この研究は、サウジアラビア、スリランカ、アイルランド、イギリスの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

肥満のなりやすさには、生まれ持った遺伝的な体質と、日々の食事の両方が関わると考えられています。ただし、その二つがどのように組み合わさって影響するのか——いわゆる「遺伝と食事の相互作用」——については、地域によって分かっていることの量に差があります。

著者らによれば、スリランカでは肥満が増えつつある一方で、三大栄養素(炭水化物・脂質・たんぱく質)の摂取量やその構成に注目した遺伝と食事の相互作用に関する知見は、まだ限られているといいます。そこで研究チームは、スリランカの成人を対象に、遺伝的なリスクと栄養素の摂り方が、肥満に関わる体格の指標に対してどのように組み合わさって関わるのかを調べました。

何を、どのように調べたか

対象となったのは成人398人で、平均年齢は42.5歳(標準偏差8.3歳)、そのうち60.8%が男性でした。ある一時点での状態をまとめて調べる横断的な分析です。

体格については身体計測を行い、BMI(体重と身長から計算される体格の指標)と腹囲がそれぞれ高い状態にあたるかどうかを判定しました。食事については、妥当性が確認された調査ツールを用いて三大栄養素の摂取量を評価しています。炭水化物と脂質の摂り方の分類は、この研究の対象集団自体から求めた区切り値にもとづいて設定され、医学的に定義された特定の食事療法ではなく、集団内での相対的な食べ方のパターンとして解釈されています。

遺伝的な体質については、肥満との関連が知られている3か所の遺伝子の個人差(FTO遺伝子のrs8050136とrs1588413、TCF7L2遺伝子のrs7903146)を組み合わせ、遺伝的リスクスコア(GRS)という一つの指標にまとめました。これは、リスクに関わる型をどれだけ持っているかを合算して数値化したものです。分析では、結果に影響しうる要因を調整したうえで、遺伝的リスクと食事それぞれの関連に加え、両者の組み合わせによる効果(相互作用)が検討されました。

報告された主な結果

まず、遺伝的リスクスコアが高いことは、腹囲が大きい状態と関連していました(p = 0.032)。また、炭水化物と脂質の摂り方のパターンは、BMIが高い状態(p = 0.044)および腹囲が大きい状態(p = 0.021)と関連しており、基準とした「炭水化物が少なく脂質が多い」パターンと比べて、「炭水化物が多く脂質が少ない」パターンやその他の組み合わせのパターンでは、該当する見込みが低いと報告されています。

注目されたのは、遺伝的リスクと食事の組み合わせによる効果です。遺伝的リスクスコアと炭水化物摂取との間には、BMIが高い状態(相互作用のp = 0.008)と腹囲が大きい状態(p = 0.033)について統計的に意味のある相互作用が認められ、炭水化物の摂取が少ない群では、遺伝的リスクが高い人ほど該当する見込みが高くなっていました。脂質についても、BMIが高い状態に関して相互作用が認められ(p = 0.03)、脂質の摂取が多い群では遺伝的リスクが高い人でその見込みが有意に高いと報告されています。

さらに、「炭水化物が少なく脂質が多い」パターンの中で見ると、遺伝的リスクが高い人はBMIが高い状態にあたる見込みが約3.1倍(オッズ比3.1、p = 0.014)であったとされています。ここでの「見込み」はオッズ比という指標で表されたもので、二つのグループの間で、ある状態にあたる人の割合の偏りを比べたものです。

この結果が示すこと

著者らは、スリランカの成人において、炭水化物と脂質の摂取量が、遺伝的なかかりやすさと肥満との関連に影響を与えている可能性があり、それは特に相対的に炭水化物が少なく脂質が多い食べ方のもとで顕著であると結論づけています。

言い換えれば、同じ遺伝的な体質を持っていても、その体質が体格にどう表れるかは食事の内容によって異なりうる、という見方を支持する結果です。なお、これは一時点の状態を比べた横断的な分析であり、報告されているのは関連や組み合わせによる効果であって、原因と結果を確かめたものではありません。

著者:Manahil M Bineid(Department of Food and Nutritional Sciences, College of Agriculture and Food Sciences, King Faisal University, Al-Ahsa 31982, Saudi Arabia)、Dilki S. Perera(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Livestock, Fisheries and Nutrition, Wayamba University of Sri Lanka, Makandura 60170, Sri Lanka)、Zara Crosbie(Human Nutrition, School of Agriculture and Food Science, University College Dublin, D04 V1W8 Dublin, Ireland)、A. Chandrasekara(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Livestock, Fisheries and Nutrition, Wayamba University of Sri Lanka, Makandura 60170, Sri Lanka)、Kumari M. Rathnayake(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Livestock, Fisheries and Nutrition, Wayamba University of Sri Lanka, Makandura 60170, Sri Lanka)、Karani S. Vimaleswaran(Hugh Sinclair Unit of Human Nutrition, Department of Food and Nutritional Sciences, Institute for Cardiovascular and Metabolic Research (ICMR), University of Reading, Reading RG6 6DZ, UK)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Manahil M Bineid, Dilki S. Perera, Zara Crosbie, et al. Interactions Between Genetic Risk and Macronutrient Intake on Obesity-Related Traits in Sri Lankan Adults. Nutrients 2026-09-09. DOI: 10.3390/nu18182951. 原著ライセンス:CC BY.