レーズンやデーツ(ナツメヤシの実)、各種ナッツ類は、たんぱく質や良質な脂肪酸、カリウム、食物繊維、生理活性成分などを含み、風味や栄養価の高さから世界中で親しまれている食品です。しかし、これらの乾燥食品は高温多湿な環境下でカビが繁殖しやすく、なかでも発がん性が指摘されるアフラトキシンという毒素による汚染が起こりやすいことが知られています。今回紹介する研究は、バングラデシュの首都ダッカの市場で販売されているドライフルーツとナッツ類を対象に、カビの汚染状況とアフラトキシンの濃度を調べ、それを食べることによる健康リスクを評価したものです。
研究チームには、ダッカにあるダフォディル国際大学やバングラデシュ科学産業研究評議会(BCSIR)食品科学技術研究所、ダッカ大学栄養食品科学研究所に所属する研究者が名を連ねています。
研究でわかったこと
研究チームはダッカ市内の市場からナッツ類、レーズン、デーツを集め、真菌(カビ)の汚染度とアフラトキシンB1・B2・G1・G2の濃度を測定しました。その結果、真菌数(試料1グラムあたりのコロニー形成単位)は、ナッツ類で平均84.5±3.20 CFU/g、レーズンで72.8±3.81 CFU/g、デーツで58.0±4.24 CFU/gと報告されています。検出された真菌の属には、Aspergillus(アスペルギルス属)、Penicillium(ペニシリウム属)、Rhizopus(リゾプス属)、Fusarium(フザリウム属)が含まれ、なかでもアスペルギルス属が全体の95.23%を占め、最も優勢だったとされています。
アフラトキシンは調べた試料の57.14%から検出され、その濃度は1.22〜81.97 μg/kg(マイクログラム毎キログラム)の範囲でした。食品の種類別に見た平均アフラトキシン濃度は、デーツで4.15±0.32 μg/kg、レーズンで44.38±34.19 μg/kg、ナッツ類で3.27±1.79 μg/kgとされ、いずれもアフラトキシンB1が主成分だったと報告されています。さらに、試料の3分の1以上が、欧州委員会(EU)が定める基準値である4 μg/kgを上回っていたことも示されています。
これらの食品を食べることによる食事性曝露量(体重1kgあたりの1日摂取量)は1.50〜27.31 ng/kg体重/日と推定されました。また、肝がんのリスク評価も行われ、B型肝炎表面抗原(HBsAg)陽性の人、つまりB型肝炎ウイルスに感染している人において、肝がんのリスクが最も高くなると報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、バングラデシュ・ダッカ市内の市場で採取された試料を対象とした一つの調査結果であり、流通する全てのドライフルーツ・ナッツ類の実態を示すものではありません。また、論文の結論としては、こうした食品中のアフラトキシン汚染が公衆衛生上の重要な懸念であるとした上で、収穫前後の取り扱い改善や定期的な監視、規制の強化が急務であると述べられています。個々の食品を食べることの是非を直接論じたものではなく、あくまで汚染実態と潜在的リスクを評価した研究である点に留意が必要です。
まとめ
この研究では、バングラデシュの市場で流通するドライフルーツとナッツ類の半数以上からアフラトキシンが検出され、一部はEUの基準値を超えていたことが報告されました。特にB型肝炎ウイルス感染者においては肝がんリスクへの影響が大きいことも示唆されています。研究チームは、生産から流通に至る各段階での衛生管理や検査体制の強化が必要だと結論づけています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:バングラデシュにおけるドライフルーツとナッツ類のアフラトキシン汚染:発生状況、食事性曝露、健康リスク評価(JSFAレポーツ・2026年08月)