著者の所属・活動拠点の国は、スペインです。

掲載誌:Clinical Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

染色体の末端には「テロメア」と呼ばれる部分があり、細胞分裂を重ねるにつれて短くなっていきます。テロメアの短縮は生物学的な老化の特徴のひとつとされ、酸化ストレスや炎症によって早まる可能性が指摘されています。

ポリフェノールは植物性の食品に広く含まれる成分群で、抗酸化作用や抗炎症作用を通じてテロメアの維持に関わる可能性が考えられてきました。しかし、日頃の食事から摂るポリフェノールとテロメアの長さとの関係を、時間を追って調べた研究はまだ限られています。そこで研究チームは、スペインの55歳以上の成人を対象に、ポリフェノールの摂取量と短いテロメアとの関連を調べました。この記事は論文の抄録に基づいて紹介します。

調べた方法

対象は、スペインのナバラ大学を拠点とする追跡調査「SUNプロジェクト」の参加者のうち、食事のデータとテロメアの長さの測定値がそろった1,665人です。研究開始時に、136項目の食品について食べる頻度と量を尋ねる質問票で食事内容を調べました。この質問票は妥当性が確認されたものです。そのうえで、食品中のポリフェノール量をまとめたデータベースを使い、ポリフェノール全体と種類別の摂取量を推定しました。摂取量は、食事全体のエネルギー量を考慮して調整しています。

テロメアの長さは唾液の試料から遺伝子を増幅して測る方法で求めました。結果は、テロメアの量と基準となる遺伝子の量の比で表しています。測定値が下位20%にあたる人を「テロメアが短い」と定義しました。試料を集めた時期ごとの測定のばらつきを避けるため、この基準は採取の時期ごとに分けて計算しています。解析では、社会的背景、生活習慣、食事、健康状態などの影響を統計的に調整したうえで、テロメアが短い状態になる見込みを比べました。

主な結果

論文によると、フラボノイド(ポリフェノールの一種)とポリフェノール全体の摂取量が多いほど、テロメアが短い状態になるリスクが低いという関連がみられました。すべての要因を調整したモデルでは、摂取量が最も多い10%の群を最も少ない10%の群と比べています。フラボノイドではリスクが約49%低く(オッズ比0.51、p値0.032)、ポリフェノール全体では約43%低い(オッズ比0.57、p値0.084)と報告されています。

探索的な分析として、年齢で分けた比較も行われました。64歳未満では、ポリフェノール全体の摂取量が標準偏差1つ分増えるごとに、テロメアが短いリスクが低いという関連がみられました(オッズ比0.78)。一方、64歳以上ではこの関連はみられませんでした(オッズ比1.01)。ただし、年齢によって関連の強さが変わるかどうかを調べた検定は、統計的に有意ではありませんでした。

ポリフェノールの主な供給源となる食品についても調べています。コーヒーを1日1杯まで飲む人は、飲まない人に比べてテロメアが短いリスクが低くなっていました(オッズ比0.70)。果物の摂取量が最も多い4分の1の群も、最も少ない群に比べてリスクが低いという関連がみられました(オッズ比0.65)。

この研究が示すこと

著者らは、フラボノイドやポリフェノール全体を多く摂ることが短いテロメアのリスクの低さと関連していたと結論づけています。そのうえで、ポリフェノールの多い食事パターンが、より健やかな細胞の老化と関係している可能性を示しています。

ただし、この研究で示されたのは関連であり、ポリフェノールがテロメアを守るという因果関係を確かめたものではありません。著者らも、テロメアの長さを繰り返し測ることや、ポリフェノールの摂取を客観的に測る指標を使うこと、介入研究を行うことによって、今回の結果を確認し、その仕組みを明らかにする必要があると述べています。

著者:Isabella Kury-Guzman(Department of Nutrition, Food Sciences and Physiology, Center for Nutrition Research, University of Navarra, Pamplona, Spain)、Amelia A. Martí del Moral(CIBEROBN-Physiopathology of Obesity and Nutrition, Institute of Health Carlos III, Madrid, Spain)、Zenaida Vázquez Ruiz(CIBEROBN-Physiopathology of Obesity and Nutrition, Institute of Health Carlos III, Madrid, Spain)、Miguel Ángel Martínez‐González(CIBEROBN-Physiopathology of Obesity and Nutrition, Institute of Health Carlos III, Madrid, Spain)、Maira Bes‐Rastrollo(CIBEROBN-Physiopathology of Obesity and Nutrition, Institute of Health Carlos III, Madrid, Spain)、Guillermo Zalba(Department of Biochemistry and Genetics, University of Navarra, Pamplona, Spain)、Cristina Razquín(CIBEROBN-Physiopathology of Obesity and Nutrition, Institute of Health Carlos III, Madrid, Spain)、Sonia García-Calzón(CIBEROBN-Physiopathology of Obesity and Nutrition, Institute of Health Carlos III, Madrid, Spain)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Isabella Kury-Guzman, Amelia A. Martí del Moral, Zenaida Vázquez Ruiz, et al. Dietary (poly)phenol intake and risk of short telomeres in older adults: A prospective analysis. Clinical Nutrition 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.clnu.2026.106814. 原著ライセンス:CC BY.