スーパーでよく見かけるレタスやほうれん草などの葉物野菜は、土を使わず水と液体肥料(養液)だけで育てる「水耕栽培」でも生産されています。水耕栽培では土壌の代わりに養液が植物への栄養供給を担うため、養液の種類や濃度が野菜の育ち方や味・品質にどう影響するのかは、栽培の効率を考えるうえで気になるテーマです。今回紹介する研究は、バングラデシュで異なる3種類の養液を使い、複数の葉物野菜を育てて比較したものです。

この研究は、バングラデシュ農業研究所(BARI)の園芸研究センターにある温室で、2020年11月26日から2021年1月31日にかけて行われました。研究チームは、レタス(BARI Lettuce-1、Green Wave、New Red Fireの3品種)、ほうれん草(BARI Palongshak-1、BARI Palongshak-2の2品種)、パクチョイ(BARI Batishak-1)、水菜(Late White Stem、Mustard Green、Salad Kyomizunaの3品種)、ルッコラ、スイスチャードという6種類・11品種の葉物野菜を用意しました。これらを300リットルの栽培容器を使った「湛液(たんえき)水耕」という方式で育て、養液には「改良クーパー液-1(MCS-1)」「改良クーパー液-2(MCS-2)」「園試処方(ENS)」という3種類を用いて比較する実験(完全無作為配置法)が行われました。

研究でわかったこと

要旨によると、3種類の養液の違いによって、野菜の生育には全体として有意な差が見られたと報告されています。全般的な生育の良さを比較すると、MCS-1で育てた野菜が最も生育が良く、次いでMCS-2、そしてENSで育てた野菜の生育が最も控えめだったとされています。

品質面についても違いが見られました。可溶性固形分(糖度などの指標となる成分)、葉や茎の汁液のpH、滴定酸度(酸っぱさの指標)は、いずれもMCS-1で最も高く、次いでMCS-2という順だったと報告されています。一方で、クロロフィル(葉緑素)やカロテノイドといった色素成分については、MCS-2で育てた野菜が他の2種類の養液よりも低い値を示したとされています。

これらの結果から、論文の著者らは「改良クーパー液-1は、バングラデシュの冬季に湛液水耕で葉物野菜を育てる際に使用できる」と結論づけています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、バングラデシュの特定の温室・特定の時期(2020年11月~2021年1月の冬季)という条件下で、限られた品種の葉物野菜を対象に行われたものです。使用された養液も改良クーパー液-1・改良クーパー液-2・園試処方という3種類に限られており、他の養液や栽培条件でも同様の結果になるとは限りません。また、この記事で触れた可溶性固形分やpH、色素成分などの違いは、あくまで研究内で観察された傾向であり、野菜としての優劣や健康面での効果を直接示すものではない点にも注意が必要です。一つの研究の結果であり、これをもって結論が確定したわけではないことを踏まえて読んでいただければと思います。

まとめ

今回紹介した研究では、バングラデシュの冬季に3種類の水耕栽培用養液を使って6種類・11品種の葉物野菜を育て、生育や品質を比較しました。その結果、改良クーパー液-1を使った場合に全体的な生育や可溶性固形分、酸度などが他の養液より優れる傾向が見られたと報告されています。水耕栽培という身近になりつつある栽培方法においても、使う養液の種類によって野菜の育ち方や性質に違いが出うることを示す一例として、興味深い研究といえるでしょう。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:3種類の水耕栽培用養液が水耕栽培葉物野菜の収量と品質に与える影響(バングラデシュ農業研究誌・2026年07月)