著者の所属・活動拠点の国は、ガーナです。

掲載誌:Journal of African Sustainable Development

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

学校で生徒に食事を売る食品販売者は、学校の食を支える重要な存在です。一方で、調理や保存、提供の過程で衛生が守られないと、食品の汚染や食中毒につながるおそれがあります。研究チームは、安全な食品の扱いには知識だけでなく、日々の一貫した衛生行動と、水・衛生設備・衛生習慣の環境(WASH:水、衛生設備、衛生習慣を表す英語の頭文字)が欠かせないという立場から、この研究に取り組みました。

著者らによると、ガーナでは食品販売者の衛生に関する研究が積み重ねられてきましたが、その多くは路上の販売者や基礎教育段階の学校給食、別の地域の教育機関を対象としていました。ボノ州の公立高校で働く販売者について、本人の申告と実際の行動、さらに設備の状況を同じ場でまとめて調べた例は限られていたといいます。そこで研究チームは、販売者が「知っている」「している」と答えた内容が、実際に観察される行動と一致しているのかを確かめ、安全な取り扱いを助けたり妨げたりしうる環境条件を明らかにしようとしました。

何をどのように調べたか

調査はガーナ・ボノ州の公立高校1校で、2025年8月に行われました。校内で営業していた食品販売者17人全員が質問票に回答しました。回答者は全員女性で、年齢は21歳未満から51歳以上まで幅広く分布していました。

質問票では、衛生行動(材料の期限の確認、器具や作業面の清掃、生の食材と加熱済み食品の分離など)、食品安全の知識、水やせっけん、手洗い場、ごみ処理設備といった環境条件について、それぞれの文にどの程度同意するかを5段階で尋ねました。著者らは、知識の項目は客観的な試験ではなく、本人が「知っている」と思うかどうかを尋ねたものであり、「自己申告の知識」として扱うと説明しています。

あわせて、17人のうち観察期間に在席していた16人について、通常の営業中の様子を目立たない形で4回ずつ観察しました。エプロンの着用、髪の覆い、提供中のせっけんによる手洗い、食品に覆いをしているか、適切な食器洗浄(洗い・すすぎ・消毒)を行っているかを、チェックリストで記録しています。質問票と観察は別々に集計し、そのうえで全体の傾向を突き合わせました。

主な結果

質問票では、多くの販売者が好ましい衛生行動を申告しました。材料の期限を確認していると答えた人は88.2%、使用前に器具や作業面を清掃していると答えた人は82.4%、標準的な衛生手順を常に守っていると答えた人は76.5%でした。一方、生の食材と加熱済み食品を厳密に分けているという回答は58.8%にとどまりました。

自己申告の知識では、有害な細菌を殺すのに十分な加熱が必要だと知っているという回答が88.2%、食品の傷みを見分けられるという回答が82.4%と高い一方、乳製品の適切な保存温度を知っているという回答は47.1%、よくある食中毒の原因菌を知っているという回答は41.2%でした。原因菌の項目は、「知らない」側の回答が「知っている」側を上回った唯一の項目でした。

環境面では大きな不足が報告されました。販売場所で水が常に使えると答えたのは29.4%、せっけんや手指消毒剤が常にあると答えたのは35.3%、専用の手洗い場があると答えたのは11.8%、ごみ処理設備が十分で使いやすいと答えたのは5.9%でした。

観察では、食品に覆いをしている割合が81%、エプロン着用が72%と比較的高かった一方、提供中のせっけんによる手洗いは観察機会の11%、適切な食器洗浄は31%にとどまりました。著者らは、目に見える保護的な行動に比べ、汚染防止により直接かかわる行動の実施が大きく下回っていたと報告しています。

この研究が示すこと

研究チームは、販売者が自己申告では比較的良好な知識や衛生行動を示しながら、手洗いや食器の洗浄といった重要な行動は実際にはあまり見られなかったことから、「知識と実践の間の差」があると結論づけています。ただし、質問票と観察は同じ項目を測ったものではないため、個々の項目を直接比べたものではなく、全体の傾向として示された差だと著者らは説明しています。

また、この差は水やせっけん、手洗い場といった基本的な設備が不足する環境の中で生じていました。著者らは、食品の安全を販売者の知識や申告だけで捉えるのではなく、行動を可能にする環境や体制にも目を向ける必要があると述べ、販売者への的を絞った教育、安定した水・衛生設備、定期的な確認、学校側の継続的な支援を組み合わせた取り組みが求められるとしています。

原著論文の著者・所属:ROSEMOND AFRIYIE NYARKOH(University of Skills Training and Entrepreneurial Development (USTED), Kumasi, Ghana)、GILBERT OWIAH SAMPSON(University of Skills Training and Entrepreneurial Development (USTED), Kumasi, Ghana)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):ROSEMOND AFRIYIE NYARKOH, GILBERT OWIAH SAMPSON. FOOD VENDOR HYGIENE KNOWLEDGE AND OBSERVED FOOD-SAFETY PRACTICES IN A GHANAIAN SENIOR HIGH SCHOOL. Journal of African Sustainable Development 2026-10-13. DOI: 10.70382/bejasd.v13i2.067. 原著ライセンス:CC BY.