かゆみを伴う発疹が繰り返し何週間も続く「慢性特発性蕁麻疹(じんましん)」は、原因となる特定のきっかけがはっきりしないまま長引くことが多い皮膚の病気です。治療の中心は眠くなりにくいタイプの第二世代抗ヒスタミン薬とされていますが、実はこの薬が効く患者さんの割合はそれほど高くないと報告されています。効きにくい患者さんの一部は、オマリズマブという高価な薬を選ぶこともありますが、それでも治りきらない人が多いのが実情のようです。そこで注目されているのが、薬に頼らず、比較的安全で経済的、続けやすい「食事・栄養」からのアプローチです。今回紹介する総説は、慢性特発性蕁麻疹に対する食事・栄養戦略について、これまでの研究をまとめて整理したものです。

研究でわかったこと

この総説では、慢性特発性蕁麻疹の発症に関わるとされる複数の仕組み――体内でのヒスタミンの代謝、腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランス、免疫システムの働き――に、食事や栄養がどう関わりうるかを、これまでの知見に基づいて系統的に整理しています。

まず、特定の食品や添加物などを疑って行う除去食(いわゆる偽アレルゲン除去食)については、あくまで短期的な補助的手段として位置づけられており、症状の引き金となる食品がはっきり特定できている患者に対してのみ勧められる、とされています。次に、ビタミンDの補充については、肥満細胞(マスト細胞)からヒスタミンなどが放出される「脱顆粒」という反応を抑え、免疫のバランスを調整する方向(Th2免疫シフトの促進)に働く可能性があると報告されています。さらに、プロビオティクス(善玉菌などのサプリメント)やジアミンオキシダーゼ(DAO、体内でヒスタミンを分解する酵素)の活用については、腸のバリア機能を補修し、食事由来のヒスタミンが体に与える影響を減らす方向に働く可能性がある、と整理されています。

この総説は、こうした複数の食事・栄養アプローチについて、それぞれの作用の仕組みとこれまでの臨床的な根拠を比較検討し、患者ごとに合わせた「個別化された」栄養管理プランを考えるための参考情報を提供することを目的としています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この論文は、新たな実験や臨床試験を行ったものではなく、既存の研究知見を整理し直した総説(レビュー)です。そのため、ここで紹介されている食事・栄養戦略は、特定の治療法の効果を証明するものではなく、あくまで「作用の仕組みや臨床的根拠が報告されている」という段階の情報として理解する必要があります。除去食は誰にでも有効というわけではなく、原因となる食品がはっきりしている患者に限定した短期的な位置づけとされている点も踠まえておきたいところです。一つの総説論文であり、慢性特発性蕁麻疹の食事療法について結論が確定したわけではない点に留意してください。

まとめ

慢性特発性蕁麻疹は既存の薬物治療だけでは十分に症状が抑えられない患者が少なくないとされ、その補助策として食事・栄養への関心が高まっていることがうかがえます。この総説では、除去食、ビタミンD補充、プロビオティクスやDAOの活用といった複数のアプローチについて、それぞれのメカニズムと臨床的根拠が整理され、患者ごとに合わせた栄養管理を検討するための材料が示されています。今後、こうした知見がどのように臨床の現場で活かされていくのか、続報にも注目したいところです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:慢性特発性蕁麻疹に対する食事・栄養戦略:メカニズム、臨床的根拠、個別化管理(セオレティカル・アンド・ナチュラル・サイエンス・2026年07月)