掲載誌:Asian Journal of Dairy and Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

砂糖を精製する過程では、結晶にならずに残る濃い褐色の液体「廃糖蜜(モラセス)」が副産物として生じます。研究チームは、この廃糖蜜を捨てずに食品として活用できないかという観点から、アイスクリームの白砂糖の一部を廃糖蜜で置き換える試みを行いました。

論文では、廃糖蜜がショ糖やブドウ糖などの糖類のほかに、ミネラル、ビタミン、フェノール性化合物といった成分を含むことが背景として説明されています。研究の狙いは、食品産業の副産物を有効活用しながら、広く食べられている食品の中で砂糖の使用量を減らし、機能性food(機能性をもつ食品)の開発につなげることだと述べられています。

何をどう調べたか

アルジェリアの製糖工場から得たサトウキビ廃糖蜜を用い、白砂糖の置換率を0%(対照)、15%、30%とした3種類のアイスクリームを試作しました。低温殺菌乳、卵黄、粉乳、ホイップクリームなどとともに混合し、80℃前後で15分間加熱殺菌したのち、アイスクリームメーカーで撹拌しながら空気を含ませ、冷凍庫で4時間固めています。

分析では、まず廃糖蜜と白砂糖の成分(水分、灰分、たんぱく質、脂質、繊維、総糖、総フェノール、フラボノイド、タンニンなど)を比較し、廃糖蜜のミネラル組成も測定しました。できあがったアイスクリームについては、成分組成に加えて、オーバーラン(凍結時にどれだけ空気を含んだかを示す指標)、粘度、耐溶解性(溶けにくさ)を測定。抗酸化能はDPPHという試薬のラジカルをどれだけ消去できるかで評価し、官能評価は30名の学生が9段階の嗜好尺度で外観、色、味、香り、甘さ、総合的な好ましさを採点しました。

報告された主な結果

廃糖蜜は白砂糖に比べてミネラルや生理活性成分に富み、その水準はおよそ3倍高かったと報告されています。ミネラルでは亜鉛が最も多く、次いで鉄、マグネシウムの順で、鉛とカドミウムは今回の分析条件では検出されませんでした。

アイスクリームの物性では、廃糖蜜の配合が増えるにつれてオーバーランと粘度が上がり、より軽く空気を含んだ食感になったと述べられています。一方で溶けにくさは低下しました。著者は、廃糖蜜に多いブドウ糖と果糖がショ糖より凍結点を下げやすく、凍らない水の割合が増えて構造が崩れやすくなるためと説明しており、特に30%置換で顕著だったとしています。

抗酸化活性は廃糖蜜の配合量が多いほど有意に高く、対照のほぼ2倍近くに達したと報告されました。官能評価では、15%置換が食感、外観、風味、味、総合的な好ましさで最も高い評価を得ました。30%置換は色が濃く、風味や香りが強く、酸味も強く感じられたため評価が下がり、著者は廃糖蜜に含まれるタンニンやフェノール化合物による苦味・渋みが関係している可能性を挙げています。なお、すべての試作品が試食者からおおむね好意的に受け入れられたとも記されています。

この研究が示すこと

著者は結論として、サトウキビ廃糖蜜の添加がアイスクリームにミネラルと生理活性成分をもたらし、栄養面と抗酸化の性質を高めたとまとめています。同時に、配合量が製品全体の品質を左右し、量が多すぎると溶けにくさや官能的な受容性といった一部の特性に不利に働くことも示されました。

今回の試作の中では15%置換が、物性と嗜好のバランスの点で最も良い総合評価となり、製糖業の副産物を活かしながら精製白砂糖を部分的に置き換える方法として有望だと論じられています。捨てられていた副産物が、そのままでは得られない成分を食品に持ち込みうる一方、加える量の設計そのものが品質を決める――この研究は、その両面を一つの身近な食品の中で具体的に示した報告といえます。

著者:Nabila Berrighi

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nabila Berrighi. Rheological Characteristics, Antioxidant Capacity and Organoleptic Attributes of Ice Cream Fortified with Sugarcane Molasses. Asian Journal of Dairy and Food Research 2026-09-12. DOI: 10.18805/ajdfr.drf-654. 原著ライセンス:CC BY.