著者の所属・活動拠点の国は、フランス、ニュージーランドです。
掲載誌:Meat Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
肉のpH(酸性・アルカリ性の度合い)は肉質を示す指標のひとつで、色や柔らかさ、日持ちに影響します。研究チームは、肉を傷つけずにpHを予測する方法として近赤外分光法(NIRS)に注目しました。NIRSは、肉に近赤外線を当てて、跳ね返ってきた光の性質(スペクトル)から成分や状態を推定する技術です。この研究の目的は、牛肉などさまざまな赤身肉を対象に、NIRSによるpH予測モデルを総合的に評価することでした。
どのように調べたか
著者らは2539点の試料をもとに予測モデルを作りました。データには、17種類の筋肉、3種類の動物(牛、羊、鹿)、4種類のNIRS測定機器から得たものが含まれています。モデルの構築には、画像認識などにも使われる人工知能の手法である深層畳み込みニューラルネットワーク(DCNN)を用いました。
モデルの性能は、モデル作成に使ったデータでの当てはまり(キャリブレーション)、別のデータでの検証、さらに異なる動物や筋肉を用いた外部テストによって確かめられました。
主な結果
抄録によると、モデル作成時の性能は、予測値と実測値の一致度を示す決定係数R²が0.95、予測誤差の指標SEPが0.07でした。検証では、R²が0.82、SEPが0.14と報告されています。
外部テストでは、異なる動物や筋肉に対してもpHを予測できることが確認されました。ただし、INDIGOという携帯型の測定機器では予測精度が下がりました。著者らは、筋肉の構造に関わる情報をとらえられないことがセンサーの予測性能を低下させ、偏り(バイアス)を生じさせたと報告しています。
研究が示すこと
研究チームは、肉のpHを評価するための頑健なNIRSベースの手法は実現可能であり、その条件として、スペクトルの測定に使う機器が赤身肉に適していることを挙げています。著者らは、この方法が食肉加工におけるリアルタイムの品質管理に新たな可能性を開くと述べています。肉種や筋肉が違っても使えるモデルの見通しと同時に、測定機器の選び方が結果を左右することを示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:M.P. Ellies-Oury(Institut National de Recherche pour l'Agriculture, l'Alimentation et l'Environnement (INRAE), Université Clermont Auvergne, VetAgro Sup, UMR1213, Recherches sur les Herbivores, Theix, Saint-Genès Champanelle, 63122, France; Bordeaux Sciences Agro, CS 40201, Gradignan, 33175, France; Bioeconomy Science Institute, Palmerston North, New Zealand. Electronic address: [email protected])、C.E. Realini(Bioeconomy Science Institute, Palmerston North, New Zealand)、R. Zhang(Bioeconomy Science Institute, Palmerston North, New Zealand)、Y. Dixit(Bioeconomy Science Institute, Palmerston North, New Zealand)、M.M. Reis(Bioeconomy Science Institute, Palmerston North, New Zealand. Electronic address: [email protected])
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):M.P. Ellies-Oury, C.E. Realini, R. Zhang, et al. Comprehensive assessment of prediction of pH in red meat based on near-infrared spectroscopy (NIRS). Meat Science 2026-10-16. DOI: 10.1016/j.meatsci.2026.110240. 原著ライセンス:CC BY.