この研究は、インドの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Future Postharvest and Food
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
バナナの花(バナナブロッサム)は、バナナ栽培の過程で生じる農業資源のひとつですが、著者らによれば十分に活用されていません。この研究チームは、バナナの花が植物由来の機能性食品素材として使える可能性に着目し、その成分と性質を調べました。
「機能性食品素材」とは、栄養を補うだけでなく、食品の食感や保水性といった性質を整えたり、体にはたらく成分を含んだりする原料のことです。研究チームは、捨てられがちな農業副産物を有効活用する(廃棄物のバリュー化)という観点から、食品への応用可能性を探ることを目的としています。
何をどう調べたか
研究チームは、バナナの花を苞(ほう、花を包む外側の葉状部分)、萼(がく)、雌しべ、茎の4つの部位に分け、それぞれを別々に分析しました。調べた項目は、たんぱく質や脂質などの一般成分、水や油をどれだけ吸うかといった物理化学的な性質、アミノ酸の組成、そして生物活性をもつ成分です。
分析はいずれも3回ずつ繰り返し、一元配置分散分析(複数のグループ間に差があるかを統計的に確かめる手法)を用いて、有意水準5%で部位間の違いを検討しています。成分の同定には、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)、赤外分光分析(FTIR)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)といった分析手法が使われました。
報告された主な結果
一般成分では、たんぱく質がもっとも多かったのは茎で9.88±0.66%でした。脂質は雌しべで最も高く10.01±6.46%、萼で最も低く3.49±1.31%と報告されています。灰分(ミネラル分の目安)は0.07%から0.12%の範囲でした。食物繊維は茎(0.93±0.06%)と苞(0.92±0.11%)で比較的高い値を示しています。
物理的な性質では部位差がはっきり出ました。萼はかさ密度が0.17 g/cm³と低い一方で、水を吸う力が5.70 g/g、油を吸う力が2.63 g/gと高い値を示しました。これに対し茎はかさ密度が0.34 g/cm³と高く、加熱調理による重量の減少(調理損失)は6.9%でした。
成分の同定では、GC-MSとFTIRにより、サリチル酸の誘導体が主に雌しべから見いだされ、フェノール酸類やテルペノイド類は苞と茎により多く含まれていました。またHPLCによる分析では、萼の主要なアミノ酸としてリシンが同定されています。
この結果が示すこと
著者らは、これらの結果がバナナの花の部位ごとに成分構成が多様であることを示しており、部位を使い分けた利用を支持すると述べています。具体的な応用先としては、食物繊維を多く含むベーカリー製品、植物性たんぱく質を使った配合、そして機能性食品が挙げられています。
つまり、バナナの花を一括して扱うのではなく、どの部位にどんな特徴があるかを踏まえて使い分けるという考え方です。これまで活用されてこなかった農業資源を、その性質に合った形で食品に生かす道筋を、この研究は成分データとして示しています。
著者:Aamnesh Antonisamy(National Institute of Food Technology, Entrepreneurship and Management (NIFTEM‐T) Thanjavur Tamil Nadu India)、Sanakya Murugesan(National Institute of Food Technology, Entrepreneurship and Management (NIFTEM‐T) Thanjavur Tamil Nadu India)、Srithar Harimuthuvel(National Institute of Food Technology, Entrepreneurship and Management (NIFTEM‐T) Thanjavur Tamil Nadu India)、Suresh Kumar Kalakandan(National Institute of Food Technology, Entrepreneurship and Management (NIFTEM‐T) Thanjavur Tamil Nadu India)、Gururaj Pejavara Narayana(National Institute of Food Technology, Entrepreneurship and Management (NIFTEM‐T) Thanjavur Tamil Nadu India)、Sushmita Mandal(National Institute of Food Technology, Entrepreneurship and Management (NIFTEM‐T) Thanjavur Tamil Nadu India)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Aamnesh Antonisamy, Sanakya Murugesan, Srithar Harimuthuvel, et al. Nutritional, Functional, and Analytical Characterization of Banana Blossom: A Waste Valorization Approach. Future Postharvest and Food 2026-09-09. DOI: 10.1002/fpf2.70057. 原著ライセンス:CC BY.