この研究は、オーストラリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:JIMD Reports
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的と背景
糖原病VII型は垂井病とも呼ばれ、骨格筋の酵素であるホスホフルクトキナーゼ(PFK)が欠損することで起こる病気です。典型的な症状として、運動できる量が減り、運動によって筋肉の症状が引き起こされます。論文によれば、この症状は炭水化物を摂取すると悪化するという特徴があります。
著者らは、糖原病VII型の運動時の症状を改善するために推奨される医学的・食事療法的な治療法は現時点で存在しない、と述べています。そこで研究チームは、11歳の女児1名を対象に、体外から補給するケトン体(外因性ケトン)と、炭水化物を大きく制限する食事法である修正アトキンス食(MAD)を試みました。
調べた方法
研究チームは、4つの食事療法をそれぞれ8週間ずつ試す計画を立てました。内容は、(1)普段どおりの食事、(2)運動前に体重1kgあたり150mgの外因性ケトンを摂る、(3)修正アトキンス食、(4)修正アトキンス食と運動前のケトン摂取の組み合わせ、の4段階です。
評価には、心肺運動負荷試験、身体計測、クレアチンキナーゼ(CK。筋肉が傷つくと血液中で上昇する酵素)を含む生化学検査、生活の質(QOL)、心拍数のモニタリング、本人が報告する症状が用いられました。
報告された主な結果
外因性ケトンについて、著者らは運動能力の改善がみられたと報告しています。同じ運動量に対する心拍数が下がり、より高い強度の運動により長い時間取り組めるようになりました。
修正アトキンス食については、QOLの身体面のスコアが29%改善し、CKの値が正常化し、「身体を動かした日」1日あたりに報告される症状の数が半分になったと報告されています。一方で、修正アトキンス食への不満から意図しない体重減少が生じ、QOLの感情面のスコアは20%低下しました。その結果、患者は4番目の段階への参加を辞退しています。
この報告が示すこと
著者らは、本研究が糖原病VII型の子どもにおいて、外因性ケトンと、それとは別に修正アトキンス食が有益な効果を示した最初の報告であるとしています。そのうえで、これらは医学的・栄養学的な管理のもとで糖原病VII型に推奨されうるものの、修正アトキンス食が体重や感情面の健康に与えうる悪影響への配慮が必要だと述べています。また、この疾患についてさらなる介入研究が必要であるとしています。
1人の子どもを対象とした試みですが、有効な治療法がないとされてきた病気に対して、身体面の改善と本人の負担の双方を同じ物差しで記録した点に、この報告の意味があります。
著者:Kiera Batten(Department of Nutrition and Dietetics The Children's Hospital at Westmead Sydney Australia)、Nancy van Doorn(Children's Hospital Institute of Sports Medicine, the Children's Hospital at Westmead Sydney Australia)、Ji Hyun Moon(Genetic Metabolic Disorders Service, the Children's Hospital at Westmead Sydney Australia)、David Simar(School of Health Sciences, Faculty of Medicine and Health, UNSW Sydney Sydney Australia)、Carolyn R. Broderick(Children's Hospital Institute of Sports Medicine, the Children's Hospital at Westmead Sydney Australia)、Kaustuv Bhattacharya(Genetic Metabolic Disorders Service, the Children's Hospital at Westmead Sydney Australia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kiera Batten, Nancy van Doorn, Ji Hyun Moon, et al. Utility of Exogenous Ketones and Modified Atkins Diet in a Child With GSD VII (Tarui Disease). JIMD Reports 2026-09-01. DOI: 10.1002/jmd2.70123. 原著ライセンス:CC BY.