この研究は、ウクライナの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Neonatology surgery and perinatal medicine

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

若年性特発性関節炎(JIA)は、16歳未満で発症し6週間以上続く関節の炎症をまとめた病気の総称で、子どもの慢性リウマチ性疾患のなかで最も多いものの一つです。著者らによれば、発症の仕組みには遺伝的な素因や環境要因、感染などのきっかけ、免疫の調節の乱れが関わると考えられていますが、原因は最終的には解明されていません。

論文では、ビタミンDが従来知られてきたカルシウム・リンの代謝や骨の形成を支える働きだけでなく、免疫の働きにも関わることが示されており、自己免疫疾患や炎症性疾患との関係が注目されていると述べられています。ただし、JIAの子どものビタミンDと病気の活動性との関係については、研究結果が一致していないことも指摘されています。

そこで研究チームは、JIAの子どもが食事からどれだけビタミンDを摂れているか、血液中のビタミンDの指標である25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の濃度はどうか、そしてそれらが病気の特徴や活動性と関係するのかを調べることを目的としました。

何を、どのように調べたか

著者らは前向きの対照つき研究として、5歳から17歳の子どもを対象にしました。JIAの患者57人を主要な群とし、健康診断を受けた同年齢の健康な子ども67人を対照群としています。JIAの診断は国際リウマチ学会連盟(ILAR)の分類基準に従って行われました。

全員に診察と聞き取り調査を行い、年齢・性別・居住地といった基本情報、身体活動の程度や画面を見る時間などの生活習慣、食事の内容、ビタミンD製剤の使用状況を集めています。JIAの患者についてはさらに、病気の期間、JIAの病型、活動性、関節以外の症状、ANAやHLA-B27といった免疫学的な指標、検査値、治療内容(メトトレキサート、ステロイド、生物学的製剤)も評価されました。

食事からのビタミンD摂取量は、乳製品、魚介類、卵、肉、穀類、野菜などビタミンDの供給源となる食品について、1週間の典型的な食事内容と量を本人または保護者が答える質問票で調べ、そこから1日あたりの平均摂取量を算出して年齢別の推奨量と比べています。血液中の25(OH)D濃度は酵素免疫測定法(ELISA)で測定し、日光による影響を小さくするため秋から冬にかけて実施されました。判定は20 ng/mL未満を欠乏、20〜30 ng/mLを不足、30〜50 ng/mLを適正としています。病気の活動性はJADAS-27という指標で評価されました。保護者全員から同意を得ており、ヘルシンキ宣言に沿って実施され、大学の生命倫理委員会の承認を受けています。

報告された主な結果

JIAの子どもの平均年齢は12.1±3.6歳、病気になってからの期間は平均3.7±2.9年でした。病型では少関節炎が最も多く47.4%を占め、活動期にあったのは49.1%でした。

食事からのビタミンD摂取量の中央値は1日144.6 IUで、健康な子どもの203.56 IUより低く、統計的に意味のある差でした(p=0.0162)。現在の推奨量である400〜600 IUと比べると、JIAの患者の96.4%が食事からの摂取が足りていませんでした。著者らは、一部の食品を日常的に食べていても、自然の食品だけではビタミンDを十分に摂ることは難しいと述べています。

血液中の25(OH)Dは、JIAの子ども53人と健康な子ども67人で測定されました。JIAの子どもでは欠乏が47.2%、不足が33.9%で、適正な濃度だったのは18.9%にとどまりました。つまり欠乏または不足が81.1%を占めていました。一方で平均値は22.88±9.75 ng/mLで、対照群の20.65±8.07 ng/mLと差はありませんでした(p=0.1607)。著者らはこの理由として、子ども全体でビタミンD不足が広く見られること、そしてJIAの患者ではビタミンD製剤を使う割合が高いこと(JIA群43.9%に対し対照群6.0%、p<0.001)を挙げています。

ビタミンDの状態は、性別、年齢、病気の期間、JIAの病型、ANAやHLA-B27の有無、ぶどう膜炎、病気の活動性、治療内容のいずれとも統計的な関連は認められませんでした(p>0.05)。ただし欠乏のある患者では、JADAS-27による活動性がやや高い傾向がありました(5.23±5.16対3.40±3.78、p=0.129)。これは統計的に意味のある差ではなく、あくまで傾向として報告されています。また、ビタミンD製剤を使っていた子どもは25(OH)Dが25.03±7.97 ng/mLで、使っていない子どもの20.50±7.16 ng/mLより高い値でした(p=0.0415)。それでも平均値は適正とされる範囲には届いていませんでした。

著者らは研究の限界として、対象者の数が比較的少なく、ビタミンDの状態で分けるとさらに少なくなること、25(OH)Dの測定が1回のみであること、多くの患者が基礎治療や生物学的製剤を受けていて活動性の評価に影響した可能性があることを挙げています。

この研究が示すこと

この研究は、JIAの子どもでは食事からのビタミンD摂取が推奨量に届かず、血液中の濃度も多くが適正に達していないことを示しました。同時に、その状態は健康な子どもと比べて特に悪いわけではなく、ビタミンDの不足は子ども全体に共通する課題である可能性を示しています。

病気の活動性との明確な結びつきは確認されませんでしたが、サプリメントを使っている子どもで血中濃度が高かったことから、著者らはJIAの子どもに対する包括的な医療の一環として、ビタミンDの充足状態を定期的に確認し、不足があれば適切に補うことに意義があると結論づけています。

著者:Oksana R. Boyarchuk(I. Horbachevsky Ternopil National Medical University, Ministry of Health of Ukraine)、Anastasiia Hrekh(I. Horbachevsky Ternopil National Medical University, Ministry of Health of Ukraine)、N.I. Kovalchuk(I. Horbachevsky Ternopil National Medical University, Ministry of Health of Ukraine)、Н. Ю. Щербатюк(I. Horbachevsky Ternopil National Medical University, Ministry of Health of Ukraine)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Oksana R. Boyarchuk, Anastasiia Hrekh, N.I. Kovalchuk, et al. VITAMIN STATUS D AND INTAKE IN CHILDREN WITH JUVENILE IDIOPATHIC ARTHRITIS. Neonatology surgery and perinatal medicine 2026-09-29. DOI: 10.24061/2413-4260.xvi.3.61.2026.6. 原著ライセンス:CC BY.