著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:Plant Science Today
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
葉物野菜の農薬残留を総合的に見直す
レタスやホウレンソウ、キャベツなどの葉物野菜は、ビタミンやミネラル、食物繊維を多く含み、世界中で日常的に食べられています。一方で、栽培では農薬が多く使われることがあり、食べる部分に農薬が残る場合があります。著者らは、葉物野菜は皮をむけず、表面積が広いため農薬が付着しやすいこと、さらに植物のほぼ全体を食べることから、残留農薬の管理が特に重要だと指摘しています。
この総説は、レタス、キャベツ、ホウレンソウ、アマランサス、カレーリーフ、セロリ、ルッコラ、パセリといった主要な葉物野菜について、これまでの研究を集めて整理したものです。著者らは三つの観点に注目しました。各国で行われた残留農薬の調査結果、栽培条件によって農薬がどのくらいの速さで減っていくか、そして家庭や畑で残留農薬を減らす方法です。なお、食品に残ってよい農薬の上限である「残留基準値」は国や機関によって異なるため、この総説ではそれぞれの研究が用いた基準をそのまま示しています。
各国の調査で見つかった基準超過
著者らがまとめた調査では、複数の農薬が同時に検出され、残留基準値を超える例も多く報告されていました。たとえばガーナのレタスでは、有機リン系殺虫剤のクロルピリホスが試料の78%から検出され、平均濃度は1キログラムあたり1.6ミリグラムでした。これは許容値の0.5ミリグラムの3倍を超える水準です。タイの白菜でも、試料の12.5%からクロルピリホスが検出され、平均2.86ミリグラムと基準の0.5ミリグラムを大きく上回っていました。
アマランサスを調べたある研究では、20試料のうち13試料からキナルホスが検出され、そのうち4試料が欧州連合(EU)の基準値を超えていました。カレーリーフを対象にした別の研究では22種類の農薬が見つかり、最も高かったプロフェノホスは1キログラムあたり25.69ミリグラムに達していました。トルコのルッコラからは23種類の農薬が検出され、そのうち8種類はEUで承認されていないものでした。中国・浙江省のセロリ210試料では35種類が検出され、5種類が基準値を超えていたと報告されています。
農薬が減る速さと、家庭でできる除去
散布後の農薬の減り方を調べた研究の多くでは、残留量は時間とともに一定の割合で減っていく経過をたどっていました。著者らは、残留量が半分になるまでの期間を示す「半減期」が、農薬の種類、作物、栽培環境によって大きく異なることを示しています。キャベツでは半減期が1〜4日程度の農薬が多い一方、アゾキシストロビン、チアメトキサム、カルベンダジムを推奨量で使った研究では、半減期がそれぞれ26.65日、18.24日、33.00日と長く報告されていました。また、ベトナムのアマランサスでは、露地栽培のほうが網室栽培よりも農薬の減少が速く、散布から安全に収穫できるまでの期間は、シペルメトリンで露地7.70日、網室9.40日と算出されていました。
残留農薬を減らす方法については、家庭で最も一般的な水道水での洗浄は、水に溶けにくい農薬が多いため効果が限られることがあると著者らは述べています。カレーリーフの比較研究では、2%のレモン汁溶液が最も効果が高く(35.71〜56.52%減少)、水道水は最も低い結果(3.57〜27.84%)でした。キャベツでは2%食塩水で5分洗うとクロルピリホスの減少は15.96%にとどまった一方、5分間の炒め調理では86.60%減少したと報告されています。ホウレンソウでは10分間の湯での加熱調理でイミダクロプリドが99.52%減った一方、キナルホスは33.45%の減少にとどまるなど、同じ方法でも農薬によって効果が大きく違いました。
監視・栽培・除去を組み合わせる必要性
著者らは、葉物野菜では多くの残留農薬が基準値を超えることがあり、消費者にとってのリスクにつながると結論づけています。農薬の減り方は条件によって大きく異なり、除去方法の効果も農薬や野菜の種類によって変わるため、洗浄や加熱、食塩・酢・市販洗浄剤などを状況に合わせて使い分ける必要があるとしています。そのうえで、消費者の健康を守るには、継続的な残留監視、農業の実践の改善、科学的に確かめられた除去方法を組み合わせて取り組むことが求められると示しています。
原著論文の著者・所属:S M R Susmi(Department of Agricultural Entomology, College of Agriculture, Vellayani, Thiruvananthapuram 695 522, Kerala, India)、Paul Ambily(All India Network Project (AINP) on Pesticide Residues and Contaminants, Department of Agricultural Entomology, College of Agriculture, Vellayani, Thiruvananthapuram 695 522, Kerala, India)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):S M R Susmi, Paul Ambily. Pesticide residues in leafy vegetables: From detection to detoxification. Plant Science Today 2026-09-15. DOI: 10.14719/pst.13940. 原著ライセンス:CC BY.