年齢を重ねると、糖尿病や高血圧、肥満といった複数の生活習慣病を同時に抱える方が増えてきます。こうした方々にとって、日々の食事は健康管理の大きな鍵とされていますが、実際にどのような栄養素が体の状態とどう関わっているのかは、地域や集団によって違いがある可能性があります。特に中央アジアの高齢者を対象にした最近の研究はこれまで少なく、この分野には情報の空白がありました。今回紹介する研究は、カザフスタン中部に暮らす高齢者を対象に、日々の栄養素摂取量と血液中の心臓・代謝関連の指標との関連を、男女別に調べたものです。
研究チームは、地域の医療施設を利用する60〜90歳の高齢者351人(男性80人、女性271人)を対象にしました。全員が2型糖尿病、高血圧、肥満を併せ持つ方々です。空腹時の血糖値、総コレステロール、クレアチニン、尿素、中性脂肪といった血液指標を測定するとともに、食事から摂取している栄養素の量を、カザフスタンの基準値に対する割合として算出しました。そのうえで、統計的な相関分析や回帰分析を用いて、食事内容と血液指標の関連を男女別に検討しています。
栄養素の不足とナトリウムの摂りすぎが男女共通で見られた
まず明らかになったのは、多くの微量栄養素で摂取量が基準値を大きく下回っていたことです。カリウムの摂取量は基準値に対して男性で34.3%、女性で32.9%にとどまり、カルシウムも男性33.6%、女性38.1%と低い水準でした。ビタミンCは男性22.3%、女性30.5%、ビタミンEは男性43.7%、女性38.9%、チアミン(ビタミンB1)は男性48.1%、女性49.5%と、いずれも基準値の半分に満たない状況が確認されています。一方でナトリウムについては、男女とも基準値を上回っており、男性では基準値の2倍以上、女性でも2倍近くに達していたと報告されています。
食事と血液指標の関連には男女で違いがあった
次に、栄養素摂取と血液指標との関連を見ると、男女で異なる傾向が示されました。男性では、総脂肪や飽和脂肪の摂取量がクレアチニンの値と相関していたほか、総脂肪の摂取量は中性脂肪とも相関がみられました。さらに回帰分析では、BMI(体格指数)が中性脂肪を予測するもっとも強い要因として挙げられています。一方、女性では食事内容と血液指標との関連がみられる項目は全体的に少なく、その中でもカルシウムとリボフラビン(ビタミンB2)の摂取量は、中性脂肪の値との間に逆方向の関連(摂取量が多いほど中性脂肪が低い傾向)が示されました。
この研究を読むうえで知っておきたいこと
この研究は、特定の集団・地域における横断的な調査であり、食事と血液指標の関連が確認されたからといって、それが原因と結果の関係であると直接示すものではありません。また対象者は男性80人に対し女性271人と人数に偏りがあり、対象も2型糖尿病・高血圧・肥満を併せ持つ高齢者に限られています。この一つの研究だけで結論が確定したわけではなく、今後さらに研究が積み重ねられていく分野だといえるでしょう。とはいえ、複数の慢性疾患を抱える高齢者において、カリウムやカルシウム、ビタミンC・E、チアミンといった栄養素の摂取不足と、ナトリウムの摂りすぎが広くみられたという結果は、この集団の食生活を考えるうえで注目に値するポイントです。
まとめ
今回紹介した研究では、中央カザフスタンに暮らす2型糖尿病・高血圧・肥満を併せ持つ高齢者において、カリウム・カルシウム・ビタミンC・E・チアミンの摂取不足とナトリウムの過剰摂取が男女ともに広くみられることが示されました。また、食事の内容と血液指標との関連には性差があり、男性では体脂肪の状態が主な関連要因となっていた一方、女性ではそうした関連が目立たなかったと報告されています。こうした栄養素の摂取不足やナトリウム過剰を是正することが、この集団における慢性疾患管理の課題として挙げられています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食事関連慢性疾患を有する高齢者における食事栄養素摂取量と心代謝バイオマーカーの性差に関する関連(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年08月)