同じ野菜や海藻でも、収穫した部位や品種、保存していた期間、加工の仕方によって中身の成分が変わることは、経験的には知られています。しかし、それを具体的にどんな元素や成分の変化として捉えられるのかは、あまり整理されていません。青森県産業技術センターなどの研究グループは、青森県産のナガイモ、カボチャ、モズク類という3つの素材を対象に、元素の組成と機能性成分を組み合わせて分析し、品質が変動する要因を調べました。
この研究には、青森県産業技術センター、岩手医科大学、弘前大学、八戸工業大学、東北大学の研究者が参加しています。対象とした3つの素材はいずれも青森県で生産・採取されたもので、ナガイモは部位や加工形態(すりおろし後の冷凍など)による違い、カボチャは品種・貯蔵期間・加熱加工による違い、モズク類は採取場所による違いが、それぞれの品質変動モデルとして設定されました。
元素と機能性成分を同時に調べる方法
研究では、各試料を凍結乾燥してから粉砕し、内部標準物質としてゲルマニウムを加えて測定用のターゲットを作製しました。これを青森県量子科学センター(QSC)に持ち込み、粒子線励起X線分析(PIXE)という手法で元素組成を調べています。PIXEは、試料に荷電粒子を当てて発生するX線から、含まれる元素の種類と量を分析する手法です。これに加えて、ナガイモについてはγ-アミノ酪酸(GABA)、カボチャについては総カロテノイド量、モズク類については総ポリフェノール量と抗酸化力も分析されました。
素材ごとに見えてきた変動の傾向
3つの素材いずれにおいても、カリウム(K)が主要な元素の一つとして検出されました。そのうえで、リン(P)、塩素(Cl)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)といった元素の組成は、素材の種類や条件によって異なる傾向を示したとされています。
ナガイモでは、塩素やカルシウムなど一部の元素の量が部位によって異なる傾向がみられました。また、すりおろしてから冷凍した試料では、GABAの含有量が高くなる傾向が示されています。
カボチャでは、品種や貯蔵期間、加熱処理に伴ってカルシウムなど一部の元素が変動する傾向がみられました。さらに、総カロテノイド含量は貯蔵とともに増加し、特に貯蔵24~43日の時期に高い値を示したと報告されています。
モズク類については、採取場所によって元素組成に加え、総ポリフェノール量や抗酸化力も異なる傾向が確認されました。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
研究グループは、元素組成のデータと機能性成分の分析を組み合わせることで、青森県産の野菜・海藻素材における品質変動の要因を整理し、原料の選定や加工条件の検討に役立つ補助的な手法となる可能性が示唆されるとまとめています。ここで示された数値や傾向は、あくまで今回対象とした試料や条件のもとで観察されたものであり、断定的な結論として一般化されているわけではありません。一つの研究成果として、今後さらに検証が重ねられていく性格のものと捉えるのが妥当です。
まとめ
今回の研究は、青森県産のナガイモ、カボチャ、モズク類を対象に、PIXEによる元素分析とGABA・カロテノイド・ポリフェノールなどの機能性成分分析を組み合わせることで、部位や品種、貯蔵期間、加熱加工、採取場所といった条件による成分の変動傾向を整理したものです。同じ食材でも育て方や扱い方によって中身の成分が変わりうるという点は、日々の食材選びや保存・調理の工夫を考えるうえでも興味深い視点といえるでしょう。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Yoshikatsu Miyabe, Toshiaki Sasaki, Kaito Murakami, et al. 県産野菜・海藻素材の元素組成と機能性成分からみた品質変動要因の検討. 日本調理科学会大会研究発表要旨集 (2026). DOI: 10.11402/ajscs.37.0_88.