日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Plant Production Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

果肉が紫色のサツマイモは、色素のアントシアニンを含みます。研究チームによると、一般的な紫肉サツマイモのアントシアニンは主にペオニジンとシアニジンという種類で構成されます。一方、日本で近年開発された赤紫肉サツマイモでは、ペラルゴニジンという別の種類が中心です。

この赤紫色は劣性の性質で、フラボノイド3'-水酸化酵素(F3'H)という酵素の働きと関係していると説明されています。劣性の性質は、両親から受け継いだ遺伝子がそろわないと現れにくいものです。赤紫肉サツマイモの交配に使える育種素材は限られています。そこで著者らは、果肉にアントシアニンを持たない遺伝資源の中から、赤紫肉サツマイモの育種に有望な素材を見つけることを目指しました。なお、ここで紹介する内容は論文の抄録に基づいています。

白肉・黄肉の親を赤紫肉系統と交配して評価

研究チームは、果肉が白色または黄色の親6品種・系統を、赤紫肉サツマイモの系統と交配しました。そして、生まれた子ども(F1世代)を調べました。赤紫肉系統は「検定用の相手」として使われ、交配相手となった親がもつF3'Hの働きを推し量る役割を担いました。

論文によると、6つの交配すべてで、F1世代の果肉は紫色になりました。ただし、品種「こなみらい」に由来するF1世代は、ほかの5つの交配に比べて、アントシアニンに占めるペラルゴニジンの割合が高くなりました。著者らはこの結果から、「こなみらい」は紫肉サツマイモ育種の遺伝的な幅を広げる有望な親だと考えています。

「こなみらい」の孫世代で赤紫肉が多く出現

次に研究チームは、「こなみらい」が実際に有効な素材かどうかを確かめました。用いたのは、「こなみらい」の子孫である系統「九系22242-3」です。この系統は紫色の果肉を持ち、アントシアニンのおよそ20%をペラルゴニジンが占めます。この系統を赤紫肉サツマイモと交配し、できたF1世代について、ペラルゴニジンの割合と農業上の形質を評価しました。農業上の形質には、乾物率(水分を除いた成分の割合)やでんぷん含量が含まれます。

その結果、F1世代は果肉の色で2つのグループに分かれました。赤紫肉と紫肉の比は16対19で、「こなみらい」の孫にあたる世代では赤紫肉の個体が多く現れたと報告されています。また、乾物率とでんぷん含量はどちらも正規分布を示しました。つまり、多くの個体が平均付近に集まり、高い値や低い値の個体も一定の割合で含まれていました。著者らは、この孫世代の中に、赤紫色の果肉と高い乾物率・でんぷん含量をあわせ持つ優良な個体が存在したとしています。

研究が示すこと

この研究は、果肉にアントシアニンを持たない遺伝資源も、交配を工夫すれば赤紫肉サツマイモの育種素材になりうることを示しました。とくに「こなみらい」は、限られていた育種素材の幅を広げる候補として位置づけられ、その子孫から色と品質の両面で優れた個体が得られたことが報告されています。

著者:Takeo Sakaigaichi(Miyakonojo Research Station , NARO Kyushu-Okinawa Agricultural Research Center , Miyakonojo , Japan)、Rie Kurata(NARO Kyushu-Okinawa Agricultural Research Center)、Keisuke Suematsu(NARO Kyushu-Okinawa Agricultural Research Center)、Akira Kobayashi(NARO Kyushu-Okinawa Agricultural Research Center)、Yukari Kawata(NARO Kyushu-Okinawa Agricultural Research Center)、Masaru Tanaka(NARO Kyushu-Okinawa Agricultural Research Center)、Yasuhiro Takahata(NARO Kyushu-Okinawa Agricultural Research Center)、Yumi Kai(NARO Kyushu-Okinawa Agricultural Research Center)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Takeo Sakaigaichi, Rie Kurata, Keisuke Suematsu, et al. Screening of the breeding materials from genetic resources lacking anthocyanin for the development of purple-fleshed sweetpotato. Plant Production Science 2026-10-01. DOI: 10.1080/1343943x.2026.2737844. 原著ライセンス:CC BY.