著者の所属・活動拠点の国は、中国、アメリカです。

掲載誌:npj Science of Food

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

四つの病気による死亡の変化を調べる

研究チームは、飲酒に起因する死亡が世界各地でどう変化してきたか、新型コロナウイルスの流行期と重なる時期に傾向が変わったかを調べ、2050年までの見通しを示しました。

分析には、世界の疾病負担を推計する「GBD 2023」のデータを使いました。対象は1990~2023年の、アルコールに起因する肝がん、肝硬変、アルコール性心筋症、アルコール使用障害による死亡です。国や時期による年齢構成の違いをならした「年齢調整死亡率」を用い、長期的な変化に加えて、流行前の2016~2019年と流行開始後の2020~2023年を比較しました。

肝がんとほかの病気で異なる長期傾向

著者らによると、2023年に世界で起きた対象の四つの病気による死亡は、推計63万7780人でした。内訳は、肝硬変30万8829人、アルコール使用障害17万1585人、アルコール性心筋症6万2312人、肝がん9万5054人です。これは、この研究が対象とした四つの死因についての推計です。

1990~2023年の世界全体の年齢調整死亡率は、肝がんでは人口10万人当たり0.95人から1.03人へとわずかに上昇しました。一方、肝硬変、アルコール性心筋症、アルコール使用障害では低下しました。肝がんの動きには男女差があり、男性では上昇傾向、女性では低下傾向が報告されました。

国や地域による違いも大きく、肝がんの年齢調整死亡率は、高所得のアジア太平洋地域では低下した一方、ラテンアメリカ南部では上昇しました。世界平均だけでは、各地域の変化を十分に捉えられない結果です。

流行期と重なって変わった死亡率の動き

肝がんでは、流行前にみられた死亡率の低下傾向が、2020~2023年には上昇へ転じたと著者らは報告しています。年平均の推定変化率は、2016~2019年のマイナス0.74%から、2020~2023年のプラス1.73%になりました。肝硬変とアルコール性心筋症では、世界全体として死亡率の低下が続いたものの、低下のペースは鈍りました。

ただし、これは時期の重なりを示す結果です。研究には個人ごとの飲酒量や受診、治療の遅れなどのデータは含まれておらず、流行が死亡率の変化を直接引き起こしたと示すものではありません。また、肝がんと肝硬変の数値は、死亡統計などから飲酒に起因する分をモデルで推計したもので、個々の死亡について原因を直接確認した集計ではありません。

2050年の見通しが示すもの

年齢、時代、生まれた世代の影響を扱う統計モデルでは、アルコールに起因する肝がんの年齢調整死亡率は、男女とも2050年に向けて上昇すると予測されました。一方、ほかの三つの病気では、横ばいか緩やかな低下が見込まれました。著者らは、遠い将来ほど予測の不確実性が大きくなるため、これらを現在の傾向に基づくシナリオとして捉えるよう説明しています。

この研究が伝えるのは、飲酒に起因する死亡の動きは一様ではないということです。世界全体で低下している病気がある一方、肝がんは異なる経過を示しており、病気や地域を分けて状況を捉える重要性が示されました。

原著論文の著者・所属:Yuan-Yuan Li(Department of General Dentistry, Xiamen University Affiliated Chenggong Hospital, The 73rd Army Hospital of Chinese PLA, Xiamen, China; National Clinical Research Center for Oral Diseases, State Key Laboratory of Oral and Maxillofacial Reconstruction and Regeneration, School of Stomatology, The Fourth Military Medical University, Xi’an, China)、Yan Jin(National Clinical Research Center for Oral Diseases, State Key Laboratory of Oral and Maxillofacial Reconstruction and Regeneration, School of Stomatology, The Fourth Military Medical University, Xi’an, China)、Franklin R. Tay(Department of Endodontics, The Dental College of Georgia, Augusta University, Augusta, GA, USA)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yuan-Yuan Li, Yan Jin, Franklin R. Tay. Global and national trends in alcohol-attributable deaths from 1990 to 2023 and projections to 2050. npj Science of Food 2026-08-31. DOI: 10.1038/s41538-026-01067-0. 原著ライセンス:CC BY.