著者の所属・活動拠点の国は、イギリス、アイルランド、オランダです。

掲載誌:Food Quality and Preference

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

研究チームは、高齢者が一定の条件で用意したニンジンを食べる速さから、食感の異なる食品を食べる速さや、かんで飲み込むまでの行動を捉えられるか調べました。また、本人が感じている食べやすさと、実際の食べ方との関連も検討しました。背景には、高齢者の口の中での食べ物の処理能力を評価するための、食感に基づく標準的な試験食品が確立されていないという課題があります。

何を、どのように調べたか

対象は、英国の地域で暮らす70歳以上の50人で、平均年齢は77歳でした。自分で食事ができ、研究で提供する食品を食べられる人を募集し、BMIが25 kg/m²を超える人は対象から除きました。

参加者は、試験食品として生とゆでたニンジンを食べ、さらにマッシュポテトとローストポテト、牛ひき肉とローストビーフという、食感の異なる食品を食べました。ニンジンは大きさや重さ、調理条件をそろえ、生とゆでたものをそれぞれ2本ずつ、組み合わせの順序を無作為にして提供しました。

研究チームは食べる様子を動画で記録し、かむ回数、飲み込む回数、食べるのにかかった時間などを調べました。食べる速さは、1分間に食べた重量で表しました。また、質問票を用いて、食べ物を口の中で飲み込めるまとまりにする能力について本人の評価を測りました。ニンジンとほかの食品の食べる速さの関連は、年齢、性別、BMI、残っている天然の歯の本数を考慮して分析しました。

主な報告結果

研究チームによると、食べる負担が大きい食感では、対応する食べやすい食感に比べて、かむ回数や飲み込む回数が多く、食べる速さも有意に遅くなりました。平均の速さは、マッシュポテトが毎分51.7 g、ローストポテトが21.1 g、牛ひき肉が29.4 g、ローストビーフが15.3 gでした。生ニンジンは毎分8.2 gで、ゆでたニンジンの25.0 gより遅くなりました。

一方、食品が変わっても、速く食べる人は比較的速く、遅く食べる人は比較的遅いという傾向がありました。年齢などを考慮した分析では、生ニンジンを速く食べる人ほど、マッシュポテト、ローストポテト、牛ひき肉も速く食べ、ローストポテトとローストビーフをまとめた食べにくい食品群の平均速度も速いという関連がありました。ゆでたニンジンでは、関連が認められる食品はより限られていました。

質問票で自分の食べる能力を高く評価した人ほど、食べにくい食品を食べる速さが速く、口の健康状態の自己評価も良く、心身の衰えを示すフレイルの自己申告によるリスクが低いという関連が報告されました。ただし、この質問票の得点と、ニンジンを食べる速さの間には有意な関連はありませんでした。

この報告が示すこと

著者らは、試験食品で食べ方の個人差を捉えるには、ある程度かみ応えのある食感が重要だと考えています。ただし、生ニンジンは一部の参加者、特に歯の状態が悪い人や義歯を使う人には硬すぎました。評価に使う食品には、違いを捉えやすいことだけでなく、対象者が無理なく食べられることとの釣り合いが必要だという意味があります。

今回の結果は、BMIが25 kg/m²以下で地域に暮らす高齢者を対象としたもので、よりBMIの高い人への一般化には制約があります。また、ニンジンの準備条件はそろえたものの、硬さなどを機器で測定しておらず、試料間の自然な食感の違いは排除できません。著者らは、こうした評価を異なる場面で使えるものとするには、標準化と再現性の確認が必要だとしています。

原著論文の著者・所属:D. Zannidi(Department of Food and Nutritional Sciences, University of Reading, Whiteknights, Reading RG6 6DZ, UK)、M.E. Clegg(School of Food and Nutritional Sciences, University College Cork, Cork, Ireland)、J.V. Woodside(Centre for Public Health, School of Medicine, Dentistry and Biomedical Sciences, Queens University Belfast, Belfast, UK)、G. McKenna(Centre for Public Health, School of Medicine, Dentistry and Biomedical Sciences, Queens University Belfast, Belfast, UK)、C.G. Forde(Sensory Science and Eating Behaviour, Division of Human Nutrition and Health, Wageningen University and Research, Wageningen, the Netherlands)、L. Methven(Department of Food and Nutritional Sciences, University of Reading, Whiteknights, Reading RG6 6DZ, UK)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):D. Zannidi, M.E. Clegg, J.V. Woodside, et al. The “Carrot Test” adapted for older adults: Associations of eating rate of a standardised food and self-reported oral processing abilities with eating rate of different food textures. Food Quality and Preference(出版社:Elsevier BV) 2026-11-01. DOI: 10.1016/j.foodqual.2026.106165. 原著ライセンス:CC BY.