この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Foods (Basel, Switzerland)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC

研究の目的

ショウガは香辛料や伝統的な生薬として古くから使われてきた植物で、乾燥させて粉末にすると、保存や輸送がしやすく、用途も広がります。ただし、生のショウガを粉末にするまでには複数の加工工程があり、それぞれが成分の残り方に影響する可能性があります。なかでも乾燥は、水分量や保存性だけでなく、熱に弱い成分がどれだけ残るかを左右する重要な工程です。

研究チームは、従来よく用いられてきた「一定の温度で長時間乾かす方法」が、熱に弱い有効成分を過剰に分解させてしまう懸念に着目しました。近年はニンニクやトウガラシなどで、温度を段階的に変える乾燥法が試されていますが、ショウガへの応用はまだ初期段階にあり、品種ごとの比較も十分ではないと述べています。そこで本研究では、中国で広く栽培されている三つのショウガ品種(小林黄姜、日照生姜、羅平小黄姜)を用いて、乾燥方法の違いが粉末の性質や成分、抗酸化能にどう影響するかを体系的に調べることを目的としました。

何を、どのように調べたか

比較したのは二つの乾燥方法です。一つは「二段階乾燥」と呼ばれる方法で、まず120℃で90分間手早く乾かし、その後80℃で150分間しっかり乾かします。もう一つは従来型の乾燥で、80℃のまま360分間続けます。いずれも生のショウガを洗って4ミリ厚に切り、送風乾燥機で乾かしたのち、粉砕して100メッシュのふるいを通し、光を遮った状態で保存しました。

測定した項目は、水分、灰分(燃やした後に残るミネラル分の量)、タンパク質、粗繊維、精油、そしてショウガの辛味と薬理活性を担う特徴成分であるジンゲロール類です。ジンゲロール類は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定量されました。抗酸化能は、DPPH、ABTS、FRAPという三種類の一般的な試験法で評価しています。さらに研究チームは、品質管理用の標準試料を作り、成分のばらつきの少なさ(均質性)と、4℃保存下での安定性も検討しました。

報告された主な結果

ジンゲロールの量には、乾燥方法による明確な差が報告されています。80℃で長時間乾燥した場合、三品種の粉末に含まれるジンゲロールは1グラムあたり7.12ミリグラム、4.54ミリグラム、6.89ミリグラムでした。一方、120℃から80℃へ移行する二段階乾燥では、それぞれ11.87ミリグラム、11.46ミリグラム、6.32ミリグラムとなりました。著者らは、長時間の加熱によってフェノール性成分が別の形へ変化してしまうこと、および高温短時間の処理が細胞内のフェノール性物質の放出を促すことが、この違いの背景にあると考察しています。

ただし、すべての成分が二段階乾燥で有利だったわけではありません。精油の量は逆の傾向を示し、80℃乾燥で3.46%、3.74%、3.57%だったのに対し、二段階乾燥では1.29%、1.92%、1.57%と有意に低くなりました。著者らは、乾燥中に揮発性成分が水分とともに蒸発すること、とくに最初の120℃の段階で急速に揮発することが関係している可能性を挙げています。粗繊維については乾燥方法による統計的に有意な差は認められませんでした。

三品種のうち、ジンゲロールの蓄積量と総合的な品質が最もよかったのは小林黄姜でした。そのためこの品種に絞って抗酸化能が評価されており、DPPH・ABTS・FRAPのいずれの試験でも、抗酸化作用は濃度が高いほど強くなり、二段階乾燥で作った粉末のほうが80℃乾燥のものより高い値を示したと報告されています。DPPH試験では0.1 mg/mLで消去率78.14%が最大値として観察されました。著者らは、この傾向がジンゲロール量の違いと一致していると述べています。

品質管理用の標準試料についても、ジンゲロール類の含量にばらつきは認められず、4℃保存で6か月の期間にわたって有意な変化は見られませんでした。八つの研究機関による共同測定では、6-ジンゲロールが1グラムあたり7.52ミリグラム、8-ジンゲロールが2.11ミリグラム、10-ジンゲロールが1.69ミリグラム、6-ショウガオールが0.80ミリグラムという値が与えられています。なお6か月という期間は時間的制約によるもので、12か月までの追跡を継続する予定だと論文には記されています。

この研究が示すこと

この研究が伝えているのは、乾燥のやり方ひとつでショウガ粉末の中身が大きく変わりうること、そして「どの方法が優れているか」は何を重視するかによって変わる、ということです。著者ら自身が強調しているように、二段階乾燥が好ましいと判断されたのはあくまでジンゲロールの保持と抗酸化能という基準に照らした場合であり、精油の保持という点では従来の80℃乾燥のほうが優れていました。すべての品質項目で二段階乾燥が勝っているわけではない、というただし書きが明記されています。

加えて、同じ乾燥条件でも品種によって成分の残り方が異なることが示されました。ショウガ粉末の品質を考えるうえでは、加工方法と原料品種の両方が関わってくるという見方が、この研究からは読み取れます。

著者:Li K(Key Laboratory of Microbiological Metrology, Measurement & Bio-Product Quality Security, State Administration for Market Regulation, College of Life Sciences, China Jiliang University, Hangzhou 310018, China.)、Ma H(Key Laboratory of Microbiological Metrology, Measurement & Bio-Product Quality Security, State Administration for Market Regulation, College of Life Sciences, China Jiliang University, Hangzhou 310018, China.)、Wu J(College of Modern Science and Technology, China Jiliang University, Yiwu 322002, China.)、Ge J(College of Modern Science and Technology, China Jiliang University, Yiwu 322002, China.)、Liu J(Key Laboratory of Microbiological Metrology, Measurement & Bio-Product Quality Security, State Administration for Market Regulation, College of Life Sciences, China Jiliang University, Hangzhou 310018, China.)、Jiang W(College of Modern Science and Technology, China Jiliang University, Yiwu 322002, China.)、Zou H(Key Laboratory of Microbiological Metrology, Measurement & Bio-Product Quality Security, State Administration for Market Regulation, College of Life Sciences, China Jiliang University, Hangzhou 310018, China.)、Zhang Y(Key Laboratory of Microbiological Metrology, Measurement & Bio-Product Quality Security, State Administration for Market Regulation, College of Life Sciences, China Jiliang University, Hangzhou 310018, China.)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Li K, Ma H, Wu J, et al. Effects of Different Drying Methods on the Active Ingredients of Ginger Powder. Foods (Basel, Switzerland) 2026-09-04. DOI: 10.3390/foods15173144. 原著ライセンス:CC BY.