著者の所属・活動拠点の国は、イギリス、オランダ、アメリカです。

掲載誌:Evolutionary Applications

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

研究チームは、作用の仕組みが同じ殺菌剤でも、混合することで耐性の発達を抑えられるかを調べました。ある薬剤への耐性が別の薬剤への耐性にもつながることを「交差耐性」といいます。同じ作用の殺菌剤でも交差耐性が完全ではなく、薬剤ごとに効き方が異なる場合に、混合がどのような利点をもたらすかが研究の焦点です。

何を、どのように調べたか

研究チームは、コムギの病原菌Zymoseptoria triticiと、同じ作用のグループに属するアゾール系殺菌剤4成分を対象に、集団内の遺伝的な構成の変化を扱う数理モデルを開発しました。既知のCYP51遺伝子の型を持つ菌について、薬剤の単独使用と2、3、4成分の混合使用で、どの型が増えやすくなるかを比較しました。耐性の発達速度は、病原菌集団の増殖率が変化する速さで評価し、耐性の発達に伴って病気の程度がどれだけ速く増すかを示す指標としました。

主な報告結果

モデルの結果、交差耐性が不完全な殺菌剤の混合は、同じ作用のグループ内でも耐性管理に役立ち、病気を抑える効果をより安定させられると報告されました。組み合わせに使えるアゾール系の有効成分の種類を増やすと、平均的には耐性の発達が遅くなりましたが、種類を増やすことによる追加の利点は次第に小さくなりました。交差耐性が低い組み合わせや、一方に耐性を持つ菌ほど他方には弱い「負の交差耐性」を示す組み合わせで利点が最大となり、交差耐性が少しでも不完全であれば利点が認められました。

この報告が示すこと

この研究は、耐性管理を考える際に、作用の仕組みの違いだけでなく、同じ作用の薬剤間にある効き方の違いも重要になり得ることを示しています。ただし、報告された利点は数理モデルによる検討結果です。研究チームは、今回の検討を同じ作用のグループ内に絞った一方、実際の使用では可能な限り、アゾール系殺菌剤を異なる作用の殺菌剤と組み合わせるべきだと述べています。

※本記事は原著論文の抄録だけで作成しています。

原著論文の著者・所属:Isabel Corkley(ADAS Wolverhampton UK; Rothamsted Research Harpenden Hertfordshire UK; School of Agriculture, Policy and Development University of Reading Reading Berkshire UK)、Neil D. Paveley(ADAS Wolverhampton UK)、Bart A. Fraaije(BU Biointeractions and Plant Health, Wageningen Plant Research Wageningen University and Research Wageningen the Netherlands)、Joseph Helps(Rothamsted Research Harpenden Hertfordshire UK)、Michael W. Shaw(School of Agriculture, Policy and Development University of Reading Reading Berkshire UK)、Alice E. Milne(Rothamsted Research Harpenden Hertfordshire UK)、Nichola J. Hawkins(NIAB Cambridge UK)、Frank van den Bosch(ADAS Wolverhampton UK; Quantitative Biology & Epidemiology Group, Plant Pathology Department University of California, Davis Davis California USA)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Isabel Corkley, Neil D. Paveley, Bart A. Fraaije, et al. Modelling Resistance Management Benefits of Incomplete Cross‐Resistance Within a Fungicide Mode of Action Group. Evolutionary Applications(出版社:Wiley) 2026-11-01. DOI: 10.1111/eva.70346. 原著ライセンス:CC BY.