この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
オレンジ色の果肉を持つバナナを粉末にする
インドネシア・マルク地方には、房が上向きに実り、果肉が鮮やかなオレンジ色をした固有のバナナ「トンカランギット」(学名 Musa troglodytarum)があります。先行研究では、この果肉はビタミンAのもとになるβ-カロテンを多く含むと報告されており、研究チームは、日持ちする粉末に加工できれば、あまり活用されていないこの品種の付加価値を高められると考えました。
熟したバナナのピューレは粘り気が強く、乾燥させにくい素材です。そこで著者らが注目したのが「フォームマット乾燥」です。ピューレに泡立ちを助ける材料を加えてメレンゲのように泡立て、薄く広げて温風で乾かす方法で、表面積が広がるため比較的低い温度でも水分が抜けやすいとされています。泡立てを助ける材料には、牛乳由来のホエイ(乳清)たんぱく質を濃縮した「ホエイプロテイン濃縮物(WPC)」がよく使われます。
著者らによると、トンカランギットバナナにこの乾燥法を用いた報告はこれまでありませんでした。本研究では、WPCの添加量を変えると泡や粉末の性質がどう変わるかを調べ、品質のよい粉末を作るのに適した添加量を探りました。
WPCの量を4段階に変えて比較
研究チームは、収穫から10日たって果肉の色が一定の段階に達したバナナを皮ごと短時間焼き、氷水で冷やしてから皮をむき、ふるいでこしてピューレにしました。このピューレを同量の水で薄め、糖質素材のマルトデキストリンを5%加えたうえで、WPCを2.5%、5.0%、7.5%、10.0%の4通りで混ぜて泡立てました。
泡は厚さ3〜4ミリほどに広げ、食品乾燥機で60℃、6時間乾燥させた後、粉砕してふるいにかけました。泡については、体積あたりの重さ(泡の密度)と、泡立てによって体積がどれだけ増えたか(泡の膨張率)を測定しました。粉末については、一定の体積に詰めたときの重さを示す「かさ密度」、粉末が水をどれだけ抱え込めるかを示す「保水力」、明るさや赤み・黄みを数値で表す色、そして走査型電子顕微鏡(SEM)で拡大した粒子の表面や集まり方を調べました。
泡立ちは5%で頭打ち、保水力は5%で最も高い
WPCを2.5%から5.0%に増やすと泡立ちは大きく改善し、泡の膨張率は260%から611%に上がり、泡の密度は1ミリリットルあたり0.440グラムから0.203グラムに下がりました。一方、7.5%や10.0%に増やしても、泡の性質に統計的に意味のある変化は見られませんでした。著者らは、5%程度で泡の表面を覆うのに十分なたんぱく質が行き渡るためだと考察しています。
粉末のかさ密度はWPCを増やすほど高くなり、2.5%では1ミリリットルあたり0.523グラム、10.0%では0.635グラムでした。保水力は5.0%で最も高い約131%となり(2.5%の約122%とは有意差なし)、7.5%では約108%、10.0%では約87%と大きく下がりました。色は、WPCを増やすほど明るくなる一方、赤みと黄みは弱くなりました。
顕微鏡で観察すると、WPCが少ない粉末は表面がざらざらして多孔質で、粒子どうしがすき間の多いゆるい塊をつくっていました。これに対しWPCが多い粉末は、粒子の表面がなめらかでたんぱく質に覆われ、粒子どうしがつながって、すき間が少なくなっていました。著者らは、この構造の違いが、WPCを増やしたときのかさ密度の上昇と保水力の低下を説明すると述べています。
多ければよいわけではないという結果
この研究から見えてくるのは、泡立ちを助けるWPCは多く加えるほどよいわけではないという点です。泡立ちの改善は5%でほぼ頭打ちになり、それ以上加えると粒子が詰まった構造になって、粉末が水を抱え込む力はかえって弱まりました。研究チームは、泡立ちやすさ、水との親和性、粉末の構造のバランスが最もよいのはWPC5%だと結論づけています。
なお著者らは、水に戻るまでの速さ、保存中の色素の残り方、風味などの評価はまだ行っておらず、今後の検討課題として挙げています。今回の成果は、オレンジ色の果肉を持つこの地域固有のバナナを粉末に加工する際の、配合の目安を示したものといえます。
著者:Helen C D Tuhumury(Agricultural Product Technology Department , Faculty of Agriculture , University of Pattimura , Jl. Ir. M. Putuhena , Poka Ambon 97233 , Indonesia)、S.J. Nendissa、G.C. Siahaya(Agricultural Product Technology Department , Faculty of Agriculture , University of Pattimura , Jl. Ir. M. Putuhena , Poka Ambon 97233 , Indonesia)、V.Y. Ginting、B.V. Erubun
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Helen C D Tuhumury, S.J. Nendissa, G.C. Siahaya, et al. Physical and microstructural properties of foam-mat–dried tongka langit (Musa troglodytarum) banana powder with whey protein concentrate. Food Research 2026-10-09. DOI: 10.26656/fr.2017.10(5).285. 原著ライセンス:CC BY.