アボカドを食べたあとに残る大きな種は、多くの場合そのまま廃棄されています。しかしこの種には、たんぱく質やでんぷんといった栄養成分が相当量含まれていることが知られています。ハラマヤ大学(エチオピア)のDesta Dugassa Fufa氏と、オロミア農業研究機構のShure Soboka氏は、この廃棄されがちなアボカド種子を粉にする際、下処理の方法や乾燥方法を変えることで、粉の性質や消化のされやすさがどう変わるのかを調べました。研究に使われたアボカド種子は、エチオピア・ハワッサ近郊のアボカド搾油工場から集められたものです。

種を粉にするまでの工程と調べた項目

研究チームはまず、洗浄・皮むきをした種子を3.5ミリメートル程度の薄いスライスにし、次の3種類の下処理のいずれか(またはどれも行わない対照)を施しました。0.5%濃度のアスコルビン酸(ビタミンC)溶液に60分間浸す方法、71.5℃前後の湯で3分間ブランチング(下ゆで)してから冷水で急冷する方法、160℃で10分間ローストする方法です。そのうえで、流動層乾燥・熱風オーブン乾燥・太陽光(ソーラー)乾燥・凍結乾燥という4種類の乾燥方法のいずれかで乾燥させ、粉砕・ふるい分けをしてアボカド種子粉を作りました。できあがった粉について、水や油を吸う力、粉の流れやすさ、でんぷんの構成、そして人工的な消化液を使って消化のされやすさを試験管内(イン・ビトロ)で調べる、という流れで実験が行われています。

下処理と乾燥方法によって変わった消化性や成分

もっとも注目される結果は、たんぱく質の消化されやすさ(イン・ビトロたんぱく質消化率、IVPD)が、乾燥方法によって70.79%から90.53%まで幅広く変化したという点です。アスコルビン酸で処理したうえで流動層乾燥機を使ったサンプルが最も高い90.53%を示した一方、何も処理していない種子粉のたんぱく質消化率が最も低かったと報告されています。またでんぷんについては、消化のされやすさの指標であるアミロース含量が38.54~43.68%、アミロペクチン含量が56.32~61.39%の範囲で変動し、熱風オーブンで乾燥しつつローストも行ったサンプルでアミロース含量が最も高い43.68%となりました。さらに、大腸の健康に関わるとされる難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)の割合は35.74~43.77%で、こちらも処理方法によって変化しました。このほか、アミノ酸組成の分析では、必須アミノ酸のうちバリンやヒスチジン、トレオニンなどが検出され、比較対象としたエチオピアの主要穀物「テフ」の粉と並べて数値が示されています。水や油を吸う力、粉の流れやすさ(かさ密度や安息角など)についても下処理と乾燥方法の組み合わせによって差が見られ、著者らはこうした性質の違いが、パンや麺、ソーセージ、離乳食、機能性飲料といった用途への使い分けにつながりうると述べています。

この研究を読むうえで押さえておきたいこと

この研究は、あくまで実験室レベルでの粉の物性評価と、人工消化液を用いた試験管内(イン・ビトロ)での消化性試験に基づくものであり、実際に人が食べた場合の消化・吸収や健康への影響を直接確かめたものではありません。またサンプルは特定の産地・工場から集めたアボカド種子に限られており、扱われた下処理・乾燥方法の組み合わせも研究で設定された範囲にとどまります。数値の違いが食品としての優劣を直ちに意味するわけではなく、用途に応じてどの処理が適しているかを検討するための基礎データという位置づけです。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点に留意してください。

アボカドの種という、これまで顧みられなかった副産物にも、加工方法次第で食品素材としての可能性があることを示す研究といえます。今後、実際の食品への応用や、より詳しい安全性・栄養面の検証が進むかが注目されます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Desta Dugassa Fufa, Shure Soboka. Impact of pretreatments and drying methods on techno-functional properties, in-vitro protein and starch digestibility, and amino acid composition of avocado (Persea americana Mill.) seed flour. ディスカバー・フード (2026). DOI: 10.1007/s44187-026-01203-5. 原著ライセンス: cc-by.