この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Animal Microbiome

ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

ラクトフェリンは鉄と結合する性質を持つタンパク質の一種で、バリア保護作用や免疫調整作用、抗菌作用を持つとされ、人間向けの栄養補助食品や乳児用食品の添加物として広く使われています。今回紹介する研究では、このラクトフェリンを子猫の食餌に加えることで、免疫の状態や腸のバリア機能、血液中の代謝物、そして腸内細菌叢(フローラ)にどのような変化が生じるのかが調べられました。

研究チームは、健康な子猫24匹を3つのグループに分け、市販の基礎食のみを与える群(CON)、基礎食に1kgあたり500mgのラクトフェリンを加えた群(L-LF)、同じく1kgあたり1000mgのラクトフェリンを加えた群(H-LF)として、42日間にわたり給餌しました。給餌21日目と42日目に採血を行い、免疫指標や腸バリアに関連するマーカーを測定したほか、42日目には血清と糞便のサンプルを用いて、代謝物の網羅的な解析(メタボロミクス)と腸内細菌叢の遺伝子解析(メタゲノム解析)も行われました。

研究でわかったこと

結果として、高用量のH-LF群では、血清中の免疫グロブリンA(IgA)の値が、CON群と比べて21日目・42日目のいずれにおいても高いことが報告されました。また21日目の時点で、H-LF群はCON群より免疫グロブリンM(IgM)が高く、炎症性物質であるIL-6は低い値を示したとされています。IL-1βという炎症関連物質については、42日目の時点でL-LF・H-LF両方の群でCON群より低い値が確認されました。

腸のバリア機能に関しても変化が見られました。42日目において、H-LF群では血清中のリポ多糖(LPS)とゾヌリンという物質の濃度が、CON群と比べて低下していたと報告されています。これらは腸のバリアが乱れた際に血液中で増える傾向がある物質とされ、この結果は腸管の状態に関連する指標が改善方向に動いたことを示唆するものです。

血清代謝物の解析では、ラクトフェリンの摂取によって代謝物の全体的なパターンに変化が見られ、H-LF群ではプロリンベタイン、L-アルギニニウム、カルニチンといった物質の濃度が高くなったことが報告されています。

糞便中の腸内細菌叢を調べたところ、L-LF・H-LFの両群でBacteroidota(バクテロイデータ門)の細菌の割合が高く、大腸菌(Escherichia coli)の割合は低いことが確認されました。さらにH-LF群では、Prevotella属、Bifidobacterium属(いわゆるビフィズス菌の仲間)、およびSegatella copriという菌の割合が増加していたとされています。あわせて、二次代謝産物の生合成や各種ヌクレオチド糖の生合成、スフィンゴ脂質代謝といった代謝経路に関連する遺伝子群が、H-LF群で有意に濃縮されていたことも報告されました。

これらの結果を総合し、研究チームは、ラクトフェリンの食餌性補給が子猫の免疫機能を高め、腸のバリアの健全性を改善し、腸内細菌叢を変化させる可能性を示唆しており、特に高用量(1000 mg/kg)でより明確な効果が見られたと結論づけています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は健康な子猫24匹を対象とした42日間の給餌試験であり、一つの研究として得られた結果です。動物や個体数、期間が限定されているため、この結果がすべての猫や、より長期の摂取、あるいは人間に同様に当てはまるかどうかは、この要旨の範囲からは判断できません。研究結果を読む際には、こうした試験の条件を踏まえたうえで、一つの知見として捉えることが大切です。

まとめ

今回紹介した研究では、子猫の食餌に500mg/kgまたは1000mg/kgのラクトフェリンを42日間補給したところ、免疫関連の指標や腸バリアに関連するマーカー、腸内細菌叢の構成に変化が見られたことが報告されました。特に高用量群でより顕著な変化が観察されたとされています。ラクトフェリンと動物の健康との関係を考えるうえで、興味深い基礎データを提供する研究といえるでしょう。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):ラクトフェリンの食餌性補給は子猫の免疫機能を高め、腸管バリアの完全性を改善し、腸内細菌叢を再構築する(アニマル・マイクロバイオーム・2026年08月)

※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。

著者:Qin Wang(Mars Foods (Beijing) Co., Ltd., Beijing, 101407, China)、Yanmeng Long(Mars Foods (Beijing) Co., Ltd., Beijing, 101407, China)、Qingxiang Wang(Mars Foods (Beijing) Co., Ltd., Beijing, 101407, China)、Yuchen Yao(State Key Laboratory of Animal Nutrition and Feeding, College of Animal Science and Technology, China Agricultural University, Beijing, 100193, China)、Chuandi Yi(State Key Laboratory of Animal Nutrition and Feeding, College of Animal Science and Technology, China Agricultural University, Beijing, 100193, China)、Ziqi Sun(State Key Laboratory of Animal Nutrition and Feeding, College of Animal Science and Technology, China Agricultural University, Beijing, 100193, China)、Tianyu Dong(State Key Laboratory of Animal Nutrition and Feeding, College of Animal Science and Technology, China Agricultural University, Beijing, 100193, China)、Yi Wu(State Key Laboratory of Animal Nutrition and Feeding, College of Animal Science and Technology, China Agricultural University, Beijing, 100193, China)、Qing Yang(State Key Laboratory of Animal Nutrition and Feeding, College of Animal Science and Technology, China Agricultural University, Beijing, 100193, China)