お腹の調子や腸内環境というと、便を採取して腸内細菌を調べるイメージが強いかもしれません。しかし、腸内細菌が発酵や代謝によって生み出す「腸内ガス」も、腸内環境を映し出す重要な手がかりになると考えられています。とはいえ、これまでの腸内ガスの測定方法は身体への負担が大きく、日常的に調べるのは簡単ではありませんでした。今回紹介する研究は、排便時に腸内ガスを非侵襲的に採取できる新しいシステムを使い、プレバイオティクス(イヌリンとガラクトオリゴ糖)を摂取した際に腸内ガスの組成や腸内細菌叢がどのように変化するのかを調べたものです。
研究でわかったこと
この研究では、健康な成人がイヌリンとガラクトオリゴ糖を7週間にわたって毎日摂取しました。摂取開始前の3週間と、摂取期間の最後の3週間に、排便時の腸内ガスが採取されました。また、便のサンプルは摂取前の2週目と摂取期間の6週目に採取され、腸内細菌叢が調べられています。
その結果、プレバイオティクスの摂取後には、水素と二酸化炭素の量が有意に増加した一方、メタンチオールという物質は有意に減少したと報告されています。さらに、有意な差ではないものの、硫化水素についても減少する傾向がみられたとのことです。
この研究では、こうしたガスの変化をもとに「腸内ガス比指数(発酵ガスと腐敗ガスの比)」という新たな指標が提案されました。この指数は、腸内細菌叢の動的な変化、特に日本人にとって有益とされる菌や硫黄系のガスを産生する菌の相対的な存在比率、そして菌の多様性と強く相関していたことが示されています。研究チームは、この指数が腸内環境を評価するための非侵襲的な機能マーカーとして活用できる可能性を示したとしています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、非侵襲的に採取した腸内ガスの組成と、便から調べた腸内細菌叢との関係に着目した一つの研究であり、これによってプレバイオティクス摂取の健康効果が証明されたり、結論が確定したりしたわけではない点には注意が必要です。あくまで、腸内環境を評価するための新しい指標や測定アプローチの可能性が示されたという段階の報告として捉えるとよいでしょう。
まとめ
排便時に腸内ガスを非侵襲的に採取するという新しいアプローチにより、プレバイオティクス摂取後の水素・二酸化炭素の増加やメタンチオールの減少といった変化が観察され、それらと腸内細菌叢の変化との関連が示唆されました。今後、こうした非侵襲的な指標が腸内環境の評価にどのように役立てられていくのか、注目したいところです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:非侵襲的ガス分析によるプレバイオティクス摂取健常成人の腸内環境評価のための新規指標(サイエンティフィック・リポーツ・2026年07月)