この研究は、スペイン、ギリシャの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

マンガン、コバルト、ニッケルは、食品にごく微量含まれる金属元素です。マンガンは多くの酵素の働きを助ける必須の微量元素で、コバルトはビタミンB12の構成要素として知られています。一方で、とり過ぎると健康への悪影響が指摘されています。ニッケルは一般に必須とはみなされておらず、アレルギー性の皮膚炎などとの関連が報告されています。

著者らによると、これらの元素が栄養面や毒性面でどう働くかは、食品中の総量よりも「バイオアクセシビリティ」に左右されます。これは、消化の過程で食品から溶け出し、腸で吸収されうる状態になった割合を指します。実際に体内へ吸収された量そのものではなく、吸収の候補になる量の目安です。

研究チームは、食品の種類、家庭での調理法、年齢(大人か子どもか)、子どもの健康状態が、この3元素のバイオアクセシビリティに影響するという仮説を立てました。あわせて、1食分あたりの摂取量を推定し、栄養や安全性の基準値と比べました。

何をどのように調べたか

対象は、日常的に食べられている植物性・動物性の食品55種類です。生のものに加え、ロースト、揚げ、トースト(パンのみ)、ゆで、グリルで調理したものを含め、合計159試料を分析しました。食品は、一般に食べられている形で調べています。

消化の再現には、口・胃・小腸での消化を試験管内で模擬する国際的な標準手順を用いました。さらに、小腸で溶け出さずに残った部分を人の便から採った腸内細菌と一緒に培養し、大腸での発酵も再現しました。便の提供者は、健康な大人、健康な子ども、グルテン関連疾患の子ども、肥満の子ども、牛乳たんぱく質のアレルギー・不耐症の子どもの5グループで、各10人です。

小腸段階で溶け出した分、大腸段階で溶け出した分、最後まで溶けずに残った分のそれぞれについて、高感度の質量分析装置で金属の量を測定しました。

主な結果

植物性食品は動物性食品より、マンガンとニッケルのバイオアクセシビリティが全体として高いと報告されています。マンガンは34.8%対19.8%、ニッケルは51.4%対42.3%でした。また、調理によって3元素のバイオアクセシビリティは概して高まりました。

植物性食品では、3元素とも大部分が小腸段階で溶け出しました。ただし、大腸での発酵段階の寄与も小さくありませんでした。動物性食品のマンガンでは、大腸段階の値が小腸段階をわずかに上回りました。著者らは、腸内細菌が作る短鎖脂肪酸などが金属と溶けやすい複合体を作る可能性を挙げ、腸内細菌叢の役割を指摘しています。食品群の中では、ナッツ類などで値が高く、全粒穀物では精製穀物より大腸段階のバイオアクセシビリティが高い結果でした。

便の提供者による違いもみられました。健康な子どもの腸内細菌を用いた場合は、大人の場合より大腸段階でのマンガンとコバルトの値が高くなりました。また、グルテン関連疾患や牛乳アレルギーなどの子どもでは、健康な子どもよりマンガンの値が高かったと報告されています。

1食分あたりの摂取量の評価では、マンガンとコバルトは毒性面で懸念される水準を下回っていました。一方、ニッケルはいくつかの食品で比較的多く摂取される結果となり、特に子どもで目立ちました。

研究が示すこと

この研究は、食品に含まれる微量金属がどれだけ吸収されうる状態になるかは、総量だけでは決まらないことを示しています。食品の成分、調理の仕方、さらに腸内細菌の働きによって変わり、それが食事からの摂取リスクの見積もりにも影響するというのが、著者らのまとめです。

著者:Miguel Navarro-Moreno(Department of Nutrition and Food Science, School of Pharmacy, University of Granada, 18071 Granada, Spain)、José Ángel Rufián‐Henares(Department of Nutrition and Food Science, School of Pharmacy, University of Granada, 18071 Granada, Spain)、Konstantinos Douros(Pediatric Allergy and Respiratory Unit, 3rd Department of Pediatrics, School of Medicine, “Attikon” University Hospital, National and Kapodistrian University of Athens, 11527 Athens, Greece)、Francisco Manuel Ocaña‐Peinado(Department of Statistics and Operations Research, School of Pharmacy, University of Granada, 18071 Granada, Spain)、Miguel Navarro‐Alarcón(Department of Nutrition and Food Science, School of Pharmacy, University of Granada, 18071 Granada, Spain)、Silvia Pastoriza(Department of Nutrition and Food Science, School of Pharmacy, University of Granada, 18071 Granada, Spain)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Miguel Navarro-Moreno, José Ángel Rufián‐Henares, Konstantinos Douros, et al. Bioaccessibility via In Vitro Digestion and Colonic Fermentation, Intake, and per Serving Risk Assessment of Mn, Co, and Ni in Cooked Food. Foods 2026-10-10. DOI: 10.3390/foods15203599. 原著ライセンス:CC BY.