日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Environmental Research Food Systems

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

安定した作物生産は世界の食料安全保障の基盤です。研究チームによれば、気候変動は極端な気象現象を増やし、しばしば収量の低い年、すなわち「凶作」を招いてきました。一方で、場所や季節によっては、好ましい気候条件や大気中の二酸化炭素濃度の上昇が、収量の高い年、すなわち「豊作」の収量をさらに押し上げる可能性もあります。

そこで著者らは、人間活動による気候変動が、これまでの豊作年と凶作年の双方にどのような影響を与えてきたのかを明らかにしようとしました。対象としたのはトウモロコシを生産する63か国と、コムギを生産する53か国です。

何をどう調べたか

論文では、2000年から2019年までの期間について、収量が最も高かった3年を「豊作」、最も低かった3年を「凶作」と定義しました。分析には、ランダムフォレストという機械学習の手法を用いて作成された収量偏差(平年からのずれ)のデータセットが使われています。

著者らは、実際に起きた気候条件のもとでの収量偏差と、人為的な気候変動がなかったと仮定した「非温暖化」条件のもとでの収量偏差をそれぞれ求め、その差を人間活動による気候変動の影響として数値化しました。

報告された主な結果

論文の報告によると、収量への負の影響は正の影響よりも広い範囲に及んでいました。気候変動によって凶作がさらに悪化したのは、トウモロコシ生産国の76%、コムギ生産国の55%で、いずれも主に中緯度地域に位置する国々でした。これに対して豊作が押し上げられたのは、トウモロコシで32%、コムギで21%の国々にとどまり、こちらは主に高緯度地域に分布していました。

その結果、豊作の増大と凶作の悪化の両方が重なることで、年ごとの収量の振れ幅が大きくなった国が、トウモロコシで13%、コムギで6%あったと報告されています。

著者らは、その背景についても説明しています。研究期間中、ほとんどの生産国では生育期間の平均気温が作物ごとの最適水準を下回っていたため、温暖化はむしろ作物の生育にとっての温度条件を改善する方向に働きました。一方、凶作については気温よりも人為的な降水量の変化のほうが重要な役割を果たしていたとされ、これは生育期間の降水量が作物に必要な水量を下回ることが多いためだと述べられています。

この研究が示すこと

この研究は、気候変動がすべての年に一様な影響を与えるのではなく、豊作年には追い風となり凶作年には向かい風となるという、非対称な形で作用してきたことを示しています。

著者らは、トウモロコシとコムギの生産に対する気候変動の不利な影響が有利な影響を上回っていると結論づけ、世界の食料安全保障を維持するうえで気候変動の緩和が必要であることを指摘しています。

著者:R. Yoshida(Fukushima University)、Toshichika Iizumi(National Agriculture and Food Research Organization)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):R. Yoshida, Toshichika Iizumi. Detecting climate change impacts on historical good and bad harvests in global maize and wheat production. Environmental Research Food Systems 2026-09-01. DOI: 10.1088/2976-601x/aea0d6. 原著ライセンス:CC BY.