ワイン造りの過程では、ブドウの果汁を搾った後に皮や種、果肉の残りといった「搾りかす」が大量に発生します。これはワイナリーの主要な副産物であり、廃棄されることも多い一方で、ポリフェノール(フェノール化合物)や食物繊維といった機能性成分を豊富に含むことが知られています。こうした副産物を活用して新しい機能性食品を作る試みは、食品ロス削減の観点からも注目されているテーマです。今回紹介する研究では、このブドウ搾りかすを使って一般消費者にも受け入れられるマフィンを開発し、その栄養特性や体内での挙動を詳しく調べています。

研究でわかったこと

研究チームは、通常のマフィンの一部をブドウ搾りかすで15%または20%置き換えたレシピを作成し、まず消費者による受容性テスト(食べておいしいと感じられるかどうかの評価)を行いました。そのうえで、マフィンに含まれる主要栄養素やフェノール化合物の量を分光光度法や質量分析といった手法で測定し、さらに「in vitro消化モデル」と呼ばれる、口から腸までの消化過程を試験管内で再現する手法を用いて、フェノール化合物がどれだけ体内に取り込まれやすい状態になるか(バイオアクセシビリティ)や、見かけの血糖指数(食後の血糖値の上がりやすさの目安)を調べました。

その結果、ブドウ搾りかすを加えたマフィンでは食物繊維の含有量が増加することが示されました。同時に、フェノール化合物の総量も増え、特にフェルラ酸やナリンゲニンといった成分の含有量が増加していたと報告されています。消化のシミュレーションでは、搾りかすを加えたマフィンにおいて、小腸段階でのフェノール化合物のバイオアクセシビリティが高まる一方、大腸段階ではその傾向が逆転したことが示されました。また、見かけの血糖指数については、搾りかすを加えたマフィン(25)が対照のマフイン(26)よりも低く、糖の放出がやや緩やかであった可能性が示唆されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究では、食物繊維の増加がフェノール化合物のバイオアクセシビリティを低下させる可能性がある、という興味深い関係も示されています。ただし、これはあくまで試験管内での消化シミュレーションによる結果であり、著者ら自身も、食物繊維がバイオアクセシビリティに与える影響についてはさらなる研究が必要であるとし、実際に人の体内でどの程度成分が吸収されるか(バイオアベイラビリティ)を確認するための臨床試験が今後必要だと述べています。マフィンを食べることで健康効果が得られると断定するものではなく、一つの基礎研究としての知見である点に留意してください。

まとめ

ブドウ搾りかすという副産物を活用することで、食物繊維やポリフェノールを増やしたマフィンを作れる可能性、そして血糖指数がやや低くなる可能性が、この研究では示されました。一方で、食物繊維の増加がフェノール化合物の消化管内での挙動に影響を与える可能性も見えてきており、今後さらなる研究や臨床試験を通じて理解が深まることが期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ブドウ搾りかすから機能性マフィンへ:開発、フェノール化合物のバイオアクセシビリティおよび見かけの血糖指数の特性評価(エクスプロレーション・オブ・フーズ・アンド・フードミクス・2026年06月)