小麦や大麦、ライ麦に含まれるグルテンは、セリアック病などグルテン関連疾患を抱える人にとって、微量の混入でも体調に影響しうる成分です。そのため加工食品や飲料に含まれるグルテン量を正確に測ることは、食品表示や安全確認の土台になります。今回紹介する研究は、この測定に使う新しい検査キット「BioSystems Gluten」の性能を、国際的な検証基準に沿って確かめたものです。著者らはスペインのBioSystems社研究開発部門に所属しています。
この検査法は、グルテンの中でも免疫毒性を持つとされる『33-merペプチド』という断片を対象に、免疫比濁法(抗体と反応させた際の濁りの変化を光学的に測定する手法)で定量する、自動化された仕組みです。
どのように性能を確かめたのか
検証では、米粉・とうもろこし粉・ワイン・ソーセージという未加工の食品群に加え、コーンブレッドと米クッキーという加工食品も対象にしました。これらに小麦・大麦・ライ麦由来のグルテンを0〜30mg/kgの範囲で意図的に添加し、異なる3ロットの検査キットを用いて、各マトリックス・各添加濃度につき12検体ずつ分析しています。
評価項目は、測定値の直線性、真度(バイアス)、回収率、精度、検出限界(LOD)・定量限界(LOQ)、選択性、そして他成分による干渉の有無など多岐にわたります。さらに、グルテンを含まないことが確認された食品群での回収実験、キット試薬の安定性、そして測定条件を変えたときの頑健性も調べられました。これらはAOAC(米国分析化学会)が定めるグルテン定量法向けのガイドラインに沿って実施されています。
わかったこと
検証の結果、この検査法はAOACが求める性能基準を満たし、定量できる範囲は定量限界の2.5mg/kgから200mg/kgまでと確認されました。回収率はあらかじめ定めた許容範囲内におさまり、他の食品成分による測定への干渉も見られなかったと報告されています。また、開発元の研究室と独立した別の研究室とで測定結果を比較した際にも、同等の結果が得られたとされ、これは測定法の再現性を支える材料として示されています。
著者らは、この自動測定システムが、小麦・大麦・ライ麦由来のグルテンを、未加工食品だけでなく加工後の食品(コーンブレッドや米クッキーのように、他の材料と混ざり調理された状態のもの)でも定量できる、迅速かつ扱いやすい方法であると結論づけています。
この研究を読むうえで
この研究は、食品中のグルテンを測る「検査法そのもの」の精度を検証したものであり、特定の食品がグルテンフリーかどうかを直接評価したものではありません。対象となった食品も米粉・とうもろこし粉・ワイン・ソーセージ・コーンブレッド・米クッキーという限られた品目であり、他の食品や飲料への当てはめは要旨からは判断できません。また、この研究の対象に日本の食品や生産に関する記述は含まれておらず、著者の所属もスペインの企業研究部門のみが示されています。一つの検証研究であり、実際の食品検査現場での運用結果を保証するものではない点に留意が必要です。
まとめ
今回の研究は、食品や飲料中のグルテンを自動・迅速に定量する新しい検査キットについて、国際基準に沿った性能評価を行ったものです。定量範囲や回収率、再現性などの点で基準を満たしたと報告されており、グルテン関連疾患を持つ人々の安全確保に関わる検査技術の一つの選択肢として位置づけられます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Pérez T, Dueñas S, Boix M, et al. Validation of the BioSystems Gluten Immunoturbidimetric Method for Determination of Gluten in Selected Food and Beverage Matrixes: AOAC Performance Tested MethodSM 072503. ジャーナル・オブ・エーオーエーシー・インターナショナル (2026). DOI: 10.1093/jaoacint/qsag006. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.