著者の所属・活動拠点の国は、ドイツです。
掲載誌:Plant Breeding
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
背の高いライ麦と倒伏の問題
冬ライ麦は麦類の中で最も背が高く、そのぶん茎が倒れる「倒伏」が起こりやすい作物です。商業栽培では、倒伏のリスクを下げるために植物成長調整剤が日常的に使われています。
一方で、倒伏は偶発的に起こるという性質があり、倒れにくい系統を選び出すのは容易ではありません。研究チームは、倒伏に強い系統を選ぶための試験方法を検討するとともに、世界各地に由来する遺伝資源の中にどの程度の違いがあるかを調べました。
あえて倒れやすい条件で育てる「誘発試験」
著者らは2024年、窒素の施用量を多くし、成長調整剤を使わないか減らすことで倒伏を起こりやすくした「誘発試験」を設け、16品種と22の試験用ハイブリッドを栽培しました。その結果を、同じ年の通常の収量試験と比較しています。
誘発試験では倒伏のスコアが通常試験より高くなりました(5.1対3.8)。品種間の差のうち遺伝的な違いで説明される度合いの目安となる「遺伝率」は、誘発試験で0.75、通常試験で0.72と同程度でした。
二つの試験の結果の関連の強さを示す相関係数は、草丈でr=0.88、収穫時の茎の倒伏でr=0.57で、いずれも統計的に有意と報告されています。
遺伝資源の中の倒れにくい系統
続いて2025年には、国際的な由来を持つ遺伝資源を用いた118の検定交雑系統を誘発試験で調べ、市販系統などの一群と比較しました。これらの試験は、それぞれ3〜4か所で実施されました。
すべての試験を通じて、倒伏耐性の評価は1〜9の尺度のうち1.1から8.3までと、ほぼ全域に広がりました。遺伝資源の検定交雑系統の間にも、比較用の標準系統の間にも、統計的に有意な遺伝的ばらつきが認められました。遺伝資源を用いた最良の検定交雑系統のスコアは3.2で、最も優れた試験用ハイブリッドの2.8と同程度の倒伏耐性を示しました。
研究が示すこと
著者らは、在来品種や古い品種の中に、倒伏耐性をさらに高める育種に利用できそうな材料が見つかったと結論づけています。また、誘発試験で選んだ系統については、標準的な栽培条件も考慮するため、その後に通常の収量試験を組み合わせるべきだとしています。倒伏を起こりやすくした試験と通常の試験を組み合わせて、倒れにくい系統を探す方法を検討した研究です。
原著論文の著者・所属:T. Miedaner(State Plant Breeding Institute University of Hohenheim Stuttgart Germany)、S. Frank(State Plant Breeding Institute University of Hohenheim Stuttgart Germany)、J. Eifler(KWS LOCHOW GMBH Bergen Germany)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):T. Miedaner, S. Frank, J. Eifler. Lodging Tolerance of Winter Rye ( Secale cereale L.) in Genetic Resources Compared With Commercial Entries and Test of a Provocation Trial. Plant Breeding 2026-10-29. DOI: 10.1111/pbr.70148. 原著ライセンス:CC BY.