ご飯やパンなどの炭水化物、肉や魚に多い脂質、そしてタンパク質です。この三大栄養素をどのような割合で摂るかは、健康と関わりが深いテーマとして以前から関心を集めてきました。今回紹介する研究は、韓国で2025年に改訂された食事摂取基準(KDRIs)が定める三大栄養素の摂取比率の目安と、メタボリックシンドロームとの関連を、大規模な国民健康調査のデータを使って調べたものです。
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積に加えて血圧・血糖・脂質の異常が重なった状態を指し、生活習慣病のリスクと関連するとされる指標です。三大栄養素のバランスがこうした状態とどう関係しているのかを、実際のデータで確認しようとした点がこの研究のポイントです。
研究でわかったこと
研究チームは、韓国国民健康栄養調査(KNHANES)の2022〜2024年のデータを用い、19歳以上の成人14,768人を対象に横断的な分析を行いました。参加者の炭水化物・脂質・タンパク質の摂取比率を、改訂版KDRIsが示す摂取基準範囲(AMDR)に沿って分類し、年齢や性別、社会経済的要因、生活習慣、食事に関するさまざまな要因を考慮したうえで、メタボリックシンドロームの有無との関連が統計的に検討されました。
まず、炭水化物・脂質・タンパク質のすべてが基準範囲内に収まっている人とそうでない人を比べても、メタボリックシンドロームの割合に明確な差は見られませんでした。一方で、栄養素ごとに見ると異なる傾向が示されています。炭水化物の摂取量が総エネルギーの65%を超える群、および脂質の摂取量が総エネルギーの15%未満の群では、メタボリックシンドロームのオッズ(起こりやすさの指標)が高いという結果でした。逆に、脂質の摂取量が総エネルギーの30%を超える群や、タンパク質の摂取量が総エネルギーの20%を超える群では、オッズが低いという関連が見られました。
また、炭水化物や脂質の摂取カテゴリーについては、性別によって関連の強さが異なる可能性(統計的な交互作用)も示されましたが、年齢層による違いはこのカテゴリー分析では確認されませんでした。
さらに研究チームは、総エネルギー摂取量を変えずに、炭水化物からのエネルギーの5%分を脂質またはタンパク質に置き換えたと仮定した場合の関連も理論的に試算しています。その結果、炭水化物を脂質やタンパク質に置き換えることは、メタボリックシンドロームのオッズが低いことと関連していました。この置換の効果についても、脂質への置換では性別による、脂質・タンパク質どちらへの置換でも年齢層による違いが統計的に見られたとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ある時点でのデータをもとに栄養素摂取と病態の関連を調べた横断研究です。そのため、炭水化物や脂質の摂取比率がメタボリックシンドロームを引き起こす、あるいは特定の栄養バランスがそれを防ぐといった因果関係を証明するものではなく、あくまで統計的な関連が観察されたという点に留意する必要があります。また、対象は韓国の成人であり、食習慣や基準となる摂取比率の考え方が異なる集団にそのまま当てはまるとは限りません。三大栄養素の置換に関する試算も、あくまで理論上の仮定に基づく分析である点も押さえておきたいところです。
この研究はあくまで一つの研究であり、これによって栄養バランスとメタボリックシンドロームの関係が確定的に結論づけられたわけではありません。今後さらに研究が積み重ねられることで、理解が深まっていくことが期待されます。
まとめ
今回の研究では、炭水化物の摂取比率が高く脂質の摂取比率が低い群でメタボリックシンドロームのオッズが高く、逆に脂質やタンパク質の摂取比率が高い群、そして炭水化物を脂質やタンパク質に置き換えた場合にはオッズが低いという関連が示されました。三大栄養素のバランスと健康との関係を考えるうえで、一つの手がかりを示す研究といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:改訂版三大栄養素摂取比率とメタボリックシンドロームの関連(ニュートリエンツ・2026年08月)