この研究は、ポーランドの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食品の「栄養強化」とは、ビタミンやミネラルなどの栄養素を食品に加えることです。法律で義務づけられる強化もあり、甲状腺腫を防ぐためのヨウ素添加塩がその例です。一方、メーカーが製品の栄養価や商品としての魅力を高めるために自主的に栄養素を加えることもあり、これを「任意強化」と呼びます。ビタミン入りの朝食用シリアルや、カルシウムとビタミンDを加えたヨーグルトなどがこれに当たります。

著者らは、任意強化食品が微量栄養素の摂取を増やしうる一方で、製品によっては脂肪、糖、塩分、エネルギーも多く含みうると指摘しています。さらに、手軽に入手できることで、健康的な食品を選ぶ意欲が下がる可能性にも触れています。若い成人は食習慣を形づくっている最中で、ソーシャルメディアを通じた食品業界の広告の対象にもなりやすい層ですが、この年代での任意強化食品の利用については研究が不足していました。

そこで研究チームは、大学生が任意強化食品を意識して食事に取り入れているかどうかに、どのような社会的・生活習慣上の要因が関係しているかを調べました。あわせて、食事の質が高い人ほど任意強化食品を利用しやすいのかも検討しました。

調べた方法

調査は2017年から2022年にかけて、ポーランドのワルシャワにある公立大学の18〜35歳の学生を対象に行われ、2123人が主な分析の対象となりました。ある一時点の状況を調べる横断研究のため、要因の間に関連があるかは分かりますが、どちらが原因かは示せません。

参加者は、健康と生活習慣に関する質問票に回答しました。質問票には任意強化食品の定義と例が示され、ふだんの食事にこうした食品が含まれるかを「はい」「いいえ」「分からない」から選びます。「はい」と答えた人を、任意強化食品を意識して利用している人としました。また、平日4日と週末1日の計5日間、食べたものと飲んだものをすべて記録してもらいました。

食事の質は「DASHスコア」で評価しました。DASHは高血圧の予防を目的とした食事法で、野菜、果物、豆類・種実・ナッツ類、全粒穀物、低脂肪乳製品を多くとり、ナトリウム、赤肉・加工肉、甘い飲料を控える食べ方です。この研究では、各食品群の摂取量を男女別に5段階に分けて点数化し、0〜32点で評価しました。年齢、性別、体格指数(BMI)、栄養知識の自己評価、食事の見直し、サプリメントの利用などの要因をまとめて解析し、それぞれの要因が利用の「オッズ」(利用する人としない人の比)とどう関連するかを推定しました。

主な結果

任意強化食品を意識して食事に取り入れていると答えた学生は44.3%でした。22.3%は、自分が利用しているかどうか分からない、または確信がないと答えました。分からないと答えた人のうち36.9%は、食事記録に任意強化食品が含まれていました。著者らはこの結果から、利用しているという自覚と実際の摂取との間にずれがある可能性を示しています。

利用には複数の要因が関連していました。年齢が1歳上がるごとに利用のオッズは6%低くなりました。男性の利用のオッズは女性の0.63倍で、BMIが低体重の範囲にある学生は標準範囲の学生に比べて0.63倍でした。一方、栄養知識を高いと自己評価した学生は低いと評価した学生の1.70倍、サプリメントを使う学生は使わない学生の1.62倍でした。健康のために特定の食品を減らしつつ別の食品を取り入れるといった食事の見直しをしている学生では、利用のオッズが2.09倍でした。

ただし、関連の現れ方は集団によって異なりました。栄養知識の高さと利用との関連は男性ではみられましたが、女性ではみられませんでした。年齢が上がるほど利用が少なくなる関連も、サプリメントを使わない学生に限ってみられました。

利用者が挙げた理由で最も多かったのは「健康によい影響がある」(71.8%)で、「食事から不足する栄養素を補える」(29.7%)が続きました。情報源はテレビ・ラジオ・ウェブサイトが46.0%、食品表示が25.4%でした。利用しない理由で最も多かったのは「きちんと食べていて必要ない」(48.0%)でした。食事記録からは51種類の任意強化食品が見つかり、記録上の利用者の間ではシリアルなどの穀類製品とジュース・飲料が多く食べられていました。

食事の質との関係では、DASHスコアと任意強化食品の利用との間に統計的に意味のある関連はみられませんでした。個別の食品群をみると、野菜の摂取が1日50g多いごとに利用のオッズが4%低くなりました。また、全粒穀物を最も多くとる層では利用のオッズが高い傾向がみられました。

研究が示すこと

この研究は、大学生の4割余りが任意強化食品を意識して取り入れていることを示しました。さらに、その利用が性別、年齢、栄養知識の自己評価、サプリメントの利用、食事への取り組み方といった要因と結びついており、関連の現れ方が男女やサプリメント利用の有無で異なることも示しています。

一方で、任意強化食品の利用と全体的な食事の質との結びつきは確認されませんでした。著者らは、利用と食事の質の関係を明らかにするにはさらなる検討が必要だとしています。

著者:Ewa Sicińska(Department of Human Nutrition, Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences (WULS-SGGW), Nowoursynowska 166, 02-787 Warsaw, Poland)、Dawid Madej(Department of Human Nutrition, Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences (WULS-SGGW), Nowoursynowska 166, 02-787 Warsaw, Poland)、Maria Karolina Szmidt(Department of Human Nutrition, Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences (WULS-SGGW), Nowoursynowska 166, 02-787 Warsaw, Poland)、Justyna Czerniak(Department of Human Nutrition, Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences (WULS-SGGW), Nowoursynowska 166, 02-787 Warsaw, Poland)、Joanna Kałuża(Department of Human Nutrition, Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences (WULS-SGGW), Nowoursynowska 166, 02-787 Warsaw, Poland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ewa Sicińska, Dawid Madej, Maria Karolina Szmidt, et al. Intentional Use of Voluntarily Fortified Foods in Relation to Socio-Demographic and Lifestyle Factors, Including Adherence to a DASH-Style Diet, Among University Students. Nutrients 2026-09-26. DOI: 10.3390/nu18193188. 原著ライセンス:CC BY.