価しています。電子顕微鏡による菌の表面の観察も行いました。

主な結果

超音波を使わない場合、β-グルコシダーゼの活性はゴボウ根粉末1%の条件で最も高くなりました。培養24時間の値は16.01 U/mLで、3%や7%の条件を上回りました。3%の条件は菌数こそ多かったものの、pHがより低く、酸性が強くなっていました。7%の条件では、培養後半に菌数が減少しました。著者らはこの結果について、強い酸性が酵素の放出や働きを妨げた可能性を挙げています。加えて、多すぎる固形粉末の網目状構造が、菌による栄養の利用を邪魔した可能性も推測しています。

1%の条件に超音波処理を加えると、24時間時点のβ-グルコシダーゼ活性は18.62〜26.86 U/mLに高まりました。培養12時間時点では、どの超音波条件でも、処理しない場合(14.06 U/mL)より活性が有意に高くなりました。最も高かったのは120kHzで20分処理した条件で、約1.88倍に達しています。48時間の培養期間を通じて、超音波処理なしの条件の活性が最も低い結果でした。一部の超音波条件では、生きている菌の数も処理なしより多くなりました。

発酵物の性質にも違いが見られました。超音波処理をした条件では、フェノール類の総量と抗酸化活性が向上しました。特に40kHzで10分処理した条件は、48時間時点の抗酸化活性が他の条件より有意に高くなりました。イソフラボンのうちアグリコン型が占める割合は、超音波処理なしでは12時間で63.08%、48時間で74.48%でした。これに対し、40kHz・10分の処理では76.17%と81.67%、120kHz・10分の処理では79.42%と81.79%に高まりました。著者らは、超音波処理で酵素活性が高まったことにより、配糖体からアグリコンへの変換が進んだと解釈しています。

研究が示すこと

この研究は、ゴボウ根の粉末を抽出せずに少量だけ黒豆乳に加え、さらに超音波処理と組み合わせると、乳酸菌のβ-グルコシダーゼ活性が高まることを示しました。その結果、発酵物の抗酸化活性やイソフラボンのアグリコン型の割合も向上しました。著者らは、この方法によって抽出工程を省きながら発酵物の機能性を高められると結論づけています。一方で、粉末の量は多ければよいわけではなく、少量に抑えることが重要だという点も、実験結果から読み取れます。

原著論文の著者・所属:Chun-Wei Yang(Department of Food Science, Fu Jen Catholic University, No. 510, Zhongzheng Rd., Xinzhuang District, New Taipei City 242062, Taiwan)、Chun-Wei Yang(Department of Food Science, Fu Jen Catholic University, No. 510, Zhongzheng Rd., Xinzhuang District, New Taipei City 242062, Taiwan)、Wen-Ling Hsiao(Department of Food Science, Fu Jen Catholic University, No. 510, Zhongzheng Rd., Xinzhuang District, New Taipei City 242062, Taiwan)、Chun-Yao Yang(Department of Food Science, Fu Jen Catholic University, No. 510, Zhongzheng Rd., Xinzhuang District, New Taipei City 242062, Taiwan)、Chun-Yao Yang(Department of Food Science, Fu Jen Catholic University, No. 510, Zhongzheng Rd., Xinzhuang District, New Taipei City 242062, Taiwan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Chun-Wei Yang, Chun-Wei Yang, Wen-Ling Hsiao, et al. Effects of Freeze-Dried Burdock Root and Ultrasonic Treatment on the Growth and β-Glucosidase Activity of Lactiplantibacillus plantarum FEL112 in the Fermentation of Black Soymilk. Foods 2026-10-08. DOI: 10.3390/foods15193563. 原著ライセンス:CC BY.