著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Environmental Research Letters
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
研究チームは、中国の都市で消費される海産物について、生産から加工、流通、消費に至るまでに、どれだけの温室効果ガスが排出されるかを明らかにしようとしました。海産物の生産と需要が拡大するなか、排出削減を考えるには、養殖や漁獲の段階だけでなく、その後の供給過程も含めて把握する必要があるとしています。
そこで、中国313都市を対象に、海産物の種類や都市間の供給経路、消費の地域差を組み合わせ、排出量とその内訳を推計しました。
何を、どのように調べたか
対象は海面養殖と海洋漁業に由来する海産物で、魚類、甲殻類、貝類、海藻類、その他の5分類を扱いました。2023年の生産・供給について、どの都市からどの都市へ海産物が供給され、その消費に伴ってどこで排出が生じるかを分析しました。
養殖の生産段階には、代表的な養殖場での現地調査や測定に基づくデータを使いました。漁業の生産段階の排出量には、文献を系統的に調べて集めたデータを用いました。さらに、都市間・産業間の取引関係を表す産業連関表を、統計や消費調査などで細分化し、加工、輸送、保管、小売、外食などに伴う排出を推計しました。生産段階の集計と重なる排出は、統合する前に除いています。
排出量は、異なる温室効果ガスの影響を二酸化炭素の量に換算した「CO₂換算」で示しました。輸入に伴う排出も全体として推計しましたが、データの制約から都市別には分けていません。
主な報告結果
研究チームは、313都市の海産物消費に伴う温室効果ガス排出量を、全工程の合計で1億8260万トンCO₂換算と報告しました。これは中国全体の温室効果ガス排出量の約1.5%、食料システムに伴う排出量の約8%に相当するとしています。
全体の55%は、生産現場の外にある供給過程からの排出でした。加工、保管、輸送など、収穫・水揚げ後の段階が半分以上を占めたことが、この研究の主要な結果です。
種類別では、貝類が総排出量の65.7%、魚類が25.1%を占めました。著者らは、貝類の寄与が大きい理由として、消費量の多さと、重量当たりの排出量が比較的高いことを挙げています。また、都市間にも差があり、海産物消費に伴う1人当たりの排出量は、一部の内陸都市ではほぼゼロだった一方、沿岸都市では約300キログラムCO₂換算に達しました。
この報告が示すこと
著者らは、海産物の排出削減を考える際には、養殖や漁獲だけでなく、加工、冷蔵・冷凍保管、輸送なども対象にする必要があると結論づけています。また、地域ごとの消費の特徴と生産の仕組みを併せて捉えることが重要だとしています。
ただし、今回の推計には、低温流通で使われるフッ素系ガスや、貝が殻を形成する際の炭素の出入りは含まれていません。都市間の供給経路の推計は、多くの内陸都市で検証が十分ではなく、沿岸都市に平均的な生産段階の排出係数を用いたため、養殖技術や管理方法の地域差を捉えきれていない可能性もあります。こうした範囲と制約のもとで、論文は、海産物の環境負荷を生産現場だけで判断しないことの重要性を示しています。
原著論文の著者・所属:Yuanchao Hu(Guangdong University of Technology)、Weiwei Lu(Qingdao University of Science and Technology)、Haoran Zhang(Wuhan University)、Huan Li(Wuhan University)、Ningyu Yan(Guangdong University of Technology)、Ting Jiang(Xiamen University)、Shaobin Li(Xiamen University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yuanchao Hu, Weiwei Lu, Haoran Zhang, et al. Post-harvest stages account for more than half of seafood carbon footprint. Environmental Research Letters 2026-11-04. DOI: 10.1088/1748-9326/aebda9. 原著ライセンス:CC BY.