この研究は、スウェーデンの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

現在の食料の生産と消費のあり方は、持続可能ではないと広く認識されています。この総説論文の著者らは、食料システムを健康的な食事へと転換しつつ、地球が持つ資源の限界(プラネタリー・バウンダリー、地球環境が耐えられる範囲の境界)の内側にとどまりながら、必要な食料生産量を確保する道筋があるのかを検討しました。

著者らが特に注目したのは、将来の都市の食料システムが果たす役割です。世界の人口がますます都市に集中していくなかで、都市には食料システムそのものと都市インフラを作り替える力があると論文は位置づけています。

どのように検討したか

著者らは、食品ごとの環境影響について整備が進んだ世界規模のデータを土台に、この総説をまとめています。分析にあたっては、健康・食事・地球環境という互いに結びついた領域を切り離さず、ひとつのつながり(ネクサス)として扱う「システム的な視点」を採用しました。個々の食品や個別の対策を単独で評価するのではなく、相互の関係のなかで捉える立場です。

報告された主な結果

論文の分析が示すところでは、いくつかの条件が満たされれば、今世紀末に約100億人を、現在の農地の半分未満で養える可能性があるとされています。その条件として著者らが挙げるのは、食事がより植物由来の食品や土壌を使わずに育てる食品(soilless foods)へと移行すること、食品ロスを大幅に減らすこと、そして都市から出る廃棄物に含まれる栄養分を補完的な肥料として循環利用することです。

こうした変化によって、食料に関連する大気への排出量を半減させ、生物多様性の回復を後押しし、複数のプラネタリー・バウンダリーを超えてしまう危険を抑えられる、と論文は報告しています。また、農地と牧草地がこれ以上拡大することを止められる可能性にも言及しています。

健康の面では、主に植物由来の食事へ移行し、あわせてカロリー、糖分、塩分、脂肪、赤身肉、超加工食品の摂取を減らすことで、肥満と非感染性疾患(生活習慣病などうつらない病気)を減らせる可能性があるとされます。著者らは、平均寿命が最大で10年ほど延びうること、年間およそ1500万人の早すぎる死を防げると推計されることを報告しています。

この研究が示す意味

著者らが重要だと強調しているのは、変化が表れるまでの速さです。ここで挙げられた対策の多くは、数か月から数年という単位で効果が生まれうるとされています。自動車や道路のような、いったん造れば長く使われるインフラを作り替える取り組みと比べると、食生活の転換と栄養分の循環利用は、はるかに速く動かせるてこになりうる、というのがこの論文の見立てです。

食のあり方をめぐる選択が、個人の健康と地球環境の双方に同時に関わっていること、そして都市がその転換の舞台になりうることを、この総説は一つのつながりとして描き出しています。

著者:Jan-Olof Drangert(Linköping University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jan-Olof Drangert. Revised diets and urban infrastructure can improve human health and the global environment. Frontiers in Sustainable Food Systems 2026-09-17. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1881497. 原著ライセンス:CC BY.