この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:International Journal of Applied Science and Sustainable Development.
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
むし歯は学齢期の子どもに多い口の健康問題で、食事や睡眠、授業中の集中、人と話すときの自信にまで影響しうると論文は述べています。むし歯には多くの要因が関わりますが、生活の中で変えられる要因の一つが、むし歯の原因になりやすい飲食物をどれくらい頻繁にとるかという食習慣です。こうした飲食物は「う蝕原性(うしょくげんせい)食品」と呼ばれ、砂糖など口の中の細菌が分解して酸をつくりやすい糖質を多く含み、歯に長く付着しやすいものを指します。
インドネシアでは子どものむし歯が依然として多く、バリ島の都市部デンパサールでも課題として残っています。ただ、デンパサールのパンジェル地区の小学生を対象に、こうした食習慣とむし歯との関連を統計的に調べた研究は限られていました。そこで研究チームは、同地区の公立小学校SDN 3 Panjerの児童を対象に、う蝕原性の食習慣とむし歯の程度との関連を分析しました。
どのように調べたか
調査は2024年6月4日に行われ、無作為に選ばれた5年生50人が参加しました。ある一時点で食習慣と歯の状態を同時に調べる「横断研究」と呼ばれる方法です。参加は任意で、保護者から書面による同意を得たうえで実施されました。
食習慣は、一定期間にどの食品をどれくらいの頻度で食べたかを尋ねる「半定量食物摂取頻度調査票」で調べました。対象には、あめ、チョコレート、ビスケット、ケーキや甘いパン、甘いスナック、砂糖入り飲料など、子どもが日常的に口にするむし歯になりやすい飲食物が含まれます。量よりも食べる頻度に重点を置いたのは、飲食物がむし歯を引き起こす力は成分だけでなく、口にする回数にも左右されるためです。
歯の状態は、歯科の診察によって永久歯のむし歯経験を数える「DMF-T指数」で評価しました。これは、むし歯になっている歯、むし歯が原因で失われた歯、治療で詰め物をした歯の数を合計したもので、これまでに経験したむし歯の累積を表します。食習慣を「悪い」「中程度」「良い」の3段階、むし歯の程度を「非常に低い」「低い」「中程度」の3段階に分け、両者の関連を統計的に検定しました。
主な結果
研究チームは、う蝕原性の食習慣とむし歯の程度との間に統計的に有意な関連があったと報告しています。
食習慣が「悪い」と分類された24人では、むし歯の程度が「非常に低い」児童は37.5%にとどまり、「低い」が33.3%、「中程度」が29.2%でした。これに対し、食習慣が「良い」児童の多くはむし歯の程度が「非常に低い」に分類され(論文本文では84.6%)、「中程度」は7.7%でした。食習慣が「中程度」の児童では76.9%が「非常に低い」に入り、両者の中間的な傾向を示しました。全体として、食習慣が好ましくない児童ほどむし歯の程度が高い傾向があり、健康的な食習慣の児童は、むし歯がごく少ない区分に入ることが多かったとしています。
一方で著者らは、むし歯は食習慣だけで決まるものではないと強調しています。良い食習慣でも中程度のむし歯があった児童がいたり、食習慣が悪くてもむし歯が非常に少ない児童が複数いたりしました。歯垢のたまり具合、歯みがき、フッ素の利用、唾液の性質、歯科サービスへのアクセス、社会経済的な状況なども関わりうるためです。また、横断研究では食習慣と歯の状態を同じ時期に調べています。DMF-T指数は過去から積み重なったむし歯経験を反映するため、調査時点の食習慣が以前のむし歯の原因を十分に表しているとは限りません。そのため論文は、今回の結果を因果関係ではなく「関連」を示すものとして解釈すべきだと述べています。
この研究が示すこと
この研究は、デンパサールの一つの小学校の5年生で、甘いものなどむし歯になりやすい飲食物を日常的にとる習慣と、むし歯の程度が結びついていることを示しました。著者らは、子どもの口の健康は日々の食べ方と切り離せず、むし歯の予防はできてしまったむし歯の治療だけでなく、早いうちから健康的な食習慣を育てることにも目を向ける必要があると結論づけています。そのうえで、学校での口の健康教育を栄養教育や保護者の参加、より健康的な食環境づくりと組み合わせて進めることを支持する結果だとしています。
著者:Gusti Ayu Yohanna Lily(Departement of Dental Public Health, Faculty of Dentistry, Universitas Mahasaraswati Denpasar)、I Gusti Ayu Ari Agung(Departement of Dental Public Health, Faculty of Dentistry, Universitas Mahasaraswati Denpasar)、Ni Putu Idaryati(Departement of Dental Public Health, Faculty of Dentistry, Universitas Mahasaraswati Denpasar)、Hervina Hervina(Departement of Periodontal, Faculty of Dentistry, Universitas Mahasaraswati Denpasar)、Surwandi Walianto(Departement of Orthodontic, Faculty of Dentistry, Universitas Mahasaraswati Denpasar)、Anak Agung Ngurah Subawa(Departement of Clinical Pathology, Faculty of Medicine, Udayana University)、Putu Rama Anggastiyaprana Pande(Departement of Dental Public Health, Faculty of Dentistry, Universitas Mahasaraswati Denpasar)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Gusti Ayu Yohanna Lily, I Gusti Ayu Ari Agung, Ni Putu Idaryati, et al. Association Between Cariogenic Dietary Patterns and Dental Caries Among Elementary School Students in Denpasar, Bali: A Cross-Sectional Study. International Journal of Applied Science and Sustainable Development. 2026-09-30. DOI: 10.36733/ijassd.v8i2.14927. 原著ライセンス:CC BY.