この研究は、中国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
ホタテガイといえば、刺身や貝柱のバター焼きなど、少し特別な日に食べる高級食材というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。近年、所得の向上や生活水準の変化を背景に、こうした高級な水産物への需要が世界的に高まっているといいます。では、ホタテガイに含まれるタンパク質や脂質は、栄養の「質」という観点から見るとどのような特徴があるのでしょうか。今回紹介するのは、世界各地で報告されてきたホタテガイの栄養成分に関するデータを整理し、タンパク質と脂質の質を体系的に評価した総説(レビュー)論文です。フロンティアーズ・イン・ニュートリション誌に2026年07月に掲載予定の研究です。
何を調べた研究か
この研究では、世界各地・さまざまな種のホタテガイを対象に報告されてきた、一般成分(タンパク質や脂質などの基本組成)、アミノ酸の質、脂肪酸の質に関する既存のデータを収集し、世界規模で系統的に整理・評価することを目的としています。個々の研究がバラバラに存在していた情報を一つにまとめ、ホタテガイ全体としての栄養的な特徴を浮かび上がらせようとする試みです。
この研究でわかったこと
まず、ホタテガイのタンパク質や脂質の組成は、研究間で大きなばらつきが見られたと報告されています。種や産地によって数値に幅があるということです。そのうえで、全体としてホタテガイは質の高いタンパク質と脂質の供給源であり、特に脂肪酸の組成については際立って優れていることが示されたとされています。
アミノ酸に関しては、ホタテガイの中には人の体に必要な必須アミノ酸をすべて十分な量含むものもあると報告されています。一方で、多くのホタテガイにおいて「バリン」という必須アミノ酸が、相対的に最も不足しがちな成分(制限アミノ酸)として頻繁に挙げられることも明らかになったとされています。
脂肪酸の面では、ホタテガイにはn-3系の長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA、いわゆるEPAやDHAを含むグループ)が豊富に含まれる傾向が示されています。具体的には、EPAとDHAを合わせた量が全脂肪酸の20%を超えるものが多く、中には50%近くに達する例もあったと報告されています。また、脂質の質を示す指標であるn-3/n-6比やPUFA/SFA比についても、ホタテガイは推奨される値より総じて高い傾向にあったとされています。ただし、一部にはPUFA/SFA比が異例に低い報告例もあったとされ、すべてが一様というわけではないようです。
この研究を読むうえでの注意点
この論文は、既存の複数の研究データを集めて整理した総説であり、著者ら自身が新たに実験を行ってホタテガイを分析したものではありません。そのため、報告されている数値の幅の大きさが示すとおり、種や産地、季節などの違いによってホタテガイの栄養価は変動しうる点に注意が必要です。特定の一皿のホタテガイが必ずこの傾向に当てはまるとは限らず、あくまで世界各地の研究を横断的に見たときの傾向として理解するのが適切でしょう。また、これは一つのレビュー研究であり、栄養学的な結論が確定したわけではない点も留めておきたいところです。
まとめ
今回紹介した研究は、世界各地で報告されてきたホタテガイの栄養データを整理し、タンパク質と脂質の質を評価したレビューです。ホタテガイは質の高いタンパク質と脂質、とりわけ豊富なn-3系長鎖多価不飽和脂肪酸を持つ食材である一方、必須アミノ酸のバリンが相対的に不足しがちであるといった特徴が示されています。著者らは、こうした知見が消費者にとっての栄養情報となるだけでなく、今後のホタテガイの養殖や品種改良(選抜育種)プログラムを進めるうえでの指針にもなりうるとしています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):海産ホタテガイのタンパク質・脂質の質に関する包括的レビュー(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)
著者:Junlong Xu(College of Marine Science, Guangxi Key Laboratory of Marine Environment Disaster Processes and Ecological Protection Technology, Beibu Gulf Ocean Development Research Center, Pinglu Canal and Beibu Gulf Coastal Ecosystem Observation and Research Station of Guangxi, Beibu Gulf Marine Ecological Environment Field Observation and Research Station of Guangxi, Beibu Gulf University, Qinzhou, Guangxi, China)、Junlong Xu(Fangchenggang Vocational and Technical College, Fangchenggang, Guangxi, China)、Zhou Wu(College of Marine Science, Guangxi Key Laboratory of Marine Environment Disaster Processes and Ecological Protection Technology, Beibu Gulf Ocean Development Research Center, Pinglu Canal and Beibu Gulf Coastal Ecosystem Observation and Research Station of Guangxi, Beibu Gulf Marine Ecological Environment Field Observation and Research Station of Guangxi, Beibu Gulf University, Qinzhou, Guangxi, China)、Xin Li(College of Marine Science, Guangxi Key Laboratory of Marine Environment Disaster Processes and Ecological Protection Technology, Beibu Gulf Ocean Development Research Center, Pinglu Canal and Beibu Gulf Coastal Ecosystem Observation and Research Station of Guangxi, Beibu Gulf Marine Ecological Environment Field Observation and Research Station of Guangxi, Beibu Gulf University, Qinzhou, Guangxi, China)、Karsoon Tan(College of Marine Science, Guangxi Key Laboratory of Marine Environment Disaster Processes and Ecological Protection Technology, Beibu Gulf Ocean Development Research Center, Pinglu Canal and Beibu Gulf Coastal Ecosystem Observation and Research Station of Guangxi, Beibu Gulf Marine Ecological Environment Field Observation and Research Station of Guangxi, Beibu Gulf University, Qinzhou, Guangxi, China)