この研究は、アメリカ、ハンガリー、スペイン、イタリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:International Journal of Mental Health and Addiction
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:甘いものに絞った短い質問票をつくる
砂糖や甘味を加えた加工食品の摂り過ぎは、肥満や2型糖尿病、心血管疾患などとの関連が指摘されてきた公衆衛生上の課題です。甘いものをやめられない、強く欲しくなるといった、依存に似た食べ方を訴える人も少なくありません。著者らは、体重管理や栄養指導、糖尿病、摂食障害の診療の場で、患者が「食べ物全般」ではなく「甘いもの」を自分で調整できないと訴えることが多いのに、その訴えを手短に記録する道具がないと指摘しています。
依存的な食べ方を測る代表的な質問票に、イェール食物依存尺度(YFAS 2.0)があります。物質使用障害の診断基準を食行動に当てはめたもので、多くの言語で性質が確かめられています。ただし35項目と長く、食べ物全体を対象としていて、特定の食品を区別しません。
そこで研究チームは、甘いものに対象を絞った6項目の「簡易甘味依存尺度(BSAS)」を開発し、英語・スペイン語・ハンガリー語の3言語で同時に検証しました。なお、砂糖が薬理学的な意味で依存性をもつかどうかは研究者の間で見解が分かれています。著者らは、BSASが行動のパターンを記述する枠組みに基づいているため、この論争の決着とは関係なく使えると説明しています。また今回の評価は、集団の傾向を調べる研究用の尺度としてのものであり、臨床でのスクリーニングなどに使うにはさらに証拠が必要だとしています。
どのように調べたか
BSASの土台は、心理学者グリフィスが提唱した行動依存の「構成要素モデル」です。このモデルでは、どんな依存にも共通する6つの要素があるとされます。頭がそのことでいっぱいになる(顕著性)、気分を変えるために使う(気分変容)、同じ効果を得るのにより多く必要になる(耐性)、手に入らないと不快になる(離脱)、健康や体重、自尊心などをめぐって内面に葛藤が生じる(葛藤)、控えてもまた元に戻る(再発)の6つです。研究チームは、これらを甘いものに当てはめて1要素につき1問ずつ作りました。各問を6段階で答え、合計点は6〜36点になります。点が高いほど、問題のある甘いものの食べ方が強いことを示します。
英語版をもとに、二言語話者が別々に翻訳する手順と、訳文を元の言語に戻して確認する手順を組み合わせ、スペイン語版とハンガリー語版を作成しました。調査は2025年8月から11月にかけてオンラインで行われました。SNSなどで呼びかけ、18歳以上の成人1,130人(英語437人、スペイン語300人、ハンガリー語393人)の回答を分析しています。参加者はBSASとYFAS 2.0の両方に回答し、身長・体重・体重の履歴や、摂食障害の経験についても答えました。
分析では主に次の4点を確かめました。6問が一つのまとまった性質を測っているか、回答が安定して一貫しているか(信頼性)、3つの言語版で同じものを同じように測れているか(測定の等価性)、そしてYFAS 2.0や体重などの変数とどう関連するかです。
主な結果
6問が一つのまとまりとして働くという構造は、全体でも各言語でもおおむね支持されました。一貫性の指標であるクロンバックのαは、全体と英語版で0.92、スペイン語版とハンガリー語版で0.87でした。わずか6問で、35問のYFAS 2.0に匹敵する水準です。ただし、ハンガリー語版では当てはまりの良さを示す指標の一つ(RMSEA)が基準を満たしていませんでした。著者らはこの点を、別の構造を示す証拠ではなく研究の限界として扱っています。
3つの言語版のあいだでは、最も厳しい段階まで測定の等価性が確認されました。翻訳の違いによって得点の比較がゆがむ可能性は低いということです。ただし著者らは、参加者が自ら応募した集団で、年齢や性別、BMIの構成も言語グループごとに大きく違うため、得点の差を国や言語集団の違いとして読むべきではないと注意しています。
BSASとYFAS 2.0の得点は強く相関しました(相関係数0.61)。この関連は3言語それぞれで見られ、年齢・性別・BMIを考慮しても保たれました。一方で、両者が別のものを測っているかを調べる分析では、区別できることを示す初期的な証拠が得られました。ただし、計算上の制約から言語別の結果には慎重な解釈が必要とされています。
ほかの変数との関係では、摂食障害の経験との相関がYFAS 2.0(0.52)よりBSAS(0.37)で数値上小さくなりました。BMIとの相関(0.35)や、生涯で最も重かったときの体重との相関は、両尺度でほぼ同程度でした。著者らは、これらの相関の差を統計的に比べてはいないこと、また横断調査であるためBMIとの関連は因果関係や時間的な前後関係を示すものではないことを明記しています。
この研究が示すこと
著者らは今回の結果を、BSASが甘いものへの依存に似た食べ方を、信頼性をもって、3言語で同等に測れる尺度であることへの初期的な支持だと位置づけています。短いため長い質問票を使いにくい場面でも取り入れやすく、言語間の比較にも使える可能性があります。一方で、臨床での有用性を確かめたものではありません。また、甘いものに特化したことで既存の尺度にない情報が得られるかどうかも、まだ確かめられていないと論文は述べています。
著者:Nicole M. Avena(Department of Neuroscience, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York City, NY, USA)、Réka Erika Kovács(Department of Psychology and Health Management, Faculty of Health and Sport Sciences, Széchenyi István University, Győr, Hungary)、Ricardo de la Vega(Departamento de Educación Física, Deporte y Motricidad Humana, Universidad Autónoma de Madrid, Madrid, Spain)、Paolo Soraci(Department of Economic, Psychological, Communication, Education and Sport Sciences, Nicolò Cusano University, 00166, Rome, Italy)、Angéla Somogyi(Department of Psychology and Health Management, Faculty of Health and Sport Sciences, Széchenyi István University, Győr, Hungary)、Attila Szabó(Department of Psychology and Health Management, Faculty of Health and Sport Sciences, Széchenyi István University, Győr, Hungary)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nicole M. Avena, Réka Erika Kovács, Ricardo de la Vega, et al. Development and Psychometric Validation of a Brief Sweet Addiction Scale (BSAS) in English, Spanish, and Hungarian. International Journal of Mental Health and Addiction 2026-10-01. DOI: 10.1007/s11469-026-01731-2. 原著ライセンス:CC BY.