ヨーグルトなどの発酵乳製品には、乳酸菌などの微生物や機能性成分が含まれており、おなかの調子や生活の質(QOL)を良くする可能性があるとして注目されています。今回紹介するのは、ブルガリア菌として知られるLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusで発酵させた脱脂粉乳(FSMP)が、軽度から中等度の消化器症状を持つ健常な人の消化器の健康にどのような影響を与えるかを調べた研究です。「発酵乳製品はおなかに良さそう」というイメージを、実際のデータで確かめようとした試みといえます。

研究でわかったこと

この研究では、軽度から中等度の消化器症状がある健常な参加者を対象に、次の3つのグループに分けて8週間、1日20gを摂取してもらう無作為化比較試験(ランダムに割り付けてグループ間を比較する試験デザイン)が行われました。

  • ブルガリア菌発酵脱脂粉乳(FSMP)を摂取するグループ
  • 発酵させていない脱脂粉乳(SMP)を摂取するグループ
  • 対照として、マルトデキストリン(消化に影響しにくいとされる糖質)を摂取するグループ

試験を完了したのは84人(女性62%、平均年齢34.9±5.9歳)でした。評価項目には、QOL、便中カルプロテクチン(腸の炎症の指標とされるもの)、腸管通過時間、おならの回数、便の状態、食事摂取量、体格に関する測定などが含まれていました。

結果として、SMP(発酵させていない脱脂粉乳)を摂取したグループは、マルトデキストリン摂取グループと比べて、不安感(P=0.015)、不快感(P=0.002)、総合的なQOLスコア(P=0.010)が改善したと報告されています。同様に、SMPはFSMP摂取グループと比べても、不快感(P=0.007)と総合スコア(P=0.023)の改善が見られたとされています。それ以外の項目については、介入後にグループ間で統計学的な差は見られなかった(P>0.05)とのことです。

また、追加の解析では、試験開始時点の症状がより強かった人に限ってみると、FSMPを摂取した場合、マルトデキストリンと比べて便の状態がより正常に近づき(P=0.016)、おならの回数が減った(P=0.008)という結果も示されています。

全体として、この探索的な解析では、ブルガリア菌による発酵脱脂粉乳が、今回対象となった人々の消化器の健康に与える効果は限定的だったとまとめられています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、あくまで軽度から中等度の消化器症状を持つ健常者を対象にした一つの試験であり、結果が広く一般化できるかどうかはまだ確定していません。特に注目したいのは、発酵させたFSMPよりも、発酵させていないSMPの方がQOLの一部指標で良い結果を示したという点です。「発酵させているかどうか」だけでは単純に効果の有無を説明できない可能性を示唆する結果といえるでしょう。また、症状がより強かった人ではFSMPに対する反応が異なっていた点についても、探索的な解析の結果である以上、さらなる検証が必要と考えられます。

まとめ

今回紹介した研究では、ブルガリア菌で発酵させた脱脂粉乳(FSMP)は、軽度から中等度の消化器症状を持つ健常な人々において、消化器の健康への効果は限定的であったと報告されています。一方で、発酵させていない脱脂粉乳(SMP)の方がQOLの一部指標を改善したという結果も得られており、発酵乳製品と消化器の健康の関係は単純ではないことがうかがえます。今後、さらなる研究による検証が期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ブルガリア菌発酵脱脂粉乳は、軽度から中等度の消化器症状を有する健常者の消化器の健康に限定的な効果しか示さない:無作為化比較試験の結果(ガット・マイクロバイオーム)