理科の実験でおなじみの「ヨウ素デンプン反応」をご存じでしょうか。デンプンを含む溶液にヨウ素液を加えると、茶色だった液が青紫色に変わる反応です。色がはっきり変わるため生徒の興味を引きやすく、家庭科の授業でも食品中の栄養素を確かめる実験としてよく使われてきました。ただし高校家庭科では、成分を調べるだけでなく、その知識が生活や食文化とどうつながるかを意識した授業が求められます。この研究は、日本の食文化に古くから根付く「麹(こうじ)」の働きに着目し、ヨウ素デンプン反応を発展させた実験を検討したものです。

麹を使うとどうなるのか

実験の基本的な流れはこうです。まず片栗粉を溶かした溶液に、ヨウ素を含むうがい薬(イソジン)を加えて青紫色に呈色させます。ここに、酵素源として市販の生の米麹を加えると、麹に含まれる酵素がデンプンを分解していくにつれて、青紫色がだんだん退色していきます。色が消えていく様子を目で追うことで、麹がデンプンを分解する働きを持つことが直感的に理解できるというわけです。

研究では、この退色がどのような条件で起こりやすいかを調べています。具体的には、溶液の温度や加える米麹の量を変えながら退色の進み方を観察し、生徒が実験に確実に成功できる条件や手順を検討しました。その結果、温度と米麹の量によって退色の速さをある程度コントロールできることがわかり、50分という高校の1コマの授業時間内でも実践できる見通しが得られています。また、劇物などの特別な試薬を使わずに実施できるため、通常の調理室でも実験が可能である点も確認されました。

実際に高校生が試した実験

この実験方法が実際の授業で使えるかどうかを確かめるため、高校生を対象に実験を行ってもらい、方法の適用性が検証されました。詳しい結果は学会発表当日に報告するとされており、この要旨の時点では、退色に基づいて麹の糖質分解作用を捉えられる実験の枠組みが構築され、短時間の授業でも実施可能な条件が見えてきた、というところまでが示されています。

この研究を読むうえで

この発表は日本調理科学会大会の研究発表要旨として2026年9月に公表される予定です。麹は味噌や甘酒、日本酒づくりなどに使われてきた、日本の食文化と結びつきの深い発酵素材であり、著者は日本の教育・研究機関に所属しています。今回の取り組みは、理科的な現象観察と食文化の学びを結びつける教材開発の一例として位置づけられるもので、実験条件の検討や高校生への試行を通じた報告にとどまり、麹の健康効果や栄養面での効能を示すものではありません。あくまで教育現場向けの実験手法に関する一つの研究であり、今後さらに詳しい実践結果の報告が待たれます。

まとめ

身近な调理室の道具だけでヨウ素デンプン反応の色の変化を追い、麹がデンプンを分解していく様子を目で確かめられるこの実験は、理科の知識と日本の食文化を結びつける授業づくりの工夫として注目されます。温度や麹の量を調整することで短時間の授業にも組み込めるとされており、今後、高校の家庭科の現場でどのように活用されていくか注目されます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Kaomi Sato, Yutaro Tanimoto. 高校家庭科におけるヨウ素デンプン反応の発展. 日本調理科学会大会研究発表要旨集 (2026). DOI: 10.11402/ajscs.37.0_113.